イベントストーリー
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モールライブ当日。
無事開催されたモールライブに私は正直、黒斗先輩は一体どんなマジックを使ったのだろうといまだ疑問に思っていた。
「蒼空先輩。」
「うん?」
「黒斗先輩の鶴の一声でモールライブが開催されたって聞いたんですけど…本当にそうなんですか?」
「…あー、うん。事務所のあれで、ほら、コネで。」
「条件付きでね!黒斗の顔すっごいゆがんでたから写真撮っちゃったよー!後日期待だねー」
条件付き?その疑問が危うく吹っ飛んでいきそうな勢いで黒斗先輩の双子の兄…だという綾人さんに後ろから声をかけられる。
蒼空先輩から聞いたところによると極度のブラコンであるものの仕事に関しては流石兄弟とほめたたえる程の努力家らしい。
確かに、普段の黒斗先輩を見るとその努力のほどは物凄い。
ただ…一番記憶に新しい黒斗先輩には物凄く怒られた。でインプットされているからか私からも近づき難く、今日も物販ブースにいる黒斗先輩から逃げるようにライブの会場裏等に隠れてしまう。
「にしても…黒斗がいくら切れたとは言え、直接女の子の目を見て口を開くなんて天変地異の前触れかと思ったよ」
「え、そんなに…ですか?」
「黒斗はもともと人と目を合わせること自体珍しいから。蒼空のおかげか少しは緩和してるけど、昔は魂抜けたような目してて。まして女の子なんて…もう酷かったんだから。」
「綾人ー、あんまり喋ると今度こそ殺されるかもしれないぞ?俺止めらんないからなー」
「いいよ!黒斗に殺されるなら本望だし!」
「…」
あはは…と軽く笑うと蒼空先輩にかかわらない方が身のためだよ。と離れるよう促される。
行き場もないし…と先ほどの話を思い出しながら黒斗先輩を探す。今回の事、条件付きとか…色々無理させてしまったみたいだし…お礼はちゃんとしないと。
「Ladies and gentlemen…!これより夢ノ咲学院のIdolたちによりLiveが始まります。物販BoothではGoodsも販売していますので、どうぞお立ち寄りくださいまし」
会場に司くんの声が響いた後光くんが嬉しそうに飛び跳ねながら登場する。その姿にお客さんは和んでいるようで、可愛い!と歓声が聞こえてくる。
「…安心。か?」
「へ…え!?黒斗先輩!!」
「蒼空…いた。」
いつの間にか私の隣に立っていた黒斗先輩は私と一瞬目が合った途端にどこからか引っ張り出すかのように蒼空先輩を私と自分の間に立たせる。
「恋した乙女みたいな行動するなって!っていうか、俺がせっかくちょっと話しかけに行きなって言ったのにそれだけ?」
「これ以外に話すことはない…そもそも俺は別にそいつと話そうなんて…」
「そうそう!黒斗はずっと箱入り娘でいいんだよ!女の子怖いんだったらしょうがない!」
「綾人の意見には反対だが、やっぱり転校生でも俺のトラウマは…もうどうにもならない」
綾人さんに一撃見舞いながらそう告げる黒斗先輩は特に困った様子もなくただ当たり前のように蒼空先輩に伝えた。
私自身、寂しいと思う気持ちもあるけど、私がどうにかできるものではないのは以前知った。黒斗の心の傷は簡単なものじゃない。そう蒼空先輩にきつく言われた。
「私は、それでも手伝ってくれる黒斗先輩に物凄く感謝してます。今回だって、無理をさせてまでここを抑えてくれて。」
「…無理を…それは誰から?」
あまりに意外だったのか目を見開いている黒斗先輩。いつもは整った顔を崩すことはないために私にとっては相当意外な様子に口ごもってしまう。
「えっと、何か、条件付きだって、…あ、綾人さんが」
私が綾人さんと口にした途端に横にいた蒼空先輩はだめだめと言いたげに首を横に振り、当の綾人さんは私に向かって満面の笑みで馬鹿。と口を動かした。
