イベントストーリー
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羽ばたき!雛鳥と皇帝の凱旋
「坊ちゃまのお考えよくわかりました。」
静かだった図書室に先ほどから弓弦と桃李の声が響いている。どうやらどこかのユニットと一試合したいような会話だ。
「他にボクたちのように大衆向けで、同じ一年生がいるところ…そ、そうだ!流星隊!流星隊はどうかな!?」
作戦会議…と思われるその雰囲気を見て俺は声をかけるのをためらう。というか…fineならわざわざ敵を選ばずとも勝てるだろうに…ただ問題は、なぜか弓弦と桃李しかいないことである。
「なるほど、ドリフェスのルールにユニットがフルメンバーで出ないといけない、などと明確なルールはありませんし。わたくしたちも会長さまと日々樹さまを抜かしたメンバーで挑むのですから、あちらも一年生の3人で戦うことに異論はないでしょう」
ん?英智と、渉を抜かしたメンバー?なんで…
そう思ったとき弓弦と桃李が図書室を後にする。そのあとを転校生がついていったのを見てかなり距離を置いて俺も後をついていくことにする。
そういえば蒼空に売店で何か買ってくる約束をしてた気がするが…
AV室にたどり着いた時、千秋の声が響く。廊下まで聞こえてるが、何してんだあいつは?
「…?」
開け放たれたままのドアからそっと覗き見るとなぜか桃李は奏汰に撫でられてるし、転校生は忍を上手くかわしているし、対決がどうこうと聞こえていた割には随分と和やかな雰囲気が漂っている。
「あ、今回は会長とロン…日々樹センパイは不在だからfineのフルメンバーで戦うわけじゃない。ボクと弓弦が流星隊の一年と勝負をしたいって意味だから」
近くの壁に背を凭れさせ話を聞く。つまりこの2人がいないということは…卒業をした後のfineを支える2人ということ。なるほど。なんとなく、桃李の目的が理解できた気がする。
「…そうか。お前は譲れない戦いに身を投じようとしているのだな。うむ、立派な心意気だ!その心意気に敬意を示して、流星隊はフルメンバーで挑むことにしよう。奏汰も異論はないな?」
「えっ、今なんて言ったの…?ちょっとよく聞き取れなかったんだけど、ボクの聞き間違いだよね?」
…さすが千秋だ。相手の気持ちをいい意味でとも悪い意味でともくみ取れていない。少し桃李がかわいそうだ…作戦会議までして覚悟を決めていたのに?
「あ、黒斗。こんなところにいた…」
「ん、おー。蒼空。悪い、売店行くの忘れてた。」
「いや、いやいやいや、悪いと思ってないだろ。何してんだよ。図書室行くついでにおかしかって来てって頼んだのにこんなところにいるとかおかしいだろ。」
「…それはまぁ…いろいろと」
「…?流星隊のみんなと…うん?姫とゆづたん?」
「入るなよ。」
AV室をまじまじと見つめる蒼空にそう告げるとさすがにそこまで馬鹿じゃないと言い返される。空気を読むことに関してはこいつは確かにうまいのだが…
「で?何か心配なの?」
察したのかなんなのか、蒼空が歩き出しながら俺に問いかける。俺もそれにつられAV室を後にし蒼空の隣に並ぶ。
「心配とかはしない。あいつらはもう英智と渉が卒業した後の事を考えてる。」
「ほぇー?姫がそんなこと考えてるなんて、意外。なんかいつまでも甘えてる坊ちゃんって感じなのになー」
「まぁ…それは否めないが…。それで今回は2人でやっていくための自信付けとか、英智に心残りなく卒業してもらうために勝つ戦いをするらしい。」
「…それ、流星隊の一年生選ぶより、黒斗1人と戦った方が確実に勝てるよな。」
「…」
「冗談冗談。黒斗の本番での実力は確実に高くなってきてるから、あの2人でもおつりがくるくらいだって!な?ごめんって!」
勝てるかもしれないが、大差をつけられるとは限らない。それじゃ俺の実力はまだ満足いくほどになっているとは思えない。
ショコラフェスの時に決心してからまだ数回しかライブはしていないが…確実に俺の身の振り方は変わった。
蒼空もそれに気づいている。しかし褒めてくれてはいない。むしろ毎度毎度、楽しい?と心配そうに聞いてくるようになった。
「楽しくは、ない。」
「うん?」
「…俺もちゃんと、しないとな…。」
「…俺たちの次の大舞台は返礼祭だ。きっとそれまでには、黒斗の目指してたアイドルになれる。俺が保証するよ。」
「あぁ、ありがとう」
軽く頭を下げると、その隙に俺の肩に腕を回す蒼空。軽く小突かれるより勢いのあるそれに短く呻くが構わず蒼空は前へと俺を引きずりながら進む。
「とりあえずおかし買って、黒斗の変に開き直ったその考えを覆そうか。」
「あぁ…え?どうやって…」
