イベントストーリー
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「デッドマンズか…」
「懐かしいよね?顔ぶれは違うけど、あれってほんの一時のユニットだったんだっけ?」
時刻はおおよそ17時頃、返礼祭夜の部にて俺たちは先ほどライブを終えた。といっても、まだ何回か控えているのだが…
「部長もさ…?若い頃みたいにああやってせっせと動くのも意外だよなー。わんちゃんのこと気にかけての事なんだけど。」
「案外後輩がいるとそうもなるんじゃないか…?しかし昔の零か…俺はもう忘れたな。」
「いやそれ黒斗の記憶力の問題じゃん。俺はちゃんと部長の事覚えてるよー?部長ってばかっこよかったのにな?今も見た目は変わらないけどさ」
つまり今の性格はあまりかっこいいと思ってないのか。なんてことはさすがに口にはせず俺は物販コーナーの方へと足を運ぶ。
「見てかないの?」
「昔を思い出しそうで嫌だからな。蒼空は見てても、いいんだが」
「ふっふーん。そういう時はどうやって甘えるか教えてあげよう。一緒に来てくれないとぉ黒斗寂しいー!っていうんだぞ」
「死ね。もういい置いてく」
「待って待って!ごめんって!」
俺が足早に観客席から立ち去るとぶつかってきそうな勢いで蒼空が追いかけてくる。
事実背中にぶつかってきたのでもちろん殴っておいた。それだけ衝撃があったのだから当然の報いだ。
午前の部の昼前の時点でだいたいのユニットが午後の部に参加できることが決まる。俺たちが2年の時はユニット単位でなければいけないということもあり蒼空が参加できずホワイトデーの企画で海外に仕事にいっていたのについていった。
それが今回は昼前の時点で午後の部に参加できると知らせを受け、俺も蒼空もわずかながらにテンションが高い。いや、蒼空はいつも高いか…。
「そういえばさ。あの人に挨拶したの?」
「あぁ、まぁ。簡単に…したつもり」
「もっと再会を楽しむように挨拶すればよかったのにな?あんなそっけない態度取ってー」
「み、見てたのか!?」
「あれ?なに?照れてんの?へぇー黒斗でも照れるとかあるんだ?へぇー?」
にやにやと嫌な笑みを浮かべる蒼空の頬を思い切りつねりながら悪態をつく。
そもそも見てたなら聞いてくるな。俺がどんな挨拶してようと勝手だろうに…。
「でも、ふふん。確かに黒斗が憧れてたんだなーってわかる感じだったよ。だって言動は冷たいけどめっちゃ尻尾振ってる犬みたいだったもん。」
「阿呆いえ。俺がそんな態度取るわけないだろう。」
「でもライブ後の熱気とかもあって黒斗そんなんだったって。マジで。抱き着かれても引きはがそうとしないどころか受け入れてたし?俺もしてー!」
「やめろ気持ち悪い。」
冗談冗談、と両手を広げながらいう蒼空がどうにも可哀想に見えてくる。なんだこいつ。
「…ほら」
「え?…何?」
「ん、抱き着きたいとか言ってたから。来るかと思って。」
俺がしれっというのに対し、蒼空は開いた口が塞がらないとでもいうようにぎょっとした顔で俺を見る。なんか、むかつくな。気分いいからやってやろうと言ってるのになんだその化け物を見たような目は。
「黒斗。あの、え?なに?黒斗って昔はそんなに自分のパーソナルスペース狭かったの?」
「…おー。そうみたいだな。綾人や泉ともよくくっついた写真撮ってたし、あまり思い出したくはなかったが、今の綾人とちょっと似てるくらいの性格だったと思う。」
「あんな阿呆みたいなの!?」
お前も変わらないだろ。そう言い放つとむっとした顔で俺はあそこまで病んでない。と言い返される。病むかどうかの話じゃないが…確か俺の昔の性格は…確かにあんな感じだった。悪くはないと思う。でも、今の性格がやっぱりしみついているし、それが俺で、その俺でこうしてアイドルをやっていこうと決心した。
