イベントストーリー
What is your name?
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ギリギリかー!うん、よかったー。
そう横で伸びをしながらはっはっはと高笑いする男を俺はまるで他人のように距離を置く。
「正気じゃないな」
喧嘩祭が終わり、あとは時間いっぱいまで屋台を回るだけになった観客に混ざり、俺の兄はまるで子供のようにはしゃいでいる。
「おい…本当同じ遺伝子とは思えないな」
「なに言ってんだよ。歴とした双子だぞ。それに俺のことは名前で呼べよぉー冷たいなぁ?ほら、綾人って、あーやーとーにーちゃーんって」
「…気持ち悪。そもそも双子で兄ちゃんはない」
特に、ちゃんとか。と付け加える。
双子の兄である目良綾人はとある事務所に所属し、今現在映画撮影の真っ只中。といえど、もちろん休暇はもらえるようで今日はたまたま休みらしい。かぶってしまった。といっても過言ではない。
綾人が来るとろくなことは起きないのだ。
「綾人さまぁぁぁ!キャー!」
先程から女の黄色い声がそこかしこから、四方八方から聞こえる。というか5分に一回はファンに囲まれてる。
サングラスは変装ではなくおしゃれ感覚にしかつけておらず隠れるとか、お忍びという概念はゼロのようだ。
「んで、黒斗、いずみーぬは!?どこどこ!」
そう、そしてろくなことがない理由のパート2は、この泉中毒ということ。俺はなんとも言えないというか、守りたいのは山々だがこいつに逆らうと後々辛いのが俺なのでぎりぎりまで粘るが駄目なときは差し出してしまう。多分今日は粘っても諦めてはくれない日だろう。なぜなら何ヵ月も泉に会っていないのだから。
「自分で探してくれ。俺は降り…」
「ダメだよー?ほらほら俺が迷子になったらどうせ心配するんだろ?」
「あ。敬人」
綾人の言葉を丸々無視してライブが終わり屋台回りをしている紅月を見つける。
珍しいな、あいつらがレッスンとか以外でああやって和気藹々としてるのは。
「友達か?」
「まぁ、そんなところだな」
「ふぅん…」
まずい。と思った。
「おーぅい、そこの和装のお兄さん方。あれだよね、えっと、勝った方のユニットだよな?黒斗がいつも世話になってます」
にぱっと屈託のない笑みを作りながら紅月の3人へと近寄っていく綾人。もちろん敬人もなんの躊躇いもなく頭を下げる。すると紅郎が首をかしげた。
「あぁ?黒斗じゃねぇのか?ん、後ろからも黒斗が」
そう紅郎が言った途端紅郎が着ていた衣装の襟首が掴まれる。それは他の誰のものでもなく綾人の手によって。
「お前俺と黒斗の見分けすらつかねぇのかよ、あぁ?よくもまぁそれで黒斗と対等に話せるなぁおい」
「あぁ?なんだてめぇ。黒斗に似てるから双子かと思えば性格はまるっと違ぇんだな。いい度胸じゃねぇか」
「綾人…!」
「鬼龍…!」
俺と敬人が止めようと互いの肩を掴んだのはほぼ同時で、俺は溜め息をついて綾人をとりあえず思う限りの力で蹴った。そりゃもう骨折れてもいいだろってくらいには。
「おい黒斗。そいつは黒斗の双子か?随分似てるじゃねぇか」
いまだ少し苛ついている紅郎にすまないと一言添え俺は綾人の頭を掴み下げさせる。
「俺の双子の兄だ。頭はおかしいが、まぁそれなりの芸歴を持ってる。頭おかしいけどな。あと極めつけはブラコンなんだ。頭おかしいだろ?」
「目良、それくらいにしてやれ。」
以前一度話をしたことのある敬人は本当に聞いた通りだというのと同時に哀れみの目を綾人に向ける。紅郎はブラコンねぇ…なんて顎に手を添えて呟くがシスコンだから少しは気持ちわかるのだろうかと疑ってしまった。
「あぁ、それで…俺はこんな下らない奴を紹介しに来たんじゃないんだ。改めて、勝利を祝いに来た。」
「祝い?なにか貰えたりするのだろうか」
ひょこりと顔を出す颯馬に苦笑いを返しながらも、屋台でほしいものがあったら買ってやると返事をする。心底嬉しそうにする颯馬は見ていて微笑ましいのだが綾人が視界に入ると身の危険を感じる。
「今回のことで紅月に、仕事が入るんだよ。話が早すぎて俺も困ったんだが、どうにも今回の喧嘩祭っていう対バン形式もってこいのドリフェスを前々から期待してた会社がいて、今回の勝ち組にCMの依頼をしたかったらしいんだ」
「へぇ?そりゃ随分と光栄な話だな?」
「感謝しろよお前ら!こんなにも心優しくて可愛い黒斗が先方に頭下げてもらってきた仕事なんだからな!」
「色々突っ込みたいがとりあえず死ね」
「どいひー!ごめんって頭下げたは嘘だったから怒らないで!」
「……とにかく、なんというか、喧嘩っぽいCMになるみたいだからこのドリフェスにわざわざ足を運んだみたいでな。立ち振舞いとかぴったりだからって。」
「ふむ、まぁどういった仕事であれ紅月の知名度が上がるに越したことはないしな。今回勝ったことと言い、波に乗らねば損だろう。その仕事、快く受けるとしよう」
「おー、ありがとな。ちなみに…その仕事する際お前らが一時的にお世話になる事務所、この下らないのと同じになるけど…」
「…なぁ蓮巳の旦那。この話なかったことにならねぇか。」
紅郎の発言にやっぱりそう思うよな。という考えが敬人とシンクロする中、俺たちは颯馬の為に屋台巡りをするのであった。
決別!思い出と喧嘩祭::END
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