イベントストーリー
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「うー、飽きちゃったんだぜ。じっとしてるのは苦手なんだぜ!」
「だからってドタバタ走り回るなよ。ここは防音練習室と違ってそこまで防音性がないから、あんまり大騒ぎしてると他の生徒に注意されるぞ?」
というか、俺たちのことを気にしてほしい。かも。とはいえ予想以上に爆睡してしまっている黒斗を起こすのも心苦しくパーテーションで一角を隠した俺たちを見つけるのは難しい。こういった部屋の隅にパーテーションとかそういったものが置いてあるのは当たり前だし…
「…黒斗」
小声で声を掛けるも起きる気配はない。そりゃそうだ。さっきまで大声で声をかけても起きないんだから小声で起きるわけがない。わかってたけど。きっと寝顔が見られるとかそういうのは黒斗の性格上よくないし隠したけど、うん、あとでなんかおごってもらおう。それかとんかつ作ってもらう。
っていうか、いつまでもこうしているわけにもいかないし。窓側の壁っていってもここから簡単に出れるような窓じゃないし。
「黒斗ー!!あー!黒斗のにおいがする!ここ付近の廊下も相当香ってきてたけど、ふふふ、ここは一層強いな!というかいるだろ!ここに!そう!そこに!」
「ひゃぁ!だ、誰ですか!?」
「うぇぇ!スーツ着てるぞ!?あれ、でも…どこかで見たことがある…」
まずい、この声は…っていうかなんで?どうやって入った!?
先ほどまで転校生ちゃんを待ちわびていた1年生の子たちはちらりと様子を見れば怯えた表情を浮かべている。そりゃそうだ。そいつ変質者だよ。警備員何してんだよ!
「あれ?でもどっかで見たことある顔なんだぜ?」
「おい光!あんまり近づかない方が…」
「この人目良ちゃん先輩なんだぜ!」
「えぇー、でもなんか違うッスよ?ほら、だって、ええっと。なんか足りないような。」
おい!黒斗の大事なチャームポイントだろうが!なんで気付かないんだよ…って、あれ?足元にいたはずの黒斗が、いない?もしかして…!?
「うぎゃぁぁぁ!!」
「ひぃぃぃぃ!!」
各々が各々の叫び声を上げる中、1人、言葉にならない断末魔を上げるものがいた…それが何を隠そう、綾人だ。
もちろん、一撃で後ろから回し蹴り、倒れこんだところを上にのしかかり頭を床に抑え込んで今まさに人を殺しかねない目をしているのが黒斗。
1年の奴らは何が起きたのかわからないのか悲鳴を上げてそこにへたり込んだしーのんと真白くん。その後ろには驚いてとらくんの後ろに隠れるたかみー…。
さすがにまずいと思いパーテーションから出て俺は黒斗を抱え込み綾人から引きはがす。まだ殺人級の目をしている黒斗を宥め。綾人を叩き起こした。寝起きの黒斗にお前という刺激は強すぎるよ。
「あー、えっと。みんな落ち着いて。この人はとりあえず変質者ってことで警備員に引き渡しておくから…ごめんなー?」
「ちょっと!変質者って酷くない!?ちゃんと俺許可を得て入ったの!目良の!ご子息として!っていうか黒斗!ほら!みて!この間嶺ちゃんにね!スーツ見立ててもらったんだよ!高校生で言うと卒業だからって…!」
綾人を引きずりレッスン室から追い出そうとしている最中も懲りずに黒斗に声をかける綾人。ドアに手をかける直前俺は自動的に開かれるドアに反応できず思い切り頭をぶつける。
「いだっ!」
「え!ご、ごめんなさい!」
反動で手を離してしまった隙に綾人は黒斗の元へ走って行ってしまい、俺は転校生ちゃんに事情を説明する、と足止めを食らってしまう。淡々と進められる説明の最中何度も後ろを振り返ると一応場をわきまえているのか無言で殴ったり殴られたりを繰り返している。
時たま見ると本当に黙って向かい合っているのに急に黒斗が呆れる溜め息を出したり綾人がドヤ顔を披露したりしている。あいつらテレパシーでも使えるのかな。
