彼が合宿に参加するとき
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-合宿-12日目-屋外ステージ-内輪ライブ-
「みなさんおはようございまーす。今日は内輪ライブだからって気を抜かずにちゃんと全力でパフォーマンスしてください。じゃないと本番は普段通りのライブに切り替えますからね。」
「なんか…すっかり綾人さん馴染んじゃってるよね。」
スバルの言葉に俺は頷く。早々に馴染むのはこいつの悪いのか良いのかわからないところだが…まぁそうはいってもすでに一週間は一緒にいるのだから嫌でも馴染むのかもしれない。
当初は心配だった真ももうずいぶん同室のセシルとは仲が良いようだ。セシルが俺の事を生暖かい目で見るのはちょっとよくわからないが…。俺なんかしたか…?
「と、いうことで、今日はシャイニング事務所から、シャイニーとりんさんが見に来ます。ちなみに、夢ノ咲側からは学院長が来ます。」
「え?学院長?普段滅多に顔見せないのに?」
「おい遊木、それ本人に聞かれてたらまずいぞ?」
「あ、そ、そうだよね。」
「にしても…学院長って、もうどんな顔してたかすら危ういぞ?入学式だって毎回ビデオレターだし、なんかサングラスとか変なマスクとかしてるし」
「た、確かにそうだな…俺も鮮明には覚えていないし…あまり印象に残しておきたくはないな…」
父さん…今回来なくてもいいぞ。割とマジで…つか、これを機にとか言われたがあまり次期学院長って知られたくないんだけどな…まぁシャイニングが来る時点でばれない保証はないに等しいが。
「はいはい、じゃあとりあえず…トップバッターって…」
「…」
一瞬で全員が無言になる。そういえば…決めてないな。
「え?何…どうする?このグダグダ感本番ではやってけないよ?ええと開始まで、あと20分だから…」
「誰から行きますー?」
「最初だからな…やはり緊張もあるだろうが」
「自信があるユニットが行くのが妥当ですね。」
「まぁ…内輪ライブと言えど、相当自信ないとトップバッターって中々なぁ…」
それぞれユニットごとに固まって悩みだす。というのもST☆RISHのメンバー自身特に問題はないと言いたげだが、今回は自分たちだけではないというのを考慮して、トップバッターになりたくはないのだろう。
なんせ、高校2年生。自分たちと違って沢山の舞台をこなしているわけじゃないとわかっているからだ。
「ほいほい!即席で阿弥陀くじ作ったから、みんな好きに名前を入れて!とりあえずトップバッターは俺たちがするから!」
「…あぁ…そうだな。あぁ!?何勝手に決めてるんだよ!」
ばん、と簡易テーブルに阿弥陀くじを叩きつける綾人に抗議する。
「やだーもう、黒斗ってば本当俺に対しては感情むき出しなんだからー」
「感情って大半が憤怒の感情だが…?」
「でも、黒斗もわかってるだろ?ST☆RISHは自分が一番でもいいと思ってる。でもTrickstarがいる、個人じゃない。だからどのユニットがトップバッターにしても慣れた奴と緊張した奴がセットじゃぎくしゃくする可能性が高い。とてもトップバッターとして務まらない」
「…っ」
「自分が推してる子たちを甘く見られてるのが気に食わないのはわかるけど…それが事実だからしょうがない。俺たちは2人とも慣れてるし、トップバッターだろうと揺るがないだろ。妥当なんだって…」
「綾人さん、決まりましたよ。」
「おお、サンキュー。トキヤ!」
すっかりお互い名前呼びに慣れたトキヤさんに俺も一度頭を下げる。まぁ…一ノ瀬さんって言いにくかったしな…苗字だと距離感じるし…っていや、別にこれと言って仲良くなりたいわけじゃ…
「黒斗ー?」
「ひぃぃっ!?」
「わっ…黒斗ってそんな声出るんだ?いっつもクールなのに…」
「…レ、レンさん…。なんですか急に…あの、後ろからは本気でやめて下さい」
