イベントストーリー
What is your name?
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「はぁ…」
当日のショコラフェスも大成功。失敗も失態もしょうもないことも一切なく終わった。いつもこうならいいとも思うが、そもそも俺がチョコレート配布できない時点で失態と言われてもいいのかもしれない。
ステージで歌ってた人はどこ行ったの?とファンからの声があるらしく蒼空から一度電話が来た。
『黒斗のこと雑誌で見たことあるって人がいるんだけどー…?』
要は来なくていいのか?ということなのだろうが…。
どう考えても嬉しさから早まっているわけではない動悸を一度大きく息を吸って落ち着かせ、そうして断った。
「…、無理だ」
蒼空との通話でも言ったその言葉を、教室から会場を見降ろしながら繰り返す。昔から…怖いのかそれとも憎いのか、理不尽にも無関係の女まで俺は嫌いになっている。
恋愛感情というのは当たり前のように異性間が多い。あの熱烈なファンともいえる女がした行為が、俺に対する恋愛感情が歪んだ結果だから…そうつまり、その当たり前の恋愛感情を生みかねない女がみんなあぁなるんじゃないかと思ってしまうから、避けてしまうのだ。
「だからって、男ならいいということでもないよな…」
男ならその前例がないからOK?いやいやそんなわけがない。前例というわけではないが綾人も相当歪んだ愛情を俺に与えてくる。でも、守ってくれるというのが前提にあるからか、綾人のその愛情はむしろ心地が良い。愛されてるという実感が湧く。つまり常識的なものではない方が俺によく降りかかってくる。
「俺自身普通じゃない。だから、普通を求める方がおかしい。」
口にして、絶対そうなんだろう。と確信を得る。そうだ、もともと奇怪な目で見られてたんだ。
「泉は…なんなんだ…」
あいつは普通の高校生。俺がくっついていたせいで、まともに青春を謳歌出来ていたのかわからない。でも、俺がいないKnightsの泉は楽しそうだ。
「Knights…あ!Knightsの!?」
はっとして時計を見る。あと5分でKnightsのライブが始まる。今から行ったら確実にまともな距離からは見れないだろうが、まあ今回は一般客もいるし離れたところから見るのが妥当だろう…
「危なく忘れるところだった。…っと」
窓際から走り出し会場へと向かう、確か校舎付近だったっけか…ちょっと遠いな。
「はぁ…、そっか、普通アイドル科の生徒はみんな今回のショコラフェスでチョコ配ったりファンサしてるのか」
外まで出て周りを見渡すとところどころで人だかりができていたり、チョコを受け渡しする簡易テントの周りに人がずらりと並んでいたりと、正直横切るのも大変だ。
「って…まずい」
周りを見るのもいいがよく考えれば今回の衣装のままでは簡単に客の目に入る…標準衣装を基にしてショコラフェス用としてあつらった衣装はパッと見でどのユニットかがわかりやすい。
気付いたころにはもう遅く、俺を見つけた一部のファンはざわつき始める。男女問わずちらちらと見られ、気にしたくないのに全員と目が合っているような気分でステージにいるときには気にならないのになんだか気持ち悪いとさえ思える。
「…っ」
突っ切るようにその場を走る。変なところで時間をかけてしまって、とっくにKnightsのライブは始まっているだろう。遅刻とまではいかないだろうと安堵し到着するも、あぁ本当に俺は馬鹿だと後悔した。せめて着替えればよかった。
「え、…きゃー!!WWのソラくんじゃない方だ!!」
「うそー?違うよあれ」
「でも眼帯しててあの衣装って他に誰いるのよー!」
「…げ」
思わず声を漏らしてしまうが時すでに遅く、周りを通り過ぎた女を皮切りにKnightsを見ていた観客までこちらを見てくる。
眼帯を見て絶対そうだと確信する客があまりに多い。だから嫌だったのに。今日の俺の眼帯はショコラフェスしようとしてなぜか蒼空が注文していていつもの黒い生地に溶けかけたチョコレートのイラストがあり-chocolat festival-と刺繍されている。これは確かに世に二つとないから俺だと確定するのに持ってこいだ。
「あの!!」
「…ひ!?」
周りが少し俺が1人でいることを不思議がって距離を置いていたが急に左側から1人の中学生が近づいてくる…あぁ、なんだ、男の子か…
「さっきライブ見てました…!あの、来年ここ受験する予定なんです。俺、じゃなくて、僕…お兄さんみたいなカッコいいアイドルになりますから!」
「お、俺みたいな?」
「はい!だって、眼帯してるのにそのハンデをもろともせず凄いパフォーマンスだったから!チョコももらっちゃいました…手作りだって聞いてもっと尊敬しちゃって」
俺がその感想についていけないでいると男の子は逆に迷惑をかけてしまったかと慌てる。
「あ…ご、ごめんなさい…でも、あの、ファンです!」
「…あ、おう…?ありがとう。その、ファンサとか苦手で」
「えぇ!なんか完璧そうなのに!?あ、じゃぁもしかしてサインとか…駄目ですかね?」
「…いや、いいぞ…?ええっと」
俺の言葉に嬉々として鞄からサイン色紙を取り出し丁寧にもペンまで出してくれる中学生。うん?ファンってそういうもんなのか?
相手の顔を窺いながら俺はその色紙にサインをして、名前を尋ねた。その名前も書き、最後にハッピーバレンタインと英語で書くとその場ではしゃがれる。その内心もやった!の一言…随分と、熱烈な…
「あぁ、なるほど…」
その男の子の喜びを見て、俺はやっとファンというものがわかった気がする。アイドルとしてならこうして、他人の好意が素直に受け止められるんだ。
「俺が見てきた、良いアイドル。なら…」
そう呟いて、これからアイドルとして沢山ステージに立って沢山のファンから愛されようと、いまさらになって決意した。
感謝!ほろ苦ショコラフェス -chocolat festival-::END
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