頭のおかしなボディガード
パンッ、パンッ!
と繰り返し乾いた音が鳴る。
もうこれで何回目だろう。さすがにもう見飽きたな。
「##NAME1##。」
「ん?…あ」
僕の声にぴたりと手を止めた##NAME1##はゆっくりと振り返った。
やっぱり、見間違いじゃなかった。
##NAME1##の目は普段の赤色とは違う赤黒い血の色に染まっていた。
それも冷静になっていく##NAME1##との心境に合わせて元に戻っていく。
「わあぁぁぁぁぁぁ!?」
と思ったら今度は##NAME1##が驚きのあまりに奇声を発した。
「なに、もう」
「ひどいよコレ!俺がやっちゃったの!?えぇぇどうしよう!」
あぁ、死体の片づけのことか…
「どうせ##NAME1##がやったなんてこの国の奴らが特定できるわけないし通り魔程度で片付けられるんだからほっとけば」
「俺の服!!お気に入りだったのに!!」
「…」
さすがに呆気に取られた。
今、目の前で死体に遠慮なく銃を放ってた奴が慌てる要素がよりによって自分の服?頭おかしいの?
普通死体撃ちはやりすぎたとか、それこそ死体の処理とか、道徳的なことは一つも思い浮かばないの?
「##NAME1##、とりあえず」
「真琴は先に家帰った方がいいよ。俺はちょっと服着替えてから」
「いや、僕の家すぐそこだしそんなんで街歩かれたらさすがにバレるでしょ。##NAME1##だって王制側だったんだから捕まるどころじゃ」
「あ、えぇ!真琴の家上がっていいの!?うわぁ!緊張するなぁ」
「いいよ。っていうか、そこじゃないよね今の論点は」
##NAME1##は、思っているより危険人物なのかもしれない。色んな意味で
「とにかく、あまり人気のない道を通っていくから。はぐれないでよ」
「うん。わかったよ」
「…はぁ、澄快は知ってるのかな」
ぼそりと呟いた僕の呟きは##NAME1##には聞こえていないようで。まぁ知ってたなら僕に説明の一つでもするだろうし…
それにしたって、あまりに殺人鬼としての才能がありすぎて…身内だとわかっていても恐怖を覚える。
さっきは冗談めかして怖かったと口走ったけれど、よく考えれば本当に怖いのかもしれない。この人が、向こう側に付いていなくて本当によかった、僕のお兄ちゃんなんてあほらしい笑みを浮かべてくれて本当に良かった。
「はいここ。とりあえず血生臭いからシャワーでも入りなよ。服は…今から駄犬に用意させとくから」
「あはは、お言葉に甘えさせてもらうけど、あまり澄快をいじめたら駄目だよ」
「あいつがもっと##NAME1##みたいに腕がいいなら態度を改めるかもね」
「もうその話やめてよー…」
またぐすぐすとしょげながらシャワールームに向かっていった##NAME1##をベッドに横になりながら見送る。
駄犬に連絡をすれば「あいつの服のサイズなんてわからねぇよ!」と返事が来た。
「…同じくらい…だと思うけどな。僕から見れば」
溜め息を吐いてお前のでいいんじゃないと提案すると即行で返事が来て「あいつに似合わないものを持っていく」なんて駄犬にしては面白い返事をしてきた。
楽しくなりそう、そう呟いて僕は端末を枕元に放り投げ、これから起きることに胸を膨らませながらそのまま目を閉じたのだった。
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