彼が合宿に参加するとき
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-合宿-7日目-某所ホテル-舞台裏-
残り半分だからって気抜くなとか通りすがり際に色んな奴らが声を掛け合っていく…。
おれはというと、部屋割で一緒なのにも関わらずほとんど2人で行動したことのないアヤのところに向かう。
「アヤ!」
「…」
とは言っても、誰から声をかけられても反応しない、いや、正確には返事をしないアヤはおれが声をかけても同じだった。
なんでだっけ?ん?働けおれの脳みそ!妄想を膨らませて正解を導き出すんだ!
確か初日か2日目か3日目か何日か覚えてないけど黒斗に怒られてたっけ?いや違う、きっともっと神秘的な…そう、アヤがミュージカルをするとききっと人格が変わるんだ!ほっしーみたいに!でもほっしーは情緒不安定の時だけに限るし…ほっしーと言えばさっき鼻歌歌ってたな。
「おお…下りてきた!インスピレーションがっ!!」
おれがそう言ったのを聞き取った黒斗が慌てて俺に五線譜のノートを手渡す。相変わらず気が利くやつでちょっと面白いけど、しばらく放っとかないととか呟くのはよくないぞ!
「…さっきのほっしーの歌ってた部分がここに入って…」
「おい…そこにしゃがみこんで邪魔くせぇ」
「…ん?誰だお前…おお?なんだその目。わはははは!なんで色違うんだ!?」
「はぁ?…ほんとこいつが一番話通じねぇ」
「あ、待って!答えないで!きっとそれは宇宙人に改造とかされたんだろ!じゃあこの挨拶通じる?うっちゅー!」
「…」
これは妄想とかしなくてもすぐわかるけど、物凄く意味わかんないって言いたげな顔をされる。おれそんなおかしなことした覚えないのに!でもやっぱりこの挨拶は共通じゃないってことに難点がある。
「あ!ちょっと待ってて!書き終わったら舞台だっけなんだっけ?参加するから!」
既にステージに上がっていった黒斗に大声で伝えると、好きなだけ書いてろ。と返事をもらう。好きなだけ?じゃあ参加しなくてもいいのかな。
「まぁ脚本を書いたのはおれだしね!自分の役くらいもう頭に入ってるし!アブダクションさえされなければ問題ない!」
「問題大ありだから…」
「ん?セナ!駄目だぞ、ちゃんと練習に参加しないと!」
「王様には絶対言われたくないしぃ。それに今日丸々俺の役出てこないところだし」
「なんだ独りぼっちなのか」
「そういうことじゃない」
ばしん、と遠慮なしに叩かれる。今ので何億という細胞が死滅した。そう思いながらもおれは五線譜にくるくると沢山の音符を書き込んでいく。それを横から覗き込んでくるセナは鼻歌感覚でなぞるように歌っていく。おれの創作意欲を掻き立てるには十分すぎる素材である。やっぱりおれのKnightsを守ってきただけあってセナの実力は嘘一つない。
「へぇ…案外綺麗な声してるんだね…」
「ん…誰だ!」
「…あいくん。あれ?あいくんも今日出番なしだっけ」
「出番なしって言い方はなんか嫌だけど。そうだよ。あと僕の名前は美風藍。いい加減覚えてよね。レオ」
睨み付けるようにおれを見る相手をおれも見返す。そうだ、うーんと、あだ名を考えれば覚えれる気がする。美風藍…だっけ?えーと…
「ミカだな!覚えた!」
「え?ちょっと。何それ?」
「あいくん綺麗だしそのあだ名でもしっくりくるねぇ」
「ミカって女みたいだな!あ、お前もちょっとここ歌ってみて」
「…ヤダ」
「あいくん、断ってもうざいだけだから諦めた方が身のためだよ。」
「だいたい了承してないのに変なあだ名で呼ばれるとか、レイジみたい」
ふいと顔を背けそのまま立ち去るかと思いきやおれの持っていた五線譜ノートを取り一部分を軽やかな声で歌いだす。
「ぉぉおお!スゴイ!いいな!今のは凄かった!ちょっと待って、今書くから」
忘れないうちに書き留めたくてミカの手からノートを奪う。床に書いてしまいそうだったけどそんなことをしたらほっしーが切れるからそれだけは避ける。なるべく、ほっしーの目の届く範囲では!
