彼が合宿に参加するとき
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-合宿-1日目-某所ホテル-
乗り気じゃねぇ。
そう何度も断ったのにオヤジは今回参加しなければ今入ってる仕事を全部キャンセルするだのとあり得なさそうでやりかねない脅しを吹っ掛けてくるもんだから、イエス、と頷くしかなかった。
「…ちっ、なんだっておめぇらと一緒なんだよ」
ホテルに着いてから会うにしてもどこで会うにしても、連中と会うこと自体気が進まない。それに加え今回はどこぞの学生と合宿だとか…胃がいてぇってのはこういう時に言うもんなんだろうな。
「ひゅー、立派なホテルー♪」
上機嫌な嶺二を置いてエントランスのソファに腰を下ろす。隣に藍が座り抱えていたノートパソコンをテーブルに置いてなにか打ち込み始める。
カミュはなんか知らねぇけどホテルマンにコーヒーを頼んでるし、嶺二は…馬鹿としか言いようがないというか、はしゃいでいる。
「帰りてぇ」
来て早々そう呟いて天井を仰ぐと上の階からエレベーターが下りてきているのが見えた。ガラス張りのエレベーターには2人乗っていて、そこには龍也さんと前に挨拶だとかで会った黒斗。綾人と双子らしいがとても似ているとは言えない。
「あ、龍也せんぱーい!と、黒斗!」
前に会ったときもそうだが嶺二は黒斗を知っているようで黒斗は嶺二をいまだに思い出せないらしい。まぁこれが嶺二の妄想でなければ…
「お前ら…車の中でちゃんと大人しくしてたか?」
「ランマルとカミュが絶え間なく言い合いしてた。正直それを聞いてるだけで無駄なエネルギーを消費した気がする」
「ランランもミューちゃんも、今回の合宿が楽しみで高ぶっちゃってるんじゃなーい?」
「んな訳あるか」
「楽しみというよりむしろ迷惑でしかないな。二週間も子供の世話をしなければならないとは…全く早乙女も何を考えているのか」
俺たちが次々と愚痴を言っていると龍也さんが塞き止めるように、ほらよ。と今日のスケジュールと部屋割りを配る。
「あれ?えっと、龍也先輩はあとから抜けちゃうからシャイニング側で唯一1人部屋なのはわかるんだけど、僕たちみんなごちゃ混ぜなんだねー…」
「ねぇ、誰かもわからない相手と今日から同じ部屋なわけ?」
俺がスケジュールを確認していると藍も、嶺二ですら部屋割りに難癖をつけていた。
ちなみに、と促されるように俺も部屋割りを見ると同室なのは、朱桜司。という奴らしい。
それぞれを見ると嶺二には朔間凛月。藍には瀬名泉。カミュには鳴上嵐。俺には朱桜司。あとは綾人のところに月永レオ。向こうは5人いるってことか。
「今回の合同合宿は、前のST☆RISHみたいな部屋割りごとのグループができる訳じゃない。単にまぁ、基本二人部屋しかなかったってだけだ。1フロア貸しきりだし正直その中でなら好きなように動けると言えば動けるからな。お前らのことあまり縛るような規則をつけると逆に面倒だからよ。」
どういう意味っすか。そう問いかけたいと思いつつも、まぁ変に規則を重ねられるよりはましかと大人しく頷く。それにいくら1フロア自由に行き来できてもわざわざ行くほど仲のいい連中なんていねぇし。
「このスケジュールについて質問させてもらおう」
部屋割りの件で全員が納得する中、今度はカミュがスケジュール表を龍也さんではなく黒斗に突き出す。なんつーか、試してるっつうのか。あからさまに喧嘩吹っ掛けてるみてぇな図になってるな。
「質問…ですか?」
二度まばたきさせた黒斗の目はまじまじとカミュを見上げていて臆している様子はない。学生だとか侮っていたが、確かに初っぱなから怖がっている様子はなかった。むしろ俺たちの傾向がすでに見破られていて対処法がわかっている様子だ。正直、藍とは違った意味で大人びているというか…