素直にそう問いかけるとうーんと一つ唸ってそのまま売店に入っていく。
「黒斗って、昔はちゃんと楽しんでたんだろ?その、本当に昔、目なくす前」
「あ、あぁ…そうだな。」
「じゃ、その時は何してた?そうやって思い出せば、その頃の気持ちも自然と湧き上がってくるんじゃないかなと思うんだけど。」
「…あー、その頃は…」
俺が答えをためらっている間に蒼空はお気に入りのやら期間限定のやらと沢山の菓子を買い上げていく。会計の時も俺がいつ答えても反応できるように何度かこちらを振り返ってきたりもするが…正直あまり昔の事は思い出したくない。結果、あの酷い記憶につながるのだから。それに単純にあまり人に言いたくもない。いや、確かにあの頃は楽しかったし、今でもやれないとは言い切れないのだが。
「どう?なんか楽しいこと思い出せそう?」
「綾人と、ユニットを組んでた。でもそれは…打開策にはならない。今となってはあまり、人に言いたくないが…もう一つ本心で楽しんでた仕事がある。」
入院してから少し伸びた髪をいじる。あの時はもっと長かったな。
「それやってみる?仕事ってことはそれで人に見てもらったり、もちろん女の人との交流もあったんだろ?」
「う…まぁ…そうだな。」
「なになに?俺あまり黒斗が楽しいとか思ってる事知らないから気になる!」
「…男の娘…の仕事」
「…?」
俺が顔を伏せながら答える。それに対ししばしの間ぽかんと口を開けている蒼空が見える。蒼空なら確かに誰かに言いふらすことはしないだろうがこれをしろって無理言わないだろ。
「そう、なんだ?意外…うん、なんか、それしか言えない。だって、今は結構嫌がるし」
「…それは…真のトラウマを俺がやったら真が思い出してつらいだろうから」
「あー、自分はじゃあ割とやりたいとか…」
「やりたくはない。当たり前だろ。いや、ただ、あれは案外、自分らしくやってたかなと…ほら、はじけたりはできた、かと」
「えぇっと、じゃあ、次の返礼祭それでいく?俺は普通の衣装で」
「やらねぇよ!しかもさらりとお前だけ裏切るな!!」
「うそうそ、やるなら俺もやるって!男の娘。とはいえ、黒斗が楽しいと思えたことがそれかぁ…なんか、改善法としては、難しいな。」
んなことお前より誰より俺が知ってるんだが。
意味ありげな溜め息を吐き俺は蒼空を置いてさっさと歩き出した。
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「坊ちゃまのお考えよくわかりました。」
静かだった図書室に先ほどから弓弦と桃李の声が響いている。どうやらどこかのユニットと一試合したいような会話だ。
「他にボクたちのように大衆向けで、同じ一年生がいるところ…そ、そうだ!流星隊!流星隊はどうかな!?」
作戦会議…と思われるその雰囲気を見て俺は声をかけるのをためらう。というか…fineならわざわざ敵を選ばずとも勝てるだろうに…ただ問題は、なぜか弓弦と桃李しかいないことである。
「なるほど、ドリフェスのルールにユニットがフルメンバーで出ないといけない、などと明確なルールはありませんし。わたくしたちも会長さまと日々樹さまを抜かしたメンバーで挑むのですから、あちらも一年生の3人で戦うことに異論はないでしょう」
ん?英智と、渉を抜かしたメンバー?なんで…
そう思ったとき弓弦と桃李が図書室を後にする。そのあとを転校生がついていったのを見てかなり距離を置いて俺も後をついていくことにする。
そういえば蒼空に売店で何か買ってくる約束をしてた気がするが…
AV室にたどり着いた時、千秋の声が響く。廊下まで聞こえてるが、何してんだあいつは?
「…?」
開け放たれたままのドアからそっと覗き見るとなぜか桃李は奏汰に撫でられてるし、転校生は忍を上手くかわしているし、対決がどうこうと聞こえていた割には随分と和やかな雰囲気が漂っている。
「あ、今回は会長とロン…日々樹センパイは不在だからfineのフルメンバーで戦うわけじゃない。ボクと弓弦が流星隊の一年と勝負をしたいって意味だから」
近くの壁に背を凭れさせ話を聞く。つまりこの2人がいないということは…卒業をした後のfineを支える2人ということ。なるほど。なんとなく、桃李の目的が理解できた気がする。
「…そうか。お前は譲れない戦いに身を投じようとしているのだな。うむ、立派な心意気だ!その心意気に敬意を示して、流星隊はフルメンバーで挑むことにしよう。奏汰も異論はないな?」
「えっ、今なんて言ったの…?ちょっとよく聞き取れなかったんだけど、ボクの聞き間違いだよね?」
…さすが千秋だ。相手の気持ちをいい意味でとも悪い意味でともくみ取れていない。少し桃李がかわいそうだ…作戦会議までして覚悟を決めていたのに?