それを支えてくれたのは1,2年の時にしつこく俺に付きまとっていた蒼空だ。
「…今日は、返礼祭だしな」
「へ…?あ、あー!なるほど!」
察したのか閃いたのか蒼空は思い切り俺に抱き着く。ちょっと勢いがあったからそのまま何度かくるくると蒼空を抱きしめて回る。
「うおお!?ちょ、黒斗!そこまでしなくてもぉぉ!!」
「はは、いや、ちょっと楽しくって。」
落ち着いて蒼空を離してやれば少しふらつく。ともあれ、今の謎の行動を周りの人が見ていたようで何人か写真を撮っていたのかスマホを構えていた。
「うわ、なんか変な人とか思われてないよなー?」
「ただ単に仲いいユニット程度にしか思ってないだろ。なんかあってもお前の得意なファンサで何とか誤魔化せよ。」
「えぇ?何その無茶ぶり。あ、ほら、物販コーナーついたけど…すっごい行列。」
「チョコもあるからな。何とも甘い匂いばかりだが。えぇと…」
「んん?何探し?俺たちのグッズ?」
「いや、なんで自分たちのグッズ見に行かなきゃならないんだよ。気持ち悪いだろ。ここ張ってる生徒会役員だよ」
「え?なんで」
「仕事。」
そういうと蒼空は、ほぉー。と納得したのかしてないのか曖昧な返事を返す。そう、俺が次期学院長だという肩書が今回卒業と同時に明確になり、売り上げや簡単な経営法は頭に入れておかなければならない。とは言っても、すぐに学院長になることはまずないのだが、なんとOBとして特別枠の教師に任命されている。まだ現役でアイドル活動はするという話はしているのだが、プロデュース科設立が本格的になる今年度、教師の数が足りないのは明白だ。
その特別枠の教師…なんと実は蒼空にも話がいっているらしい。
「経営学ってよくわからないけど、さすがにそこまで考えなきゃいけないの?」
見つけた生徒会役員から今の現状が簡潔に書かれた資料を見せてもらう。さすがに売り上げとかは乗ってないか…それぞれのブースに行かないとないかも…な。
「いや、そうじゃないが、少しはこう…実際に目で見た方がいいかと思って。」
「大変だなー?」
「お前はどうするんだ。先生の話」
「…うーん、あまり実感わかないけど、なんかそういうのもありなのかなーって思ってる。言葉にするのは苦手だけど、誰かに熱意を伝えるのは好きだし」
「じゃぁ、お互い頑張ろうな」
「ふっふーん、俺超人気の先生になるから!黒斗はなんか椚先生みたいにみんなから怖がられたりしそう!」
「なっ、俺だって少しは表情筋蘇生してるだろ。」
「えーでもまだまだだよ。もう少し頑張りましょう!って感じ」
「俺に先生面するなよ…」
「怒らない怒らなーい。…あっ、黒斗。」
そこで横に視線を逸らした蒼空が目を見開いて俺を呼ぶ。俺は近くにいた生徒会の役員に資料を渡して蒼空の視線の先を見る。
「せなたーん!」
蒼空が手を振っているその先にはKnightsの面々がファンに囲まれている。どうやらライブ間の空いた時間にチョコを配っているようだ。随分と、ご苦労な。そういえばファンサ人気第一位だったな。なるほど、ホワイトデーのチョコも自分たちで配って、買ってくれたグッズにサインを…ということか。
「アイドルだな…あいつら。」
「俺たちもする?」
「いや…それは…」
俺が断るよりさきに蒼空はそのKnightsの列に混ざる。聞いといて答えを聞かないってのはどうなんだよ、おい。何に使うのかわからないグッズを蒼空が買い、そのまま列というか…大群に混ざっていった。見てみると二つ、三つ同じグッズを持っている…。何してんだまったく。
「つっきー!すーたん!サインちょうだい!」
最前列に来た途端に声を張り上げる蒼空に全力で他人のふりをしたくなり、俺はこっそりとKnightsのブースの奥に逃げ込んだのだった。
衝突!思い還しの返礼祭 -White Day-::END
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