彼がステージに上がる時
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2
早々に集団から抜けた俺はスバル達の事を考える。救世主なんて言われてるが、何もしたことがない。あいつら自身動く機会を狙っていて行動していないのもあるが、俺は"昔は凄かった真の幼馴染み"という肩書きだけで見込まれた救世主だから、実際することが無い。
もしできると言えば無傷とは言わないがあいつらが逃げれるように生徒会の足止めをする程度だ。あとはTrickstarに所属する生徒会の真緒がなんとか手を引いてくれるはず。
「おい」
早速お目当ての人物を発見した。というより向こうから食って掛かってきたのだが
「…おー、敬人。ってなんだ、そんな怖い顔して」
「貴様、いくらコネがあるからといってこんな規律違反のドリフェスを鑑賞するな。」
軽く笑って見せると眉間の皺が一気に深くなったのが確認できる。
まぁそんなことより俺が怒られてる内にあいつらがささっと逃げてくれれば良い。
「だいたいー、黒斗がこんな家畜共の下手なステージを見る必要はないと思うんだけど!なんで好き好んでみてるの?」
ピンク色のアホ毛をぴょこぴょこさせながら姫宮が俺の手を取り首を傾げる。
こいつの口の聞き方はどうも気にくわないが、以前姫宮家がどうとか父さんに言われた時にくまのぬいぐるみをプレゼントしてからというもの異様になつかれてしまった。俺は別に個人的にそんな好かれたかったわけじゃないんだが。
それは置いといて、姫宮の質問に同じように首を傾げると姫宮は混乱し始める。
「な、なんで黒斗も首傾げるんだよぉー!」
「さぁ?俺も気が付いたら鑑賞が趣味になってたから。お前にわからないなら俺にもわからない」
苦笑いを浮かべると姫宮は難しい顔をする。きっと、誰にもわからないことだから、しょうがないのだろう。
「あと、眉間に皺寄せると、敬人みたいになるぞ。背が小さくて可愛いが売りなのに顔が怖いと悲惨なことになる。」
「うにゃっ、それだけは嫌だ!」
「おい。どういう意味だ…!全く余計な時間を過ごした。行くぞ姫宮、いい加減奴らを野放しにしておくわけにはいかない」
「おーおー、いってらっしゃい。」
「ちっ、本当は貴様も一緒に説教されるはずなんだが。」
「駄目ー!黒斗に説教して良いほど偉い人はこの世にいないんだから!」
大袈裟に言ってくれる姫宮。
そういう、俺だけ別次元の人間って誤解されるような言い方はあまり好きではないのだが。2人の後ろ姿を見送りながら溜め息をつく。俺が敬人に言われた"コネ"も、姫宮が言っていた俺を説教して良いほど"偉い人"もここにはいないのだが、コネがあったのも偉い人がいるのも紛れもない事実だ。
この学院ができたのはもう数十年も前の事。代々芸能一家だった俺の家には、みんな考える前に行動する癖がある。
そんな先祖のある一人が、自分達のような人を育ててみよう!何て軽い気持ちで学院を作った人がいた。
つまり結論からいうと、俺はこの学院の創立者の子孫である。となればもちろんコネもあるし、偉い人もいる。
「特別扱いは別に、楽できるからいいが。だからって横暴になるつもりは無いけどな」
そう呟いて今一度溜め息をつき、今ごろ一悶着起きて逃げ切ったであろうTrickstarの連中を探し始める。
真緒がうまく逃がしてくれるのは暗黙の了解。無論、お前のやり方で仲間を助けてやれよと言ったときは快く返事をしていた。
真緒は親の影響からアイドルやモデルに興味があるようで、俺の事も実力は詳しく知らないけど凄い人と慕ってくれている。ちなみにあの佐賀美先生の事も慕っている。先生としての器はあまり良くないが。
「まぁ、先生の事を愚痴っても仕方ない。それより…」
生徒会のやり口、見過ごせないのは確かだ。それをTrickstarの連中は変えようとしている。革命を起こそうとしている。うまくいくか、わからない。でも、俺が先祖から聞いていたアイドルは、こんな人形じみたアイドルなんかじゃなかった。その意思は、Trickstarと同じ。
「あの時代とは違うんだよな…。今じゃ子供の頃から"良いアイドル"を植え付けさせるような芸能界。と、この学院」
