イベントストーリー
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衝突!思い還しの返礼祭 -White Day-
知らないふりしていようと必死に無表情を決め込んでヴァイオリンを構える。とはいえ簡単な楽譜が目の前にあるがとても演奏できる状況ではなく、慌ててヴァイオリンに傷がつかないようにとケースにしまい、今に至る。
そう…この逃げようにも逃げられない地獄。
それはもう、思い切り、思いっきり近くにある椅子を蹴ったわんちゃんは怒りを抑えられないまま部長に怒声を浴びせる。いやもう怒号だけどな。
「俺様が何のために今まで…!!」
「もう、いいんじゃ。のう晃牙」
「だから…気軽に名前で呼ぶんじゃねぇ!」
…あーもう。俺今日部活さぼればよかったのかな?
ふっつーに部室入っていつも通りピアノでちょっと遊んで。それからわんちゃんが来て…部長が珍しく起きて。
「自由に生きよ。もう我輩に縛られていなくてもいいんじゃ、晃牙」
「んのっ…ざっけんじゃねーぞ…!?」
そう言ったのを最後にわんちゃんは部室を飛び出して行ってしまった。長い溜め息を吐いた部長に一瞥される。
「情けないところを見せてしまったのう。」
「あー、えっと…。情けないっていうか…我が儘…かな」
「じきに愛し子たちがくる。我輩は少し席をはずそうかの。」
「俺も行くよ。なんかよろよろのおじいちゃん放っとくほど俺の心は鬼じゃないし?」
悲しそうに笑う部長を放っとくなんて、俺がするわけないだろ。単純にそう思った。それに、3年間ずっと同じ軽音部だったんだし?恩返し程度にはなるでしょう。
「部室、結構荒らしちゃったなー。もう、わんちゃんってば…」
部室を横目に見ながら出たところでゆうちゃんとひなちゃんが走ってくる。
「あのっ!大神先輩の怒声が…!」
「あ、朔間せんぱ…」
すれ違い様に部長はひなちゃんに何か言うかと思えば一言も喋らずそのまま歩いて行ってしまった。
俺は傍らに抱えていたヴァイオリンを持ち直し部長の後を追う。
「騒がせてごめんね?部室お願いできる?…あと、わんちゃんのことちょっと探してくれると嬉しいな。多分、そこら辺の廊下歩いてるか…教室でむしゃくしゃして暴れてるかだろうから。」
間違いなくとばっちりというかもう貧乏くじだと思うけど、部室と晃牙を兄弟に任せる。だいたいわんちゃんがどこにいるか、なんてわかってるから俺が行けばいい話なんだけど…俺はわんちゃんに相当舐められてるからなぁ。行っても追い返されるだけに終わってしまうし
「部長!待ってってばー。」
足早に歩く部長を追いかけたどり着いた先はいつも散歩しているとかしていないとかのガーデンスペース。
「…はぁ」
近くの草っぱらに座り込めば長いこと溜め息を吐く部長に俺はただ隣に座る。自然と向こうが話してくれるのを待つつもりだった。
しかし、俺の予想を大いに裏切る言葉が放たれる。
「黒斗は元気かの?」
「…あのさ、俺人を説教したりとか苦手だし、まして部長に対してあーだこーだと言えないんだけど、それはないでしょ。」
「う、うむ。」
「どうしたの。って、始終あそこにいたし、わからなくもないけど。どうして急にあんなこと言ったの?」
「簡単なことじゃよ。我輩たちはもう、卒業するじゃろ?」
「へぇ。はぁ…なるほどー。」
「蒼空くんにはわからんじゃろ。後輩がおらぬユニットは卒業後でも気兼ねなく活動するか解散してそれぞれの道を行くか、簡単に決められる。」
「…そうだな。わかんない。でも、1年も2年も一緒に活動してきたユニットがさ、そう簡単に解散。って…寂しいって気持ちはわかるよ。部長だってそうだろ?寂しいくせに、変に片意地張っちゃってさ」
俺だって、もし黒斗とユニットを解散。なんて話になったら泣くほど嫌だ。わんちゃんは泣いたりしない子だし、むしろどうすればいいかわからなくてぶち切れたんだと思うけど。結局はそういうことだと思う。
それに…
