彼が合宿に参加するとき
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-合宿最終日-某所-打ち上げ-
「お疲れ様でした!!」
大きくみんなで声をそろえて言い合ったあとみんなそれぞれのユニットに挨拶をしていく。間違いなく今回の関係者じゃない人がいるけどそこは無礼講ということで目を瞑ってくれている。
もちろん俺も部外者なわけだがなぜかここで遠巻きにみんなを見ていると相手事務所のスタッフらしき人に先ほどから挨拶をされる。
つい先ほどまで観客でごった返していたステージでさっさと記念撮影なんかしちゃって、みんなはとうとうこの合宿を終えた。とはいえ会場から撤収してもこうして打ち上げなるものをしているわけで…
横目で黒斗を見ると明らかに元気がない。
「…蒼空、来たんだな」
「黒斗。元気ないなぁ!」
「うるさい。」
「うーん、久しぶりに会って少しは丸くなったかと思えば…」
「まぁ…そうだな…。お前がいないせいで色々不便はあったかもしれない」
「うへぇ…いざ黒斗にデレられても嬉しくないからな?」
死ねと言わんばかりの視線で俺を睨む黒斗にどーどーと声をかける。それよりなにより驚いたのはこの打ち上げでも綾人が引っ付いてるのかと思えば黒斗の横にはST☆RISHのトキヤさんが座っていた。本物はやっぱきれいに見えるもんだよなぁ…。
「あの、先ほどから気になっていたのですが」
俺の視線にタイミングよく気付きトキヤさんは俺たちに向き直って普段から持ち歩いていそうな手帳を広げて俺たちに差し出す。
「どうし、たんですか?えっとトキヤさん…って呼んでいいのかな」
「ここに、WWお2人のサインを頂けないかと…」
「「は、サイン?」」
目を丸くしたのは俺も黒斗も同じでトキヤさんは遠慮してるのかしてないのかペンまで渡してくる。
「…別にサインくらいなんてことはないが。トキヤさんが誰かのファンというイメージがなかったな…。先に蒼空書いてくれ」
すっ、と自然な流れで手帳を横流しされ、テーブルに置きながらサインを書く。
黒斗は絶対先に書かないから俺が書くところを間違えると黒斗の書くスペースがなくなったりと色々あるので正直面倒。そういう所で俺のリーダーシップを発揮すべきかなと思っている。いやリーダーじゃないけど。
「トキヤさんはWWにどんな魅力を…?」
黒斗に手帳を返しその間に俺がトキヤさんに話しかける。確か1,2歳上だよな…なんで黒斗は敬語じゃないんだろう。
「魅力…そうですね。曲、ダンス…ファンサービス、全てのレベルが高いことでしょうか。蒼空さんの笑顔は強い力があると思います。」
「だってよ。よかったな蒼空」
「は、はぁ…」
正直感想を言われたからといって素直に喜べるほど器用ではない俺と、まるで自分は関係ないかのように俺に目をやる黒斗。この2人の反応にトキヤさんが焦り始める。
「私何か気に障ることでも…」
「いや?蒼空のダンスとパフォーマンスのレベルの高さは評価されるべき点だと思う。ただ単に褒められることに慣れてないだけだから気にすることはない。」
「もちろん、蒼空さんも凄いですが…今回の綾人さんとの臨時ユニットでも黒斗さんの歌唱力やダンスは凄かったですよ。」
「…俺が?」
「まさか、ハモリの高音担当が黒斗さんだとは思わなくて、その意外性も魅力でした」
そういえば、俺とのハモリでも高音担当の黒斗。高音が随分と綺麗に出せる黒斗は正直その性格に似合わず、当初はマジで出来んの?なんて疑った時代もあったが、だんだん慣れてきたせいか妙にしっくりくることもある。
「地声が異常に低いってわけでもないしな?黒斗だって綾人と同じだろ?普通は」