「Knights以外にもね!沢山作曲したことはあるけど!ミカの声は凄く綺麗だな!機械みたいに正確なクオリティーだ!」
「そう…?」
「王様それ…褒めてる?」
「もちろん!俺の楽譜の音を正確に歌ってくれることほど嬉しいことはないから!今、楽しい!」
隣に簡易椅子を持ってきて座るセナとミカにそれから何度となく歌ってもらってテンションは高まっていく。
そこに休憩時間になった黒斗がおれの手元のノートを見て首を傾げる。
「珍しいな。お前があまり進んでないなんて。いつもならこのノートの最後のページまでいっててもおかしくないくらいの時間があったのに。」
「あのね!おれの曲をね、この2人がすぐ歌ってくれるからどこを訂正すればいいかすぐわかるからその度に直してるんだ!新しい曲の書き方を覚えたぞ、わはははははは!!」
「この2人が歌ってるお陰か、傾向がこの2人に合う曲ができてるな。近づきがたいような、ちょっと浮世離れした曲」
「近づきがたいって黒斗が言う?ずっと俺について歩いてるのに」
「僕も浮世離れって言われるようなことしてないけど…」
「いい意味でってことだ。2人してそんな眉間に皺寄せるな。本当に似てるな。お前ら」
「はぁ!?」
似てる、のか?黒斗が言うならそうなのかもしれないけど。眼帯の目が嘘をついたことはないし。似てると考えると作曲の幅がさらに広がる。きっとこの2人に歌ってもらえることなくこの曲は没になる可能性が高いけど。
「アレンジして俺たちの新曲にしちゃえば?」
「蒼空…お前横取りはよくないぞ。」
「えー、そこは、俺以外の曲を歌うなって嫉妬するところだろー。…うんごめん、もう言わないからそんな怖い顔しないでな?」
ちらりと黒斗を見ると確かに怖い顔をしている。これが般若っていう奴の顔なのか?おれ見たことないしずっと妄想で考えてたからそんな怖くならなかったし。
「アレンジか…レオが良いならまぁそれでもいいが」
「…ん?」
急に黒斗が向かいにしゃがみ楽譜を見る。でも何の話してたのか分からなくて気に留めずペンを走らせると五線譜の下に文字を書いていく黒斗。逆さなのに綺麗に書かれていく。…って
「あぁぁぁ!何!?」
「…いや、歌詞書こうかと」
「なんで!?」
「合作っていうのをちょっとやってみたくて、な。レオなら許してくれると思ったんだが」
「うぅぅぅー、まぁ黒斗が作る曲、おれも好きだけど…」
「俺もインスピレーションが降りてきた気がするんだよ」
「おお!とうとう黒斗もおれの事がわかるようになったか!良いだろ!ぐんぐん湧いてくるだろ!」
「王様ちょろい…」
セナが何か横でボヤいた気がしたけどよく聞き取れなくてそのまま黒斗に歌詞を書かせることにした。相変わらず逆さからすらすらと文字を書いていく黒斗は随分と器用で、黒斗が作曲しているを初めて見つけた時を思い出させる。あの時も器用に1人で歌ってリズムを刻んで時にはピアノを弾いていた。
今も昔も変わらず、なんでもできる器用な奴。しかも目の事が本当だとすると、本当に妖精とか宇宙人の類な気もするんだけど。
「…ー♪」
目の前で軽やかに歌う黒斗を見るとそう考えるのも無粋な気がしてきてしまうのはきっとこいつが誰よりも努力して人間離れした人間だからなんだろう。
::Double songwriter !
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