彼がステージに上がる時
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5
「黒斗!」
久しぶりに見る後ろ姿、俺より高い身長をいつもいつも羨ましく思いながら声をかけた。
一緒にいるのはTrickstarの遊木真のまこたん。
俺の声に振り返った黒斗は、おー。とそっけない返事。
「相変わらずだなぁ、もう。」
そのまま駆け寄れば、まこたんが丁寧に挨拶をしてくる。そりゃもう軽く頭なんか下げてきたりなんかして、
「蒼空さん、お久しぶりです…よね?」
まこたんの問いかけにふふんと自慢気に胸を張る。
「あぁ、久しぶり!何を隠そうここ1ヶ月間ずっと仕事だったからな!」
まぁ、俺の話は程々に…黒斗とまこたんの話が気になる。
朝は黒斗がいなかったみたいだし、でもだからといって授業と授業の合間の数分間にわざわざ話をするなんて。
打倒の話?
でもここは3年の教室の真ん前、ちょっと不用心すぎ、黒斗がそんなことするはずないよな。
「二人は何の話?」
「いや、なんて事はない。泉から逃げてきた真にたまたま会っただけだ。で、心配だから教室まで送るってこと」
あぁなんだ~、そんなことか。
何て口では納得するも、どうも腑に落ちない。まぁ、ここで打倒の話は無しにしても俺に隠し事?されてる気分で。
「俺も一緒についていっていい?」
「真に聞けよ」
視線をまこたんに向けへらりと笑みを浮かべてみれば快くOKと頷いてくれた。
まこたんは黒斗からよく聞くけど本当に良い子だ。昔はどうかっていう話はあまりしちゃいけないみたいで、まこたん本人から喋り出すのを待つしかない。
黒斗もあまり昔の話は好きじゃないみたいで、二人とも過去が重いんだとか…
「じゃーねー、ちゃんと授業受けるんだよー?」
さほど長くもない距離を男二人でまこたんを警備しながら歩くものだから、いざ教室の前に着くと周りから訝しげな表情で見つめられる。
ドアを閉めながらまこたんに手を振り、さっさと立ち去ってしまった黒斗を追う。
「もー、黒斗は冷たいっていうか、暗いっていうか」
「そうか?そんな冷たくしてるっていう意識はないんだけどな。」
「それでさー、ほんとは何話してたの?」
「はぁ?」
「さっき!3年の教室の前で!せなたんに追っかけられてたとか嘘でしょー?」
「いや…泉に追いかけられてたのは本当だぞ?」
困ったような笑みを浮かべる黒斗。うーん、その笑顔はいつも俺が言うこと聞かない時に本気で困ってるときの笑顔だな。
「じゃあ何か隠してる。」
「あー…蒼空ってたまに、無駄に、鋭いよな。別に隠す必要もないけど、言う必要もないかと思って。」
「もう、そう言われると気になるじゃん!」
「泉に追いかけられた真が、何で泉さんは僕ばっかりあんな態度取るんですかね、何て聞いてきてさ。そっからちょっと小さい頃の話してて」
聞いたところによると本当ただの井戸端会議。でも昔の話をするのが嫌いな二人が…いや、この二人だからこそなのかな。
「ねぇ、俺に黒斗の昔話聞かせて!格好良いから!ね!!」
「格好いいの意味がまったく分からないんだが…まぁ、代わりに真面目に授業受けるならな?」
小言を言いながら斜め後ろに座る黒斗。続けて俺が席に座ると隣には先程噂になったせなたんがちょっと不機嫌そうに座っていた。多分逃げられたからかな。後ろに座る黒斗を憎しみの眼差しで見ていて正直狂気すら感じる。
「せーなたん。昼休み一緒に食べない?お弁当?購買?食堂?」
「決めてないよぉ。それより何?帰ってきて早々自慢話でも聞かされるわけぇ?」
「それはどうかな~!!」
ふふんと笑みを浮かべてみれば、ちょ~うざぁいの一言。せなたんの口癖だからわかってたけど何で罵倒されるのかな俺。それよりも、俺の自慢話よりずっと聞きたい昔の話。俺は同じユニットなのに、肝心なところは知らないから。
何で目がないのか。詳しいところは知らない。だから、せなたんもいれば少しは話が弾んで、言ってくれたりしないかな?なんてずるいことを考えただけで。
「いや。弾みはしないか」
適当に授業を受け、黒斗はもちろん、せなたんも引っ張り食堂へ向かう。
ぶつくさ文句を言う二人なんてお構いなしだ。だって学校久しぶりで楽しい!