「追々の説明じゃまずいですか?一応全員が集まったときの打ち合わせで説明する予定だったんだが…ですが」
敬語に言い換えながらも眉間に皺を寄せている辺り敬語が苦手なのはわかったが…それでよく仕事できてるなぁと思った。
ともあれカミュもその受け答えにしぶしぶ、いや…効率的なほうを考え納得し俺たちは呼んでいたエレベーターに乗り込む。ガラスから見下ろす吹き抜けのエントランスはがらんとしていて本当のセレブだとか、こういったアイドルばかりが利用するようなレベルのホテルだと実感する。俺にとっちゃ居心地が悪いとしか言いようがねぇが、まぁ立派なもんには違いねぇ。
決められた指定の階に行く途中ある程度の決まり事の説明を受け適当に頷く。出歩くときは細心の注意を〜だとかずいぶんと警戒しているようだ。
まぁ、確かにアイドルの合同合宿ともあればネタを掴みたい奴は五万といるからな。
「はい、どうぞ、とりあえず降りてってください」
黒斗が扉を開けてる内に全員がバッグを引いて降りていく。先程から嶺二が何度も黒斗にアイコンタクトを取っているが訝しげな顔をされて終いには目を逸らされる。多分思い出そうとは努力してるんだろうが。
「各自、部屋に荷物を置き次第俺の部屋の隣に…綾人と月永がいる部屋に向かってください。集まったら今回の合宿の話をします。まぁ、そんな難しい話はしないからメモとかはいらないだろう…ですけど。とりあえず今日は慣れも含め緩く1日終わらせますのでゆっくりどうぞ」
そう言って黒斗は踵を返し綾人たちがいるであろう部屋に入っていく。
「…おいお前ら。」
俺たちも部屋に荷物を置こうというところでこっそりと龍也さんに招集をかけられる。
「あいつのことどう思う。」
「…なかなか度胸のある奴だ」
「のびしろがあるね。僕のデータにはない人間性だと思う」
相変わらずこそこそと話す龍也さんの言葉にカミュと藍はさっさと答える。が、俺と嶺二は言ってる意味がわからなかった。
「高校3年生とは思えない態度っつうか…対応?だよな。俺は結局5日間しかいれないけどよ。お前らちゃんとあいつの言うこと聞けよ?あいつがプロデューサーであり監督みてーなところあるから」
「言うことを聞くかどうかは奴の力量だろう。まぁ、そもそも愚民の言うことなど俺が聞くわけないのだが」
「僕は別にどっちでもいい。でも、それなりにできるってところを見せてくれないと、さすがにモチベーションも上がらないしね」
「はいはーい、嶺ちゃんは黒斗の言うこと聞くよー?昔から大人びたところあったし?出来る子っていうのは知ってるからね!」
「レイジは本当に黒斗のこと知ってるの?向こうは変な顔してレイジのこと見てたけど?」
確かに変な顔はしてたな…。たまに本気でお前何なんだって言いたげな顔もしてたし、実際藍の言うことも一理ある気がした。
「…とーにーかーく!相手は全員高校生だし、お前らは大人だ。出来ることと出来ないことっていうのはしっかり理解してやれよ?お前らの方が生きてる年数が違うんだからよ。」
「年の功って奴だね!自分で言っててハートが折れそう。」
龍也さんに強く念を押され全員で溜め息を吐きながら部屋に入る。相手方の奴は先に着いているのか隅っこにバッグを置いて既に指定の部屋へ移動しているようでしんと静まり返った部屋に足を踏み入れる。
「これはまた随分と…んなところまで立派にする意味があんのかよ。つか、このフロアのはどこもこんなに広いのか…?」
悪い気はしないふかふかのベッドもいいのだが悪態をついて空いている方のベッドの横に自分のバッグを置いてさっさと別室へ向かった。
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