そう、双子ということもあり若干の違いはあれど普段の声の高さは2人とも同じなのだ。学校では滅多に喋らないこともあり黒斗はなるべく低めで喋ることが多いが家で何か任されたり呼ばれたりするときは本当に綾人と同じ声。いや、だからといって妙に高いというわけでもないが。
「それは言うな…。俺があいつと同じってだけでも虫唾が…!」
「俺らの前だとスゲー嫌ってるよな。でもライブ見たけど、お前らのコンビよかったよ。なんかWWに対抗して、Twins temptationって名前でTtって略してるんだっけ?」
「いや、そもそもTtの方が先だ。俺たちがキッズ、と言っても中学の間に作ってたものだし…」
「意味は双子の魅力…ですか。でも双子だからという特性はあまりなかったように感じました。」
「あぁ…まぁそうだろうな」
双子といえばやっぱり2人揃って、というのは客受けもよく一番テーマも絞りやすくなる。が、黒斗と綾人は正直性格が正反対なこともあってパフォーマンスに統一性がなかった。定位置でありふれたファンサをする黒斗と円形のところまで走って歌わずにマイク越しにファンに話しかける綾人。
「うーん…双子の"それぞれの"魅力って感じだったよな」
「俺はむしろどうやったらあそこまで自由になれるかが不思議でしょうがない。あいつ普段1人だろ…そもそも歌ってないんじゃないのか?」
「それ芸人アイドルって感じだな…。一つの道だけど」
その言葉に一瞬身を固めたトキヤさんに俺は首を傾げることしかできなかったが気に留めず黒斗が頼んでいたリンゴジュースをあおったのを見てふと時計に視線が行く。
「うーぁ、こんな時間だぞ」
「あぁ…実際今回の主役だったTrickstarの皆さんは帰ってしまいましたしね」
「えぇ!?そうなの?いつ!?」
「確かもう、10時になる前には、今回同伴していた先生に連れられて帰られましたよ」
トキヤさんのその言葉に俺も黒斗も、俺たちは?と呟いてしまう。いやむしろ黒斗は大人っぽいからばれないかもしれないけど俺なんか部外者だし?さっさと見つけて返してほしかったんだけど!?
「じゃあ、今ここにいるのって全員シャイニング事務所のアイドルじゃん。もう何?夢ノ咲の俺たち出た方がよくない?もう11時だよ?」
「そうだな…俺も明日また学校だし。」
「え?Trickstar休みなのに?」
「…父さんに学院にて話があるって呼ばれたんだよ…ふざけてるよな。いつも電話のくせに」
「…なるほど。安心しろ俺が介護するからな。」
それにしてもだ。今回の合宿の事もそうだが、黒斗はやけに最近学院の上層部がらみの事にかかわっている。まぁ…学院長のご子息様であらせられるからして。もう卒業ということもあって沢山の事をその頭と体で体験してもらうことになったらしい。そりゃもうがっつりと。
「次の合宿はお前もついてきてもらう方がいいな…」
「え?なんか言った?」
俺たちが帰ることを周りに伝え、挨拶をしながら玄関に向かっている最中に黒斗が呟く。はっきりとは聞こえなかったもののその横顔はなぜか笑っていて、何かいいことでもあったのかと問いかけたくなるほどだった。
「そこでぇぇぇぇぇストーーーーーップ!!」
「っ!?」
俺が黒斗に追いつくよう隣に並んだ途端、上から人が降ってくる。え?降って…えぇぇ?
「Mr.目良!今回の合宿アーンド特別ライブ、最高でしたYO!臨時ユニット大成功!congratulation!!」
誰だぁああ…!!と反射的に大声を出してしまいそうになるもその勢いに口を挟む機会さえ与えられない…
「そして!今回はまた新しいお仕事をぉぉ、YOUたちに持ってきました」
「はい?」
「たち?」
そもそも事務所違くないか?そう思ったのは多分、俺だけではないはず。
::Thank you TrickStar & ST☆RISH!!
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