彼が合宿に参加するとき
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-合宿-3日前-シャイニング事務所-社長室-
ガチャリ、となるべく丁寧に、失礼のないように俺は社長室の扉を開けた。
車で送ってくれた母さんはというと、有名事務所の社長で俺が事務所に入れてもらえないでもたもたいると隣に立ち、さくっと説明をして俺を入れるように手配してくれた。
その直後にシャイニング事務所の人と合同企画の話で歩きながらどこかに行ってしまったのだが。
俺も綾人もそうだが、母さんの事務所には所属していない。父さんは例外として。
その理由も、変にコネがどうのこうのと言われてしまえばちゃんと評価されるべきところも見落とされてしまう、あと単にいじめの対象にされる等の事で別の事務所に所属している。
そして綾人は、ここ、シャイニング事務所にいるのだ。
「失礼します。目良です…。」
ぱたんとドアを閉め、室内に向き直る。ここに来るまでずっと入り口にいた人がついてくれたがここからは1人だ。正直父さんはあてにならないし。母さんもそう思っていて、ちゃんと意見があったら言いなさいよって言ってたな…。
「ええっとこの子が、今回の合同合宿に参加する子…?」
「ノーンノン、違うよー林檎ちゃん。まぁ参加と言えば参加なんだけど…立場としては先生とかプロデューサーとかマネージャーとかコーチって感じ?」
目の前ではふわふわのピンク色の髪をこれまたふわふわさせながら俺を見るシャイニング事務所所属のアイドル、月宮林檎…さん。本当に女装してるんだな…?
林檎さんの横には父さんが何やら俺の事を説明していて、その奥の立派な椅子にはこの事務所の社長、シャイニング早乙女が座って、俺をじっくりと眺めている。黒いサングラスを光らせ、普通の人はその瞳が見えていないだろうが俺はさっきから目が合って正直、嫌だ。昔っからこんな怖い人だったか?
シャイニング早乙女…シャイニング事務所の社長にして、早乙女学園の学園長。まぁ今の働きは父さんと似たようなもので、当時の事務所も夢も同じだったためか色々と意気投合し仲良くなったらしい。
俺が初めてシャイニングに会ったのは中学生の頃。俺がまだ両目健在だったころでそれからは初の再会、だからか眼帯を妙に見られている気がする。もちろん林檎…さんもいぶかしげに俺を見ているのがひしひしと伝わってくる。
「目良くんの…息子さんよね…?なんだか、あやちゃんは似てるのに黒斗くん?は似てないのね」
まじまじと見るためか随分と遠慮なく近づく林檎さんに俺は反射的に一歩下がるが背中には先ほど閉めたドアがあって逃げることが許されない。生物学上男である以上拒否反応は出ないにせよ、さすがに男同士でも近いと困る。これが綾人なら殴ってるところだ。俺は反射的に苦笑いを浮かべてしまった。
「…あー、はい。父に似るくらいなら母に似た方がいいですから。母は落ち着きもあって凛としてるので。」
「黒斗くんは落ち着いてるかもしれないけど、凛とはしてないわよー?」
はっきり言うんだな…この人。さらに内心では凛というより身構えてる感じだ。なんて思われている。悪かったな…、こちとら同年代が一人もいないせいで不安なんだよ。そう思いながらも離れていく林檎さんに付いていき父さんから林檎さんの紹介をされる。
「…うーん。この人と…?」
小さく、誰にも聞こえないように唸る、というか悪く言えば悪態をつく。周りを見ると社長の机に寄りかかる父さんと、今回最初の2,3日だけ付き添ってくれるらしい林檎さんといまだサングラス越しにギラギラと見てくる社長。言いたいことがあるなら言ってくれ…。俺が見れば済むけど、試されてる気がして嫌だ。
「失礼しまーす。シャイニーいますー?ねぇ社長室から、黒斗の匂いがするんだけどうぁぁぁあああああ!!」