「あ、黒斗。こんなところにいた…」
「ん、おー。蒼空。悪い、売店行くの忘れてた。」
「いや、いやいやいや、悪いと思ってないだろ。何してんだよ。図書室行くついでにおかしかって来てって頼んだのにこんなところにいるとかおかしいだろ。」
「…それはまぁ…いろいろと」
「…?流星隊のみんなと…うん?姫とゆづたん?」
「入るなよ。」
AV室をまじまじと見つめる蒼空にそう告げるとさすがにそこまで馬鹿じゃないと言い返される。空気を読むことに関してはこいつは確かにうまいのだが…
「で?何か心配なの?」
察したのかなんなのか、蒼空が歩き出しながら俺に問いかける。俺もそれにつられAV室を後にし蒼空の隣に並ぶ。
「心配とかはしない。あいつらはもう英智と渉が卒業した後の事を考えてる。」
「ほぇー?姫がそんなこと考えてるなんて、意外。なんかいつまでも甘えてる坊ちゃんって感じなのになー」
「まぁ…それは否めないが…。それで今回は2人でやっていくための自信付けとか、英智に心残りなく卒業してもらうために勝つ戦いをするらしい。」
「…それ、流星隊の一年生選ぶより、黒斗1人と戦った方が確実に勝てるよな。」
「…」
「冗談冗談。黒斗の本番での実力は確実に高くなってきてるから、あの2人でもおつりがくるくらいだって!な?ごめんって!」
勝てるかもしれないが、大差をつけられるとは限らない。それじゃ俺の実力はまだ満足いくほどになっているとは思えない。
ショコラフェスの時に決心してからまだ数回しかライブはしていないが…確実に俺の身の振り方は変わった。
蒼空もそれに気づいている。しかし褒めてくれてはいない。むしろ毎度毎度、楽しい?と心配そうに聞いてくるようになった。
「楽しくは、ない。」
「うん?」
「…俺もちゃんと、しないとな…。」
「…俺たちの次の大舞台は返礼祭だ。きっとそれまでには、黒斗の目指してたアイドルになれる。俺が保証するよ。」
「あぁ、ありがとう」
軽く頭を下げると、その隙に俺の肩に腕を回す蒼空。軽く小突かれるより勢いのあるそれに短く呻くが構わず蒼空は前へと俺を引きずりながら進む。
「とりあえずおかし買って、黒斗の変に開き直ったその考えを覆そうか。」
「あぁ…え?どうやって…」
素直にそう問いかけるとうーんと一つ唸ってそのまま売店に入っていく。
「黒斗って、昔はちゃんと楽しんでたんだろ?その、本当に昔、目なくす前」
「あ、あぁ…そうだな。」
「じゃ、その時は何してた?そうやって思い出せば、その頃の気持ちも自然と湧き上がってくるんじゃないかなと思うんだけど。」
「…あー、その頃は…」
俺が答えをためらっている間に蒼空はお気に入りのやら期間限定のやらと沢山の菓子を買い上げていく。会計の時も俺がいつ答えても反応できるように何度かこちらを振り返ってきたりもするが…正直あまり昔の事は思い出したくない。結果、あの酷い記憶につながるのだから。それに単純にあまり人に言いたくもない。いや、確かにあの頃は楽しかったし、今でもやれないとは言い切れないのだが。
「どう?なんか楽しいこと思い出せそう?」
「綾人と、ユニットを組んでた。でもそれは…打開策にはならない。今となってはあまり、人に言いたくないが…もう一つ本心で楽しんでた仕事がある。」
入院してから少し伸びた髪をいじる。あの時はもっと長かったな。
「それやってみる?仕事ってことはそれで人に見てもらったり、もちろん女の人との交流もあったんだろ?」
「う…まぁ…そうだな。」
「なになに?俺あまり黒斗が楽しいとか思ってる事知らないから気になる!」
「…男の娘…の仕事」
「…?」
俺が顔を伏せながら答える。それに対ししばしの間ぽかんと口を開けている蒼空が見える。蒼空なら確かに誰かに言いふらすことはしないだろうがこれをしろって無理言わないだろ。
「そう、なんだ?意外…うん、なんか、それしか言えない。だって、今は結構嫌がるし」
「…それは…真のトラウマを俺がやったら真が思い出してつらいだろうから」
「あー、自分はじゃあ割とやりたいとか…」
「やりたくはない。当たり前だろ。いや、ただ、あれは案外、自分らしくやってたかなと…ほら、はじけたりはできた、かと」
「えぇっと、じゃあ、次の返礼祭それでいく?俺は普通の衣装で」
「やらねぇよ!しかもさらりとお前だけ裏切るな!!」
「うそうそ、やるなら俺もやるって!男の娘。とはいえ、黒斗が楽しいと思えたことがそれかぁ…なんか、改善法としては、難しいな。」
んなことお前より誰より俺が知ってるんだが。
意味ありげな溜め息を吐き俺は蒼空を置いてさっさと歩き出した。
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