「それに、わんちゃんのこと、晃牙って呼んだら駄目だろ。俺は1,2年の頃、黒斗に追い払われては部室にこもったりしてUNDEADの様子を見てたからわかるけど、わんちゃんが吸血鬼ヤローって呼んでるのも部長がわんこって呼んでるのも意味があるんだから。」
「そう口にすれば…わんこも我輩を見限るかと思ったんじゃが」
「見限るって…いやいや、そんなわけないじゃん。きらっきらした目で部長の事尊敬してたんだから。」
呆れ半分で俺が溜め息を吐くと部長はかなり落ち込んだ様子で溜め息を吐く。
「なぁ零。せめて、言ったならそれなりに胸を張らないと。まったく、言って後悔するような性格じゃないくせに。」
「…そう、じゃの」
俺は傍らのヴァイオリンケースを開いたところで視界の隅で俺を覗き込む部長の姿がをとらえる。
「ん。何?」
「いや、蒼空くんなのかどっちなのかわからなくなってのう。最近はこう、一つになりつつあるが、またいつ不安定になるか…心配じゃのう」
「…怒ったらだいたいあっちの方が強いと思うよ。でも最近は黒斗のおかげで、俺だけは変われてる気がするかな。つか、人の事心配してるほど余裕あるの?なんだよ。追っかけてきた俺が馬鹿だった!」
舌打ちしながらヴァイオリンを持ち立ち上がるとテラスの方からゆうちゃんが走ってくる。
「やっと見つけたー…!」
ゆうちゃんを視界から外しヴァイオリンの弓を見る。そういえばいつぶりだったかな。最後に使ってから、ゆうに1年は空いてる。
「って、あれ、星宮先輩…ヴァイオリン弾けたんですね。姿勢もいいし…」
「今は話しかけん方がいいぞい。怒っておるようじゃから、心を落ち着けるために演奏しておるのじゃろう。」
「え、星宮先輩って怒るんですか?いつもふざけてばかりいるのに…」
「くくく、昔はそれはもう荒れておったのう。」
「おーい、余計な事喋ってないでお孫さんにちゃんと状況を説明してあげて。」
弓を下ろし深呼吸をして後ろにいる2人に声をかける。木漏れ日にあたっている2人はどうも案外呑気な顔をしていて、部長のことを心配した俺が馬鹿だったとまた改めて思った。
「…もう、部長ってホント我が儘。…わんちゃんは大丈夫かな。」
「わんこは案外傷つきやすいからのう…」
傷つけたのはあんただよ。といってやりたい気持ちをぐっと抑えヴァイオリンを片づける。決して高いものでもないがヴァイオリン自体そう安いものでもない。しかも人のものだし。そう思って丁寧にケースにしまっているところで、陰から猫が姿を現した。
「わ、猫…」
「あぁ、なんか学院に住み着いてるっていう猫ですか?まさかこんなところで出てくるなんて」
「今はわんこの話をしておったのじゃが、ヴァイオリンの音に引き寄せられたのじゃろう」
「いや、わんこってわんこじゃないんだけどなー?っていうか、ゆうちゃんが来たんだから。ちょっとは悩み相談しなって。俺より話しやすいんでしょ、どうせ」
そう口にしながら猫を抱え座り込む。するとゆうちゃんも姿勢を正して部長の方を見据える。いや、そこまでかしこまらなくてもいいんだけどね。だってなんかそこまで落ち込んでるでも傷ついてるわけでもないし…この人。ほんと、ただ我が儘を言っただけに過ぎなかったんだから。
「もうちょっとさ…他人の心とか、察してあげればいいのに。なー?」
俺がそう尋ねると、まるで肯定するようににゃーとなく猫にゆうちゃんも笑いを隠せず、2人で笑い合った。
「年寄りをからかうのはよくないぞい…」
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知らないふりしていようと必死に無表情を決め込んでヴァイオリンを構える。とはいえ簡単な楽譜が目の前にあるがとても演奏できる状況ではなく、慌ててヴァイオリンに傷がつかないようにとケースにしまい、今に至る。
そう…この逃げようにも逃げられない地獄。
それはもう、思い切り、思いっきり近くにある椅子を蹴ったわんちゃんは怒りを抑えられないまま部長に怒声を浴びせる。いやもう怒号だけどな。
「俺様が何のために今まで…!!」
「もう、いいんじゃ。のう晃牙」
「だから…気軽に名前で呼ぶんじゃねぇ!」
…あーもう。俺今日部活さぼればよかったのかな?