"良いアイドル"。それは正直洗脳とも言えるのかもしれない。だが、この学院程度なら、彼奴等でも革命を起こせる。
相方の蒼空も是非力になりたいと志願してるほどだ。きっと誰もがこの息苦しい家畜小屋を、ぶっ壊したいんだろう。
「はぁ」
「なぁにため息ついてんのぉ?俺の幸せまで飛ばされそうなんだけど」
「…っと」
しばらく考え込んで歩いていたせいか、目の前に人がいることに気付かず驚く。
顔をあげるとぶつかる直前のところでさらに、ずいっと顔を寄せられる。
「泉…?」
「今回は何を背負ってるわけ?」
その言葉に逃げるように目を逸らし狼狽えるしかなかった。
瀬名泉、こいつはキッズモデルの時からの腐れ縁。本当は一緒にKnightsに所属する予定もあったほど仲が良い、気がする。あと真が非っっ常に嫌がっている。
「泉には敵わないな。だが、今回の事は簡単に口にできない。それに言ったところで…」
「知ってるけどねぇ。ゆうくんのとこのユニットに肩貸してるんでしょ?ほぉんと、自己犠牲も大概にしなよ」
「別に、自己犠牲なんかじゃ…」
「ふぅん。まぁ、俺は黒斗に返せないほどの借りがあるし、何かあれば力になるよ?別にTrickstarの力になるってことじゃないから、そこだけは覚えておいてよねぇ」
「あぁ…わかってるよ。お前もお人よしだな」
「そんなんじゃないから。…本当に黒斗に借りがあるだけぇ。」
「それでも嬉しいもんだな。ありがとう」
なんて真面目にお礼を言われ慣れてない泉はふてくされたように顔を背け、とにかく自己犠牲も程々にねぇ。と再度念を押して立ち去っていく。
自己犠牲って言われ方が癪に触り、しかめっ面のまま泉を見送ったが、あいつの厚意はありがたく受け取っておこう。…そういえば俺もあいつもしょっちゅう一緒にいることが少なくなってきたな。お互い自立したというか…
「あぁもう!頼むから俺を巻き込むなっつってんだろ!」
途端に真緒の悲痛な叫びが耳に届く。あの言い方からするとさすがに今回の3人の動きは予測してなかったのか。
無理にでも俺が早々にみんなまとめてつれて逃げればよかったな。真緒には申し訳ないことをした、かもしれない。
「面倒事は御免なのに!お前らと関わるといつもこうだっ、ちくしょう!泥沼だよっ、お前らとユニット組むんじゃなかったよ!安易に黒斗さんのお願いも聞かなきゃよかった!」
「おい真緒、落ち着けよ」
「うわっと、黒斗さん…!い、いつから」
ほんのちょっと前の事、とはいえ真緒の言葉に引っ掛かった俺は眉間に皺を寄せたままだが。
「お前、今後冗談でも組むんじゃなかったとか言うなよ。せっかくの仲間なんだから…」
「サリーは情緒不安定だな!リラックスしようよ、そうだ!お歌を歌おう♪」
「スバルは相変わらず…だな」
俺がせっかく真緒を宥めようとしていたのだが再度スバルとの言い合いがはじまる。とは言っても一方的な説教をする真緒と、言葉のキャッチボールができないスバルだ。内容が支離滅裂と言っていいだろう。
「まぁ、今回はどさくさ紛れにお前らを修羅場から脱出させるだけだったから。そんなに大変っつうか迷惑でもなかったけど…?それに、黒斗さんが時間をとってくれたお陰で早めにお前らを見つけられたし」
「黒斗さん!やっぱり救世主~!」
不意にがばりと抱きついてくるスバル。こいつに迷惑とか、そういうのは通じなさそうだ。キラキラしたものでも投げてどっか走らせるしか…。
ごそごそとポケットを漁るも何もなく、諦めたところで真が引き剥がすのを手伝ってくれている。
「つーか…なんでお前らあんなところにいたの?生徒会に叛逆する準備が整うまでは、おとなしくしとけって言ったろ?」
今回の事で真緒は北斗に事情を聞いているようだ。いつもTrickstarを束ねてるのは北斗だし、今回もB1を見せていこうと決めたのも北斗だったしな。事情聴取をするなら話の早い北斗が一番だろう。先程の事を思いだし、眉間に皺を寄せ事情を説明する北斗。その背中にはぴくりとも動かない転校生がいる。
よくもまぁ、女を背負えるよなぁ…なんて俺は呑気なことを考えていた。
