彼が合宿に参加するとき
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-合宿-12日目-屋外ステージ-内輪ライブ-
「はぁ…」
疲れた。そう呟く前に最後を終えたスバルがどたどたとステージ裏に走ってくる。ついさっき踊り終えた人間とは到底思えない。
俺はというとトップバッターの次で早々に終わったとはいえ、そのあと黒斗さんの手伝いをしたりしてたらなんか必要以上に疲れてしまった。なんせ、向こうの事務所の社長がいるとか、学院長がいるとかで…。
そんで今はその社長がもう一度見たいユニットをアンコールするらしい。その待ち時間。
「黒斗さん、」
「おー」
待ち時間にもかかわらずステージの裏から客席に向かおうとする黒斗さんをいぶかしげに見てしまう。自分たちが呼ばれないと思ってるんだろうか…。
「どうした」
「いや、待たないんですか?」
「え、あぁ。いや…落ち着かないんだ。ここにいるの」
あぁ…そういうことか…。最近はステージに立つようになった黒斗さんは、決してトラウマを克服したわけではないらしくむしろ以前よりもなるべくステージには立っていたくないらしい。
「黒斗ー」
そこに聞きなれない声で黒斗さんを呼ぶのが聞こえた。
「なんだ…」
「なんか厄介事なら俺もついていきます?」
黒斗さんが悪態をついたことから何か手伝いでもやらされるんじゃないかと俺もついていこうと立ち上がる。
しかし、立ち上がると同時にひょっこりと全員に見えるところに2人の男性が現れた。
「ここで結果発表するよ。どうせ内輪だし盛大にドラムとか叩かなくていいでしょ。」
そういう1人の男性は伊達メガネをくいっとあげて俺に軽く手を振る。知り合い…?ともかくぺこりと頭を下げるとその後ろからふふふ、と笑みを浮かべながらサングラスの男性が現れる。で、でかい…
「みなサーンとぉっても素敵なパフォーマンスでしたー。But、アンコールは1ユニットだけデース。ちなみに…今回このアンコールに呼ばれたユニットにはぁ、特別に本番のライブでもアンコール権限を与えマス…もちろん、お客のニーズも考えて当日で高得点だったユニットもアンコールに答えてチョーダイ!」
「うんうん。だから、当日アンコールするのは今回アンコールに選ばれたユニットとお客さんに選ばれたユニットの二つ。でも、当日お客さんが選んだのが今回とかぶったらそれまで。普通に選ばれた一つのユニットがアンコールに答えるだけだから。みんな頑張ってな。」
ええっと…それもそれで重要事項ではあるものの…一体誰が誰だか…
「…名前くらい名乗れよ」
「そうだよ…シャイニーはST☆RISHにはわかるけどTrickstarにはわかんないし…父さんに至っては誰もわかってもらえてないよ」
「ムムム!ミーの事は何も聞かされてないのですかぁぁ!!」
「え…いや、合宿内では特に話す機会も必要も…」
「黒斗!相手は社長だよ…!?」
途端に音也さんが黒斗さんにむかって、ちょっとちょっと…というように口を挟む。
えっとじゃぁ…このサングラスの人が…シャイニング事務所の…?
「あ、え!?すみません、い…衣更真緒です」
「礼儀正しくてベリーベリーグッド!Mr.衣更。覚えておきまショウ!」
きょとんとして目の前にいたものだからあわてて頭を下げると相手はなぜか満足げ。…この人がシャイニング早乙女。翔さんからそれなりに名前と言動については聞いていたけど…じゃぁ隣の人は…まさか学院長!?
先ほど父さんと口にしていた綾人さんが俺たちをいったん整列させ2人の横に立ちその反対側に黒斗さんが立つ。
「じゃあ…俺が説明するから…とりあえず知ってても知らなくても一回黙って聞いてな。まずこっちの派手なシャツにスーツのサングラスの人がシャイニー…じゃなくて、シャイニング事務所の社長…シャイニング早乙女。で、その隣、黒斗よろしく」
そこで黒斗さんが綾人さんと目を合わせ、口パクで面倒くさいと言っていた。やれやれという様子で肩を竦めるとその伊達メガネの人は軽快に黒斗さんの背中をバシバシ叩き格好良く紹介してな!と言い放つ。うわ、黒斗さんの眉間の皺が凄いことになってる。
「自己紹介もまともにできないのかよ…。」
そう悪態をつきながら黒斗さんは一歩前に出て相手の伊達メガネをこれでもかという勢いで取る。その素顔に北斗が、見たことあるな…と呟いた。
「現役アイドル。目良咲。女っぽい名前だから名字で呼んでやれ。テレビとか雑誌で顔見たことあるだろ。以上」
「えぇぇぇ!ノンノンノン!!もっと紹介するところあるでしょ!?」
がし、と黒斗さんの腕を掴む咲さん。その光景を見るとなんか綾人さんと黒斗さんの掛け合いを見ているようで、そこに北斗がはっとして声を上げる。
「もしかして…目良さんのお父さん!?」
「げ…」
「イエース!Congratulation!」
「今なんて…?」
スバルがあまりに響きのいい英語に耳がついていけなかったのか首を傾げる。黒斗さんも英語の発音は良いし…家族全員海外に言っても支障なさそう…
「俺と綾人と黒斗は家族なの…。んで、今回ここに来たのは学院長として審査をしなきゃってことで、まぁシャイニーと一緒。はいはい、いい?結果発表するよー」
その言葉に列を正そうとするも北斗も真もスバルも引っかかることがあったらしい。もちろん、俺も例外じゃない。
「学院長!?」
スバルが一ノ瀬さんと一十木さんの間からえぇ!?と声を荒げる。そうそうそれだ!って…学院長ってことは…!?
「黒斗さんは!?」
「…」
はっとして見ると額に手を添えはぁ、と大きな溜め息を吐いていた。
その様子を早乙女社長も咲さんも、えぇ?といったような顔で見ている。
「隠したいのもわかるけど…どうせいつかわかることなんだし…?いいだろ。なぁ」
「イエス!今回の合宿もゆくゆくの為にユーを参加させたのですから、これを機に知ってもらうべきでショウ」
「あーはいはい、そうだな。」
まったく乗り気にはなれない黒斗さんは俺たちを一度ちらりと見るも綾人さんに宥められながら結果発表を促すように列に並ぶ。
「でぇはー…結果発表します。アンコールに選ばれたのはー」
「じゃん!Twins temptation!!…え、何…嘘、うちの子?」
「ま、じかよ…」
「まじまじまーじデース!おめでとうございます目良きょうだーい!企画運営も含め評価しますが今回のパフォーマンスにはそんなものを含まずに満場一致で2人をアンコールしちゃいますYo!」
歓喜する早乙女社長と綾人さん。それに対し黒斗さんと咲さんはなぜか浮かない顔。
「父さんも俺たちに…は流石にしてないか。とは言っても…林檎さんとシャイニングと父さんだけだもんな…あーくそ」
「あの…嬉しくないんですか?」
そこに那月さんがおずおずと黒斗さんと咲さんに声をかける。確かに…咲さんからしてみれば嬉しいことだし、黒斗さんはもっと自分の事を評価するべきだと思う。
「俺も父さんも同じ考えだよ…」
「え?」
「どういうことだ?」
「本当はね、君たちの中の誰かが良かったんだ。本当に成長すべきは君たちだから。今の黒斗はアンコールに応えるべきアイドルではないからなー。」
そう言った咲さんは先ほどからは想像できないような苦笑いを浮かべていた。
::ENCORE! ENCORE!
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