「俺、席とってるから。お前ら食堂の食うんだろ?」
そう言って列から抜ける黒斗。あぁ、そういえばそうだね。なんて言って俺は引き続きせなたんと列に並ぶ。
「みやくんは弁当じゃないの?いつも黒斗の手作り弁当だよねぇ?」
「そうだよ!でも今日は昼ちょっと前に帰れることわかったから、お手製の弁当ないんだ。作らせたら遅刻させちゃうし」
「俺は食べたことないからわかんないけど、そんな美味しいの?」
「食生活にこだわってるんだって。ほら、前から一人暮らしだったから嫌でもご飯作れるようになったらしくて」
「ふぅん。まぁ黒斗器用だしねぇ」
珍しく本心から微笑むせなたん。この人は黒斗の事になると嬉しそうに話してくれたりするからきっと黒斗の事が好きなんだと思う。それが恋愛か、まこたんに向けてる好きと同じようなものなのかわからないけど。
「へぇ、みやくんハンバーグ?と…うわ、トンカツぅ…?」
「うん、やっぱりせっかくならがっつり食べたいじゃん!」
俺の献立を見て、がっつりすぎじゃない?と片眉をあげるせなたん。そんなことないと思うんだけど。
「あ、お前らこっち…ってうわ、蒼空買いすぎだろそれ。食べれんのか?」
テーブルに座っていた黒斗が立ち上がり手を振る。と同時にせなたんと同じような反応をしてくる。
「もー、食べれるって、ここ家じゃないんだから小言はなし!」
「って言って絶対残すだろ」
「そんなことないって、ちゃんと食べれます。むしろ黒斗の少なすぎて心配するくらいだよ?」
「バランスがあるんだよ。お前は食ったらその分太るんだから野菜…ってハンバーグとトンカツこんだけあるくせに野菜ゼロかよ!」
「あーもー、野菜は家帰ってから食べるから!」
「じゃあ今日お前キャベツ一玉な」
「ちょ~ウケるんだけど」
長々と言い合いをしていた俺の横でくすくすと笑うせなたん。自分は呑気に食べてるし。
ここはせめて味方についてよ!昼がこんな豪華なのに夜ご飯質素すぎる。
「むー、いただきます。」
「ちゃんと噛んで食えよ。いただきます」
「ほんっと黒斗ってみやくんに対してお母さんみたいだよねぇ?」
「別に、好きでこんなんじゃねぇよ。でも、俺の分まで動いてるから、食生活とかはしっかりしてほしいだけだ。」
「心配なんだぁ?」
せなたんがにやにやしながら黒斗を問い詰めている。心配?なら今日の夜ご飯キャベツやめてよ?
「あ、黒斗さっき約束してた、昔話、してよ!」
「あー。うん」
視線を逸らし溜め息。黒斗が面倒だと思った時の癖だ。しかし、昔話という単語に反応したのは黒斗だけではなかった。
「約束してたんだぁ?みやくんには知ってもらう予定はあったみたいだけど、黒斗話せるのぉ?」
「まぁ…思い出すのは、今になっても嫌だ。」
話がわからない。けど、きっと黒斗にとってトラウマなんだということはわかった。目をなくしたのは中学生の頃、それにせなたんが現場にいたこと。そこまでしか知らない。しかもそれをきっかけに女性が嫌いになったのと、アイドルとモデルの活動を休止させた。
黒斗は何かされた。そう考えるのが妥当で、それは黒斗にとって辛いこと。
「そっか…じゃあ話さなくてもいいや。黒斗が笑い話にできるくらいに気持ちが落ち着いてからでいいよ。俺も嫌なことは嫌だから。ごめんな?」
「お前が謝ることないだろ。蒼空、ありがとう。笑い話になるのがいつかわからないけどな…」
「俺たちユニット組んでんだろ?だから待てるよ。多分ね!」
「格好いいねぇ?青春って感じ?」
「多分って言ってるぞ」
ちょっとバカにされたような気がするけど青春は間違ってない。だって今しかできない事だからな、もったいないことはしない!と、その時黒斗がスマホを手に取り耳に宛てる。
「は?拐われた?」
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「黒斗!」
久しぶりに見る後ろ姿、俺より高い身長をいつもいつも羨ましく思いながら声をかけた。
一緒にいるのはTrickstarの遊木真のまこたん。
俺の声に振り返った黒斗は、おー。とそっけない返事。
「相変わらずだなぁ、もう。」
そのまま駆け寄れば、まこたんが丁寧に挨拶をしてくる。そりゃもう軽く頭なんか下げてきたりなんかして、
「蒼空さん、お久しぶりです…よね?」
まこたんの問いかけにふふんと自慢気に胸を張る。
「あぁ、久しぶり!何を隠そうここ1ヶ月間ずっと仕事だったからな!」
まぁ、俺の話は程々に…黒斗とまこたんの話が気になる。
朝は黒斗がいなかったみたいだし、でもだからといって授業と授業の合間の数分間にわざわざ話をするなんて。
打倒の話?