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早々に集団から抜けた俺はスバル達の事を考える。救世主なんて言われてるが、何もしたことがない。あいつら自身動く機会を狙っていて行動していないのもあるが、俺は"昔は凄かった真の幼馴染み"という肩書きだけで見込まれた救世主だから、実際することが無い。
もしできると言えば無傷とは言わないがあいつらが逃げれるように生徒会の足止めをする程度だ。あとはTrickstarに所属する生徒会の真緒がなんとか手を引いてくれるはず。
「おい」
早速お目当ての人物を発見した。というより向こうから食って掛かってきたのだが
「…おー、敬人。ってなんだ、そんな怖い顔して」
「貴様、いくらコネがあるからといってこんな規律違反のドリフェスを鑑賞するな。」
軽く笑って見せると眉間の皺が一気に深くなったのが確認できる。
まぁそんなことより俺が怒られてる内にあいつらがささっと逃げてくれれば良い。
「だいたいー、黒斗がこんな家畜共の下手なステージを見る必要はないと思うんだけど!なんで好き好んでみてるの?」
ピンク色のアホ毛をぴょこぴょこさせながら姫宮が俺の手を取り首を傾げる。
こいつの口の聞き方はどうも気にくわないが、以前姫宮家がどうとか父さんに言われた時にくまのぬいぐるみをプレゼントしてからというもの異様になつかれてしまった。俺は別に個人的にそんな好かれたかったわけじゃないんだが。
それは置いといて、姫宮の質問に同じように首を傾げると姫宮は混乱し始める。
「な、なんで黒斗も首傾げるんだよぉー!」
「さぁ?俺も気が付いたら鑑賞が趣味になってたから。お前にわからないなら俺にもわからない」
苦笑いを浮かべると姫宮は難しい顔をする。きっと、誰にもわからないことだから、しょうがないのだろう。
「あと、眉間に皺寄せると、敬人みたいになるぞ。背が小さくて可愛いが売りなのに顔が怖いと悲惨なことになる。」
「うにゃっ、それだけは嫌だ!」
「おい。どういう意味だ…!全く余計な時間を過ごした。行くぞ姫宮、いい加減奴らを野放しにしておくわけにはいかない」
「おーおー、いってらっしゃい。」
「ちっ、本当は貴様も一緒に説教されるはずなんだが。」
「駄目ー!黒斗に説教して良いほど偉い人はこの世にいないんだから!」
大袈裟に言ってくれる姫宮。
そういう、俺だけ別次元の人間って誤解されるような言い方はあまり好きではないのだが。2人の後ろ姿を見送りながら溜め息をつく。俺が敬人に言われた"コネ"も、姫宮が言っていた俺を説教して良いほど"偉い人"もここにはいないのだが、コネがあったのも偉い人がいるのも紛れもない事実だ。
この学院ができたのはもう数十年も前の事。代々芸能一家だった俺の家には、みんな考える前に行動する癖がある。
そんな先祖のある一人が、自分達のような人を育ててみよう!何て軽い気持ちで学院を作った人がいた。
つまり結論からいうと、俺はこの学院の創立者の子孫である。となればもちろんコネもあるし、偉い人もいる。
「特別扱いは別に、楽できるからいいが。だからって横暴になるつもりは無いけどな」
そう呟いて今一度溜め息をつき、今ごろ一悶着起きて逃げ切ったであろうTrickstarの連中を探し始める。
真緒がうまく逃がしてくれるのは暗黙の了解。無論、お前のやり方で仲間を助けてやれよと言ったときは快く返事をしていた。
真緒は親の影響からアイドルやモデルに興味があるようで、俺の事も実力は詳しく知らないけど凄い人と慕ってくれている。ちなみにあの佐賀美先生の事も慕っている。先生としての器はあまり良くないが。
「まぁ、先生の事を愚痴っても仕方ない。それより…」
生徒会のやり口、見過ごせないのは確かだ。それをTrickstarの連中は変えようとしている。革命を起こそうとしている。うまくいくか、わからない。でも、俺が先祖から聞いていたアイドルは、こんな人形じみたアイドルなんかじゃなかった。その意思は、Trickstarと同じ。
「あの時代とは違うんだよな…。今じゃ子供の頃から"良いアイドル"を植え付けさせるような芸能界。と、この学院」