「おい、綾人…!なんつうことをばらしてんだよ!?」
「だ、だだだって!黒斗がこんなに転校生ちゃんの為に頑張ったんだよってことを教えないとと思って!」
「俺が転校生の為に頑張るわけないだろうが!」
「またまたそんなこと言って!俺もそうだけど、後輩ちゃん可愛いんだから!その後輩ちゃんとは同い年だけど!」
「…お前と俺は違う。というか、可愛いなら勝手に付き合うなりなんなりしてろ。」
「やだなー、可愛いってそういう意味じゃないよ。面倒見るとかそういう…。っていうか俺付き合うってなんかよくわかんないしな。もし付き合うなら黒斗がいいなぁ」
まじまじと2人のやり取りを見ていると蒼空先輩が目に毒。とライブを見るように促す。
「綾人のことどう思う?予想以上にブラコンこじらせてるだろ?」
「は、はい…。蒼空先輩から聞いてたおかげか酷く驚いたりってことはないですけど…不思議ですよね。凄く二人とも似てるのに、全然性格違くて」
横目でちらりと見ればまた黒斗先輩が怒鳴ったり綾人さんがおどけてみせたりと仲が良いような悪いようなやり取りをしている。
「あ、すーたんだ。」
その言葉を発した蒼空先輩はまるでお兄さんのように司くんを見守っていて、少しだけ、そんな関係が羨ましいと思ってしまう。最初そのあだ名に誰のことだろうって思ったけど…
ライブも終盤に差し掛かり、一層盛り上がってくる。
このライブがこうして開催できたのも、黒斗先輩のおかげで、物販ブースが滞りないのも蒼空先輩が手伝ってくれたから。
1年生の子たちのレッスンは綾人さんが毎日来てくれたって聞いたし…私、プロデューサーとして大丈夫かな…
今年度、最後まで先輩に頼りっぱなしで…来年度からはいない上に、後輩が入ってくるのに…
「黒斗が心配してるよ。」
私が顔を俯かせているとひょっこりと覗き込んできたのは綾人さん。にっこりと満面の笑みを浮かべる笑顔は逆にこちらが負けてしまいそう…
「あの…」
「綾人、余計なこと言うな。」
「黒斗がなんでも見えるのは知ってるだろ?転校生ちゃんが落ち込んでるって心の隅で呟いてたからさ。ねー」
「…、」
じとりと私を睨んだあと目を逸らす黒斗先輩。その視線の先にはモールでも人気のアイスクリーム屋さん。
「終わったらおごってやる。…俺としては女に何かおごること自体あまり…乗り気じゃないが。」
「え、じゃあ…」
「お前はプロデューサーだ。労いくらいは、な。」
「っ…!」
何も口にすることができずに口をパクパクさせていると綾人さんが変な顔ー。と笑う。
それでも、私は黒斗先輩にプロデューサーと呼ばれたことが意外で、嬉しくてしょうがなかった。
「勘違いするな。俺たちのじゃない。あいつらのだ…だから、俺が何もプレゼントしないって言ったらあいつらがうるさそうだろ。」
「いえ…それでも、嬉しいです…!ありがとうございます!!」
「…礼なんかいらない。学院の中でお前にだけはまだ何もプレゼントしてないからな。最初で最後だ。ったく…話してたら具合悪くなってきた」
逃げるように物販ブースに向かっていった黒斗先輩は軽く口元を覆っていたがその表情は冷たいものではなかった。
「黒斗がデレた。むかつく」
「綾人には滅多にデレないのにな。」
「うるさいまったく。ほら、お前らも物販の方行けよバーカ!俺はお客さんとしてグッズ買うもんねー」
「え。買ってくれんの?」
「指導してると愛着湧いちゃってさ!これからも色々応援してやりたいなぁって!!」
私が嬉しさで流した涙を拭っている内に清々しいほどに笑みを浮かべた綾人さんはすでに行列ができている最後尾へと手を振りながら向かっていたのだった。
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