でもここは3年の教室の真ん前、ちょっと不用心すぎ、黒斗がそんなことするはずないよな。
「二人は何の話?」
「いや、なんて事はない。泉から逃げてきた真にたまたま会っただけだ。で、心配だから教室まで送るってこと」
あぁなんだ~、そんなことか。
何て口では納得するも、どうも腑に落ちない。まぁ、ここで打倒の話は無しにしても俺に隠し事?されてる気分で。
「俺も一緒についていっていい?」
「真に聞けよ」
視線をまこたんに向けへらりと笑みを浮かべてみれば快くOKと頷いてくれた。
まこたんは黒斗からよく聞くけど本当に良い子だ。昔はどうかっていう話はあまりしちゃいけないみたいで、まこたん本人から喋り出すのを待つしかない。
黒斗もあまり昔の話は好きじゃないみたいで、二人とも過去が重いんだとか…
「じゃーねー、ちゃんと授業受けるんだよー?」
さほど長くもない距離を男二人でまこたんを警備しながら歩くものだから、いざ教室の前に着くと周りから訝しげな表情で見つめられる。
ドアを閉めながらまこたんに手を振り、さっさと立ち去ってしまった黒斗を追う。
「もー、黒斗は冷たいっていうか、暗いっていうか」
「そうか?そんな冷たくしてるっていう意識はないんだけどな。」
「それでさー、ほんとは何話してたの?」
「はぁ?」
「さっき!3年の教室の前で!せなたんに追っかけられてたとか嘘でしょー?」
「いや…泉に追いかけられてたのは本当だぞ?」
困ったような笑みを浮かべる黒斗。うーん、その笑顔はいつも俺が言うこと聞かない時に本気で困ってるときの笑顔だな。
「じゃあ何か隠してる。」
「あー…蒼空ってたまに、無駄に、鋭いよな。別に隠す必要もないけど、言う必要もないかと思って。」
「もう、そう言われると気になるじゃん!」
「泉に追いかけられた真が、何で泉さんは僕ばっかりあんな態度取るんですかね、何て聞いてきてさ。そっからちょっと小さい頃の話してて」
聞いたところによると本当ただの井戸端会議。でも昔の話をするのが嫌いな二人が…いや、この二人だからこそなのかな。
「ねぇ、俺に黒斗の昔話聞かせて!格好良いから!ね!!」
「格好いいの意味がまったく分からないんだが…まぁ、代わりに真面目に授業受けるならな?」
小言を言いながら斜め後ろに座る黒斗。続けて俺が席に座ると隣には先程噂になったせなたんがちょっと不機嫌そうに座っていた。多分逃げられたからかな。後ろに座る黒斗を憎しみの眼差しで見ていて正直狂気すら感じる。
「せーなたん。昼休み一緒に食べない?お弁当?購買?食堂?」
「決めてないよぉ。それより何?帰ってきて早々自慢話でも聞かされるわけぇ?」
「それはどうかな~!!」
ふふんと笑みを浮かべてみれば、ちょ~うざぁいの一言。せなたんの口癖だからわかってたけど何で罵倒されるのかな俺。それよりも、俺の自慢話よりずっと聞きたい昔の話。俺は同じユニットなのに、肝心なところは知らないから。
何で目がないのか。詳しいところは知らない。だから、せなたんもいれば少しは話が弾んで、言ってくれたりしないかな?なんてずるいことを考えただけで。
「いや。弾みはしないか」
適当に授業を受け、黒斗はもちろん、せなたんも引っ張り食堂へ向かう。
ぶつくさ文句を言う二人なんてお構いなしだ。だって学校久しぶりで楽しい!