ふっつーに部室入っていつも通りピアノでちょっと遊んで。それからわんちゃんが来て…部長が珍しく起きて。
「自由に生きよ。もう我輩に縛られていなくてもいいんじゃ、晃牙」
「んのっ…ざっけんじゃねーぞ…!?」
そう言ったのを最後にわんちゃんは部室を飛び出して行ってしまった。長い溜め息を吐いた部長に一瞥される。
「情けないところを見せてしまったのう。」
「あー、えっと…。情けないっていうか…我が儘…かな」
「じきに愛し子たちがくる。我輩は少し席をはずそうかの。」
「俺も行くよ。なんかよろよろのおじいちゃん放っとくほど俺の心は鬼じゃないし?」
悲しそうに笑う部長を放っとくなんて、俺がするわけないだろ。単純にそう思った。それに、3年間ずっと同じ軽音部だったんだし?恩返し程度にはなるでしょう。
「部室、結構荒らしちゃったなー。もう、わんちゃんってば…」
部室を横目に見ながら出たところでゆうちゃんとひなちゃんが走ってくる。
「あのっ!大神先輩の怒声が…!」
「あ、朔間せんぱ…」
すれ違い様に部長はひなちゃんに何か言うかと思えば一言も喋らずそのまま歩いて行ってしまった。
俺は傍らに抱えていたヴァイオリンを持ち直し部長の後を追う。
「騒がせてごめんね?部室お願いできる?…あと、わんちゃんのことちょっと探してくれると嬉しいな。多分、そこら辺の廊下歩いてるか…教室でむしゃくしゃして暴れてるかだろうから。」
間違いなくとばっちりというかもう貧乏くじだと思うけど、部室と晃牙を兄弟に任せる。だいたいわんちゃんがどこにいるか、なんてわかってるから俺が行けばいい話なんだけど…俺はわんちゃんに相当舐められてるからなぁ。行っても追い返されるだけに終わってしまうし
「部長!待ってってばー。」
足早に歩く部長を追いかけたどり着いた先はいつも散歩しているとかしていないとかのガーデンスペース。
「…はぁ」
近くの草っぱらに座り込めば長いこと溜め息を吐く部長に俺はただ隣に座る。自然と向こうが話してくれるのを待つつもりだった。
しかし、俺の予想を大いに裏切る言葉が放たれる。
「黒斗は元気かの?」
「…あのさ、俺人を説教したりとか苦手だし、まして部長に対してあーだこーだと言えないんだけど、それはないでしょ。」
「う、うむ。」
「どうしたの。って、始終あそこにいたし、わからなくもないけど。どうして急にあんなこと言ったの?」
「簡単なことじゃよ。我輩たちはもう、卒業するじゃろ?」
「へぇ。はぁ…なるほどー。」
「蒼空くんにはわからんじゃろ。後輩がおらぬユニットは卒業後でも気兼ねなく活動するか解散してそれぞれの道を行くか、簡単に決められる。」
「…そうだな。わかんない。でも、1年も2年も一緒に活動してきたユニットがさ、そう簡単に解散。って…寂しいって気持ちはわかるよ。部長だってそうだろ?寂しいくせに、変に片意地張っちゃってさ」
俺だって、もし黒斗とユニットを解散。なんて話になったら泣くほど嫌だ。わんちゃんは泣いたりしない子だし、むしろどうすればいいかわからなくてぶち切れたんだと思うけど。結局はそういうことだと思う。
それに…
「それに、わんちゃんのこと、晃牙って呼んだら駄目だろ。俺は1,2年の頃、黒斗に追い払われては部室にこもったりしてUNDEADの様子を見てたからわかるけど、わんちゃんが吸血鬼ヤローって呼んでるのも部長がわんこって呼んでるのも意味があるんだから。」