"良いアイドル"。それは正直洗脳とも言えるのかもしれない。だが、この学院程度なら、彼奴等でも革命を起こせる。
相方の蒼空も是非力になりたいと志願してるほどだ。きっと誰もがこの息苦しい家畜小屋を、ぶっ壊したいんだろう。
「はぁ」
「なぁにため息ついてんのぉ?俺の幸せまで飛ばされそうなんだけど」
「…っと」
しばらく考え込んで歩いていたせいか、目の前に人がいることに気付かず驚く。
顔をあげるとぶつかる直前のところでさらに、ずいっと顔を寄せられる。
「泉…?」
「今回は何を背負ってるわけ?」
その言葉に逃げるように目を逸らし狼狽えるしかなかった。
瀬名泉、こいつはキッズモデルの時からの腐れ縁。本当は一緒にKnightsに所属する予定もあったほど仲が良い、気がする。あと真が非っっ常に嫌がっている。
「泉には敵わないな。だが、今回の事は簡単に口にできない。それに言ったところで…」
「知ってるけどねぇ。ゆうくんのとこのユニットに肩貸してるんでしょ?ほぉんと、自己犠牲も大概にしなよ」
「別に、自己犠牲なんかじゃ…」
「ふぅん。まぁ、俺は黒斗に返せないほどの借りがあるし、何かあれば力になるよ?別にTrickstarの力になるってことじゃないから、そこだけは覚えておいてよねぇ」
「あぁ…わかってるよ。お前もお人よしだな」
「そんなんじゃないから。…本当に黒斗に借りがあるだけぇ。」
「それでも嬉しいもんだな。ありがとう」
なんて真面目にお礼を言われ慣れてない泉はふてくされたように顔を背け、とにかく自己犠牲も程々にねぇ。と再度念を押して立ち去っていく。
自己犠牲って言われ方が癪に触り、しかめっ面のまま泉を見送ったが、あいつの厚意はありがたく受け取っておこう。…そういえば俺もあいつもしょっちゅう一緒にいることが少なくなってきたな。お互い自立したというか…
「あぁもう!頼むから俺を巻き込むなっつってんだろ!」
途端に真緒の悲痛な叫びが耳に届く。あの言い方からするとさすがに今回の3人の動きは予測してなかったのか。
無理にでも俺が早々にみんなまとめてつれて逃げればよかったな。真緒には申し訳ないことをした、かもしれない。
「面倒事は御免なのに!お前らと関わるといつもこうだっ、ちくしょう!泥沼だよっ、お前らとユニット組むんじゃなかったよ!安易に黒斗さんのお願いも聞かなきゃよかった!」
「おい真緒、落ち着けよ」
「うわっと、黒斗さん…!い、いつから」
ほんのちょっと前の事、とはいえ真緒の言葉に引っ掛かった俺は眉間に皺を寄せたままだが。
「お前、今後冗談でも組むんじゃなかったとか言うなよ。せっかくの仲間なんだから…」
「サリーは情緒不安定だな!リラックスしようよ、そうだ!お歌を歌おう♪」
「スバルは相変わらず…だな」
俺がせっかく真緒を宥めようとしていたのだが再度スバルとの言い合いがはじまる。とは言っても一方的な説教をする真緒と、言葉のキャッチボールができないスバルだ。内容が支離滅裂と言っていいだろう。
「まぁ、今回はどさくさ紛れにお前らを修羅場から脱出させるだけだったから。そんなに大変っつうか迷惑でもなかったけど…?それに、黒斗さんが時間をとってくれたお陰で早めにお前らを見つけられたし」
「黒斗さん!やっぱり救世主~!」
不意にがばりと抱きついてくるスバル。こいつに迷惑とか、そういうのは通じなさそうだ。キラキラしたものでも投げてどっか走らせるしか…。
ごそごそとポケットを漁るも何もなく、諦めたところで真が引き剥がすのを手伝ってくれている。
「つーか…なんでお前らあんなところにいたの?生徒会に叛逆する準備が整うまでは、おとなしくしとけって言ったろ?」
今回の事で真緒は北斗に事情を聞いているようだ。いつもTrickstarを束ねてるのは北斗だし、今回もB1を見せていこうと決めたのも北斗だったしな。事情聴取をするなら話の早い北斗が一番だろう。先程の事を思いだし、眉間に皺を寄せ事情を説明する北斗。その背中にはぴくりとも動かない転校生がいる。
よくもまぁ、女を背負えるよなぁ…なんて俺は呑気なことを考えていた。
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