イベントストーリー
What is your name?
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相変わらず…元気なようで問題もなさそうだ。
転校生がRa*bitsの1年生のレッスンを心配そうにぶっ続けで見守っている。
もちろん俺はと言えばそれを一緒に見ているわけもなく廊下の窓からそれを眺めていた。この後始まるミステリーライブにまた呼ばれたのだ。
「あいつは随分とノリノリだな。恋人作戦の件。」
先に舞台に入っている泉から来たメッセージは…本気で俺は好かれてるんだなと痛感してしまうような内容で毎度頭を悩ませる。否、本当に頭を悩ませているのはあいつ案外プライベートでも何でも俺がいればデレデレするところだ。
プロだし、もうちょっと隠せるよな…と、一度叱ってからはまだましになったがそれでも正直変な誤解されるんじゃないかと思うほど。
今まではそんなことなかったのに…仮と言えど恋人ならそういうものなのか?そういえば真にも、手とか繋いでみませんか?なんて言われたことあったな。やっぱり恋人になればそれなりにスキンシップとか増えるのか…
「嫌だな…刺されそう。」
ありえないとわかっていてもなぜかそう呟いてしまう。刺されるなんて…。
泉も真もあの女が俺に向けていた感情とは全然違う。俺なんかに執着して俺の周りにいる奴を傷つけようなんてこと考えてないし、単純に幸せだということが一杯伝わってくる。そう見える。
「黒斗…?」
「ぅわぁ!?」
「おぉう…ごめんそんなに驚かないと思ってた…」
「蒼空か…いや、後ろから急に声かけられたら驚くだろ…」
「い、いや…でも…ふふ、てっきり見えてると思って…てか…あははは!」
こらえていたであろう笑みが爆発したように大笑いし始める蒼空。え、なんだこいつ頭おかしくなったか?年始年末の仕事のしすぎか?
「なんだよ…」
「あっははははは!…だって、っくく、黒斗思った以上に驚くし、その時の声が異様に高いから…可愛いなって…ふはっ」
こいつ俺の気にしているところを…。確かに俺はよく中性的な顔だって言われる。声帯もアイドルとしてありがたいことに広いせいか高い声も楽に出せる。でもそのせいで小さい頃はともかく中学生になっても男の娘として仕事があったりして…あああ思い出すと頭が…
「っくそ、殴る」
「えぇぇぇ!?な、ごめんって!もう笑わないから…!!あぁぁそうだそれより!!」
「…?」
俺は蒼空の襟首を掴んだ状態で止まる。随分と慌てた様子で話題を変えるがしょうもない内容だったら殴ろう。
「これからミステリーライブ見に行くんじゃないのか…ほら…せなたんからラブコール来てるんだろ?」
「ラブ、コール…?」
その意味を知らないことはないがラブコールってお前…おかしいだろ。
「案外、せなたん本気だし…聞いた話だと…というかクラスの奴にお前らの仲についてかなり聞かれるんだよ。相方だから何か知ってんじゃないのかなーって。それくらいせなたんが露骨ってことは…うん、まぁ…あとは言わずもがな…」
「…あ、あぁ…それについては」
「え?まって、なんでそんなに動揺してんの…?え?何?怖い俺どうしよう…俺今地雷踏んだ?思いっきり全体重かけて踏んじゃった感じ?」
溜め息を吐いて蒼空から手を放す。あぁ…まずい…あまり思い出したくないのに…。泉と恋人になったのは1月で、もちろん初詣からもうあいつおかしかった。
「…黒斗?おーい…、お前…あの…一応聞くけど、貞操は守ってるよな?」
「いや…流石にそこまで深刻ではない。うん、でもあいつおかしい。積極的過ぎてこわ…」
俺がそう言った途端にスマホが着信を知らせてくる。ああそういえば今行くって返信してからもう数十分経過してる。画面を見ずともそれが誰からの着信か見当がついていた。
「出ないのか…?」
「今は…まぁ…とにかく…ステージに行けば…鳴りやむだろ。行くぞ」
あぁー、なるほど。とそれ以上何も言わず俺についてくる蒼空。そういえば年末年始あまりこうして二人で歩いてないな…。というか…星夜祭をした月も、なぜかこいつとも恋人計画してて、お互い気持ち悪いと言ったきりあまり行動してなかった…
「…はぁ」
「相変わらず溜め息ばっかり吐くんだな?もう何それ、呼吸の一部?ってくらい」
「苦労性なんだよ」
「自分から色々背負い込むくせに…まーったく…うまくいかないもんだな?」
何がだ、と聞くのは野暮だった。要は、俺が恋愛感情を知れば、愛情というものを知れば周りへの対応も一段と変わる。もっとアイドルらしく、蒼空のような楽しい人生を送れるのだろう。とはいえ、相変わらずということで、この計画ももうこの一か月で終わる。今のところそれを終えて誰と恋人になろうとも考えてはいない。つまるところ、今でも…恋愛感情がわかってない。
ただ、それなりに成果は…あぁいや、そういう言い方は悪いけど、なんとなくわかったことはあるんだ。
「寂しいとか、大切にしたいとか、愛されることとか…」
「え…?」
「それは、わかった気がする。」
「それって…あー…ううん。今は、そんな感じでいいんじゃないか?また終わってから考えればいいんだよ」
何かを言いかけた蒼空の心を覗いてやろうと思ったが、こいつも逸らし方が上手くなったのか急に俺の手を引き、ステージまでの道を猛ダッシュしていくのだった。
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