「そう口にすれば…わんこも我輩を見限るかと思ったんじゃが」
「見限るって…いやいや、そんなわけないじゃん。きらっきらした目で部長の事尊敬してたんだから。」
呆れ半分で俺が溜め息を吐くと部長はかなり落ち込んだ様子で溜め息を吐く。
「なぁ零。せめて、言ったならそれなりに胸を張らないと。まったく、言って後悔するような性格じゃないくせに。」
「…そう、じゃの」
俺は傍らのヴァイオリンケースを開いたところで視界の隅で俺を覗き込む部長の姿がをとらえる。
「ん。何?」
「いや、蒼空くんなのかどっちなのかわからなくなってのう。最近はこう、一つになりつつあるが、またいつ不安定になるか…心配じゃのう」
「…怒ったらだいたいあっちの方が強いと思うよ。でも最近は黒斗のおかげで、俺だけは変われてる気がするかな。つか、人の事心配してるほど余裕あるの?なんだよ。追っかけてきた俺が馬鹿だった!」
舌打ちしながらヴァイオリンを持ち立ち上がるとテラスの方からゆうちゃんが走ってくる。
「やっと見つけたー…!」
ゆうちゃんを視界から外しヴァイオリンの弓を見る。そういえばいつぶりだったかな。最後に使ってから、ゆうに1年は空いてる。
「って、あれ、星宮先輩…ヴァイオリン弾けたんですね。姿勢もいいし…」
「今は話しかけん方がいいぞい。怒っておるようじゃから、心を落ち着けるために演奏しておるのじゃろう。」
「え、星宮先輩って怒るんですか?いつもふざけてばかりいるのに…」
「くくく、昔はそれはもう荒れておったのう。」
「おーい、余計な事喋ってないでお孫さんにちゃんと状況を説明してあげて。」
弓を下ろし深呼吸をして後ろにいる2人に声をかける。木漏れ日にあたっている2人はどうも案外呑気な顔をしていて、部長のことを心配した俺が馬鹿だったとまた改めて思った。
「…もう、部長ってホント我が儘。…わんちゃんは大丈夫かな。」
「わんこは案外傷つきやすいからのう…」
傷つけたのはあんただよ。といってやりたい気持ちをぐっと抑えヴァイオリンを片づける。決して高いものでもないがヴァイオリン自体そう安いものでもない。しかも人のものだし。そう思って丁寧にケースにしまっているところで、陰から猫が姿を現した。
「わ、猫…」
「あぁ、なんか学院に住み着いてるっていう猫ですか?まさかこんなところで出てくるなんて」
「今はわんこの話をしておったのじゃが、ヴァイオリンの音に引き寄せられたのじゃろう」
「いや、わんこってわんこじゃないんだけどなー?っていうか、ゆうちゃんが来たんだから。ちょっとは悩み相談しなって。俺より話しやすいんでしょ、どうせ」
そう口にしながら猫を抱え座り込む。するとゆうちゃんも姿勢を正して部長の方を見据える。いや、そこまでかしこまらなくてもいいんだけどね。だってなんかそこまで落ち込んでるでも傷ついてるわけでもないし…この人。ほんと、ただ我が儘を言っただけに過ぎなかったんだから。
「もうちょっとさ…他人の心とか、察してあげればいいのに。なー?」
俺がそう尋ねると、まるで肯定するようににゃーとなく猫にゆうちゃんも笑いを隠せず、2人で笑い合った。
「年寄りをからかうのはよくないぞい…」
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