「えっと、それで今回集まってもらった理由なんだけど、司くんが言っていたように1年生のみんなでユニットを組んでもらおうと思って、それでライブも開かれるから…」
へぇ、1年生の臨時ユニット、か。なるほど。ずば抜けてすーたんのパフォーマンスが高く評価されるけど、堅実さがにじみ出てる司もこういったメンバーで組めば柔らかさ、もとい柔軟さを覚えられる。それは良い経験になる、か。
って、ショッピングモール?そんなところでさっきはもう先方の了承を得てるって。いやいや、あそこって確かそんな緩くないよな?仮設会場を作るのだってこっちが全部経費だすって話をしてもうんって中々言ってくれないはず。…俺たちの事務所は割と地元との交流があるからOK出るけど。…うっひゃー。頑張ったな、どうやって交渉したんだろう。
「あの、蒼空さん。お話はある程度終わったんですけど。ごめんなさい、少しだけ残ってもらっていいですか?」
1年生は各自解散。ということになった直後俺を帰らせないようにするため焦った様子で声をかけてくる転校生ちゃん。
「あーいいよ。あれ、もうしばらくしないと終わらなさそうだし…」
「…!」
「あれ、そんな驚いた顔して…知ってんの?」
「え!いや、さっきガーデンスペースで見かけて…あの、スーツだったので」
「まぁ、一応社会人…だしね…。っておいいいぃぃ!」
「やめろぉ!くっそ!離せ!!そして死ね!!」
俺が溜め息を吐いてあいつらのじゃれ合いを見ていた途端に事件が起きる。
「ひゃぁぁ!?ちょ!えぇぇぇ!!」
転校生ちゃんも突然の出来事に頭がついてこないようで悲鳴を上げた後口をパクパクさせている。
「んー?お兄ちゃんと挨拶のちゅーくらい余裕だろ。小さい頃はよく…してたよな?」
「お前とした覚えはこれっぽっちもない!顔を近づけるな!気色悪い!」
黒斗が綾人を突き飛ばしそれを駆けつけようとした俺が何とかキャッチする。と同時に羽交い締めとでも言われてもおかしくないが捕まえる。死ね。とぶつぶつ言ってる黒斗を見た途端に綾人ががたがたと震え出すのを見て俺は倒れこみそうな綾人を何とか抱きかかえて黒斗を宥めた。この惨劇続きで疲れ切った俺を一言で表すならなんだ、そう。不憫だ。ここまで酷い一日はない。
「あ、あの…えっと」
「転校生ちゃん、今見たことは忘れてな?ちょっと、こいつら色々説明するの面倒だからあとで言うけど、えっとー、そうだ。用事って?」
「…!そうだ!…さっき鉄虎くんに言われた時ドキッとしたんですけど、実は」
「うん」
真剣な面持ちの転校生ちゃんに黒斗はピクリと眉間に皺を寄せ綾人もふと真面目な顔になる。いや、お前関係ないから。部外者だから。
「実は…じ、実は…!まだショッピングモールの方の了承を得てないんですぅぅぅ!!」
「はぁぁぁ!?それって…」
「おい、それは本気か?馬鹿かお前は!いや馬鹿だ!どうする気なんだよ!このままノーと言われ続けていざライブができなくなればお前が失敗に終わるだけじゃない!1年生の奴らがどれだけショックか…!」
俺が転校生ちゃんに事情を聞こうとすると今まで転校生ちゃんと直に話したことのなかった黒斗が怒鳴り声を上げた。失望した。といった顔をちらりと見せたが泣きそうな転校生ちゃんの顔を見た途端にびくりと肩を震わす。
女の子の扱い慣れてないもんなぁ…
「…あー、でも、その1年生?に言っちゃったんなら意地でも開催するしかないだろ。ね」
「…俺を見るな」
「黒斗。プロなら言ったことは実行しなきゃだし、権力の使い方って習ってるでしょ。父さんから」
「ちっ、あぁくそ…今回だけだぞ」
綾人の言葉に渋々と頷いた黒斗を見た俺と転校生ちゃんは2人揃って首を傾げるしかなかった。
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