頭のおかしなボディガード
今日はあいつらの動きも鈍ってるっぽいし、あの駄犬に付きまとわれることもなく自由に街を歩けるかなー。なんて思ってたのに。
「うーっわ…最悪」
まさか、ほんとまさかよりによって##NAME1##に会うなんて。
「ん?あぁ、お久しぶりです」
にこにこと笑みを浮かべて恭しく右手を胸元に添えて会釈してくる##NAME1##。
「…はぁ」
こいつは僕たちがまだ王族としてこの国にいた時からの付き合い。なんて、付き合いといっても何人かいた執事の内の一人の…息子。で、僕の二個上。超真面目に執事の勉強だとかしてたくせになんか抜けてる。
あの時に僕の父親と一緒にこいつの父親も殺されて、その時すら真面目ぶって「自分は平気です」って言ってたけどほんとはこっそり泣いてたのを見たことがあった。
ちなみに騒動の後にあの駄犬と身を隠す話を持ち出したのもこいつ。
あれから何度か、情報交換として駄犬とは会ってるらしいけど、僕と会うのはまだ片手で足りるくらいだ。
「なにしに街をうろついてるの。君は」
「せっかく久しぶりに会ったんだ。そんな怖い顔しないでほしいな」
今となってはほぼ敬語で話しかけてこなくなった##NAME1##。
それもそのはず、そもそも僕たちは兄弟みたいに遊んだりすることも多々あったせいで##NAME1##にはそこまで執事としての志はもう芽生えてはいない。それに、僕がお兄ちゃんなんて呼んでたこともあった。らしい。もうさすがに言わないけど
「…べつに」
「嬉しいなぁ。真琴と会う時はいっつも念には念をいれてーって感じで会うことも多いし、その度になんかよそよそしいしね」
「そりゃそうでしょ。仲良くティータイムするために集まってるわけじゃないんだからさぁ」
じとりと睨み付けると「それもそうか」なんて苦笑いを浮かべる。
こいつはどうしてこんなにお気楽そうに笑っているんだろうって、僕は会う度いつもイライラする。
それが##NAME1##にとってよそよそしいっていう態度なんだろう。お花畑な頭だな。
「そうだ、最近よその国で美味しいチョコレートを見つけてさ」
「チョコレート…もしかしてそれさ、ショコルーナのだったり」
「え、そう…だけど。なんで真琴が知ってるの」
目を真ん丸にして驚く##NAME1##の間抜け面に笑ってしまいそうになるけど、愛の日の試食会の事を思い出すと逆にいらいらが立ち込める。
「真琴…百面相してる」
「ショコルーナには一回、"外交"で行ったことがあるの」
「ががががががいこう!?」
予想通りの反応をした##NAME1##にうるさいと忠告して、訳を説明する。
「へぇ…クレト王子って若いって聞いたけど…なんていうかそれは、災難だったね」
「別に…変な奴から身を隠してばかりじゃつまらないし、まぁ…そこそこに、美味しいものも食べれたし、悪くはなかった」
「ふふ、真琴、丸くなったんだね」
微笑ましそうに俺を見る##NAME1##に悪態の一つでも吐こうとしたとき、ふいに腕を引かれて視界が真っ暗になる。と、同時に耳に響いたのは銃声だった。
「っ!?」
「ちっ…空気読めよ」
一体何がどうなったのか、いや、大体予想はついていた。けどドスの効いた低い声が聞きなれなくて僕は思わず目を瞑ってしまった。
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