そこに軽くノックをして入ってきたのは、綾人だった。
「やっぱり!わーどうしよう!黒斗が俺に会いに事務所まで来てくれるなんてやばいどうしよう、写真撮ろう!あれ!あの愛故にってのをバックにして!!」
俺を見るなり手を引き愛故にと書かれた額をバックに写真を撮り始める。こいつ自撮りよくできるな。俺手震えて駄目なんだが。
「え、なん…まてまてお前に会いに来たわけじゃ…」
「1たす1はー!俺たちぃー!」
「初めて聞く掛け声をぶっこんでくるな!」
そう突っ込みを入れるも綾人は写真をアップするだの待ち受けにするだのまったく準備のできていない写りの悪い俺を愛しいとスマホに顔を擦り寄せている。その光景に一瞬にして殺意が湧いた。
「これはアイドルとして駄目なやつだ。殺そう。」
「ちょっ、黒斗くん!?って、目良さんも止めて!?」
そこに林檎さんがぎょっとしたように俺の手を掴み静止させようとする。嫌だなぁ、冗談です。と答えるも逆側の手はすでに綾人の首にたどり着いていた。
「はははっ、目良さんだとみんな反応するぞー?まぁ誰呼んでるかわかるけど。でも…その2人はそれが愛情表現だから気にするな。極度に与えるものと極度に拒否するものが運命的にも双子だなんてすばらしいだろー?さすが俺の息子たち!可愛い!」
「…目良さんじゃだめね…ええと、シャイニーうまくまとめれる?」
「ふーむ…」
綾人の首を絞めながら林檎さんが振り返るのに倣って俺も見る。否、見てしまった。その内心はこれでもかというほど嬉しいが詰まっていて感動の再会だの会えなくて寂しかった、だのその瞳は一体どうしたんだいやMr.目良から聞いてるけどネ、だのと色々と一気に見えすぎて目眩がした。
「ワァァンダフルゥゥゥゥ!!」
「え、ちょっとシャイニーまでどうしちゃったのよ!?」
「やぁっとミーを見ましたネ!BUTすぐ逸らしてはだめだめなのヨー…昔から随分と変わってしまったみたいだな」
「…っ」
がっかりしたように肩を落としながらもがたりと立ち上がったシャイニングを視界に捉えると今度は昔の小さなころはとか考えているらしい。やめろ。それ以上思い出すな。特に男の娘のこと…!!
と俺が内心叫んだ途端に綾人は俺の手を引き自分の後ろに隠そうと前に立つ。
「俺がいれば少しは逸らしやすいだろ。…シャイニー?俺の弟いじめたら駄目、いじめるのもいじめられるのも俺だけだから。それに…それ以上黒斗の過去を思い出したら黒斗が目を傷める」
その言葉に父さんは可愛いとスマホで写真を撮るばかりで特に注意はしない。え、いいのか…親がそんなんでいいのか?というか綾人俺のことわかりすぎて怖いんだよ。なんで俺が過去思い出してるとかうんぬんがわかるんだ。以前に双子だからとか言ってたけどおかしいだろ。どう考えても…!
「んー…最初は単に黒斗に会いに来ただけだったけど、この様子なら俺も同席しても問題ないだろ?お兄ちゃんが弟を守るのは当然のことだし」
「Mr.綾人…YOUのブラコンぶりは知ってマース。ミーが口酸っぱく言っても無駄になるでしょうから、口出しさえしなければ今回だけ特別なのヨ」
「口出しも何もなにするのか知らないし…」
座ろう…?と俺の手を繋いだまま近くのソファに案内してくれる綾人…なんか屈辱といえば屈辱だが、どうしてもシャイニングを見るとまた目眩がしそうでしょうがなく従う。というか…まだくらくらする。
「ふふ、お兄ちゃんの腕に抱き着いてもいいよー!」
「やっぱり…殺す。」
多分半分以上こいつのせいだ。と理不尽な理由を付けて綾人の鳩尾を一発殴った。
::Planning in the office
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