「俺、席とってるから。お前ら食堂の食うんだろ?」
そう言って列から抜ける黒斗。あぁ、そういえばそうだね。なんて言って俺は引き続きせなたんと列に並ぶ。
「みやくんは弁当じゃないの?いつも黒斗の手作り弁当だよねぇ?」
「そうだよ!でも今日は昼ちょっと前に帰れることわかったから、お手製の弁当ないんだ。作らせたら遅刻させちゃうし」
「俺は食べたことないからわかんないけど、そんな美味しいの?」
「食生活にこだわってるんだって。ほら、前から一人暮らしだったから嫌でもご飯作れるようになったらしくて」
「ふぅん。まぁ黒斗器用だしねぇ」
珍しく本心から微笑むせなたん。この人は黒斗の事になると嬉しそうに話してくれたりするからきっと黒斗の事が好きなんだと思う。それが恋愛か、まこたんに向けてる好きと同じようなものなのかわからないけど。
「へぇ、みやくんハンバーグ?と…うわ、トンカツぅ…?」
「うん、やっぱりせっかくならがっつり食べたいじゃん!」
俺の献立を見て、がっつりすぎじゃない?と片眉をあげるせなたん。そんなことないと思うんだけど。
「あ、お前らこっち…ってうわ、蒼空買いすぎだろそれ。食べれんのか?」
テーブルに座っていた黒斗が立ち上がり手を振る。と同時にせなたんと同じような反応をしてくる。
「もー、食べれるって、ここ家じゃないんだから小言はなし!」
「って言って絶対残すだろ」
「そんなことないって、ちゃんと食べれます。むしろ黒斗の少なすぎて心配するくらいだよ?」
「バランスがあるんだよ。お前は食ったらその分太るんだから野菜…ってハンバーグとトンカツこんだけあるくせに野菜ゼロかよ!」
「あーもー、野菜は家帰ってから食べるから!」
「じゃあ今日お前キャベツ一玉な」
「ちょ~ウケるんだけど」
長々と言い合いをしていた俺の横でくすくすと笑うせなたん。自分は呑気に食べてるし。
ここはせめて味方についてよ!昼がこんな豪華なのに夜ご飯質素すぎる。
「むー、いただきます。」
「ちゃんと噛んで食えよ。いただきます」
「ほんっと黒斗ってみやくんに対してお母さんみたいだよねぇ?」
「別に、好きでこんなんじゃねぇよ。でも、俺の分まで動いてるから、食生活とかはしっかりしてほしいだけだ。」
「心配なんだぁ?」
せなたんがにやにやしながら黒斗を問い詰めている。心配?なら今日の夜ご飯キャベツやめてよ?
「あ、黒斗さっき約束してた、昔話、してよ!」
「あー。うん」
視線を逸らし溜め息。黒斗が面倒だと思った時の癖だ。しかし、昔話という単語に反応したのは黒斗だけではなかった。
「約束してたんだぁ?みやくんには知ってもらう予定はあったみたいだけど、黒斗話せるのぉ?」
「まぁ…思い出すのは、今になっても嫌だ。」
話がわからない。けど、きっと黒斗にとってトラウマなんだということはわかった。目をなくしたのは中学生の頃、それにせなたんが現場にいたこと。そこまでしか知らない。しかもそれをきっかけに女性が嫌いになったのと、アイドルとモデルの活動を休止させた。
黒斗は何かされた。そう考えるのが妥当で、それは黒斗にとって辛いこと。
「そっか…じゃあ話さなくてもいいや。黒斗が笑い話にできるくらいに気持ちが落ち着いてからでいいよ。俺も嫌なことは嫌だから。ごめんな?」
「お前が謝ることないだろ。蒼空、ありがとう。笑い話になるのがいつかわからないけどな…」
「俺たちユニット組んでんだろ?だから待てるよ。多分ね!」
「格好いいねぇ?青春って感じ?」
「多分って言ってるぞ」
ちょっとバカにされたような気がするけど青春は間違ってない。だって今しかできない事だからな、もったいないことはしない!と、その時黒斗がスマホを手に取り耳に宛てる。
「は?拐われた?」
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