「あっはは、いや、ちょっと気になってさ。ご飯の時もそうだけど、左側からのアクションに弱いでしょ?その時のリアクションが面白くて…」
おい、俺の目は遊びじゃないんだが…レンさんはどうも俺の目について真剣に考えてくれないようで、怒るなよー?と両手をあげてへらへらと笑っている。
「神宮司…いい加減にしろ。ここ1週間常にそればかり考えているな。」
「それ…というと?」
「目良、ではなく…黒斗、お前の目の事だ。確かに少々気になるかもしれないが子供でもあるまいし…」
「あ…あー、そんなに眼帯って珍しいか…ですかね?」
「本当に敬語まともに喋れないんだね…いいよ、タメ口で。」
苦笑いを浮かべるレンさんに一度頭を下げる。いいというなら…いいか…正直仕事モードに入らないと敬語よりも普段の喋り方が口走ってしまうから…好都合だ。
「黒斗!!ちょっと、俺ここの場面でバク転してもいい?」
いざ敬語抜きで話しかけようとすると間に割って入るようにして綾人が譜面をもって現れる。こいつ…完全に邪魔しに来たな…。
「…もう10分もないのに変にアレンジしようとするな!」
「えー…黒斗が俺の声に似せて歌ってくれれば一音ずれたりしないから大丈夫だって!」
「お前俺をなんだと…絶対に却下だ。そもそもその歌の時は基本的に俺のほうが高音多いのにそこでいきなり低くしたら次の音が取りにくくなる…」
「黒斗なら…できるよ。」
「死ね」
キメ顔で俺の肩に手を置く綾人の空いた懐に一撃を見舞う。ある程度怪我をさせればバク転もできないだろうな…なんて邪悪なことを考えながらその場に蹲る綾人の髪を正す。
「…黒斗って、意外と綾人のお世話したりするよね」
順番が決まった音也がへらーと笑みを浮かべながら俺を覗き込むように問いかける。
「世話…?」
「うん、あんだけ容赦なく殴るのに今みたいに崩れた髪セットしたり…なんだかんだ優しいな…って?」
「気、のせいだろ…出るなら完璧にしてもらわないと俺の印象も悪くなるだけで…」
「そう?でも、最初よりずっと黒斗が優しくて話しかけやすいってわかった気がする。スバルが言ってた通りだね。」
「…っ、あー、お前ら何番目なんだ。」
「最後になっちゃったー。トップバッターもどうかなって思ったけどトリもあまりよくないよね。でも、黒斗のパフォーマンス、ゆっくり見れるよ」
「見なくても…」
「ちょっと!俺を間に挟んで何いちゃついてんだよ!黒斗は俺の!!音也でも認めません!」
もう一回死んでもらおうか…
そう心で思うと綾人がびくりとその場から一歩下がる。代わりに駆け込んできたのは真だった。
「黒斗さん!僕たち3番目です!あ、トップバッターの黒斗さんを入れたら4番目です!」
「あ?…おー、良かったな…?」
心底嬉しそうにする真に一体その番号の何が良かったんだろうと首を傾げるとがしりと手を掴まれる。
「黒斗さんのパフォーマンスが見れる順番で嬉しいです!」
あぁ…そういうことか…。
どうして真はこんなに俺のライブを見るのが好きなんだろう…歌声もパフォーマンスも確かに俺はその血筋だからか才能はあると思う。だが、その点で言うなら泉の方がずっと心を込めて歌っているし泉自身が踊っている。ああいう性格もあってか真は認めてはいるけど泉のライブを見れてもここまで喜ばない。真の中で俺が泉に勝っている理由は…なんなんだろう。
「いつもそう言ってくれてありがとうな。お前の為にライブを盛り上げる」
「黒斗さんこそ、いつもそう言ってくれてありがとうございます」
そろそろだよー、と綾人にせかされ俺は舞台裏へと駆ける。代わりに真は客席の方へセシルと向かっていった。
::Fight! topbatter!
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