イベントストーリー
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新曲作りに熱心になる黒斗。俺はその横に座りTrickstarのダンスの練習を眺めていた。
「俺本当、今日いる意味ないよなぁ」
昼間グラウンドでは転校生ちゃんに代わって俺がレッスン内容を読み上げて一緒にやったりしてたけど、夕方学院のレッスン室では始まってからこうしてずっとただ眺めているだけだ。
呟いた言葉は誰に拾われるわけでもない。黒斗が作曲するときは耳栓をしたり自分の世界に入るせいで俺の言葉も生活音の一部になるのだろう。
「蒼空さん…今良いですか?」
ふと礼儀正しくまこたんが俺の前に座り込む。
「んー、どうしたんだ?」
「あの、僕さっきの、最初の方にやってたステップが出来なくて。休憩中でみんな休んでるから蒼空さんなら教えてくれるかなぁって思って」
「あー、まぁ。俺も暇してたし良いよ?けど始めの方のってあれ結構基礎の応用程度だろ?まぁ確かに見てたら出遅れてたけど」
そう言いながら立ち上がるとずっと座っていたせいか体が軋む。うーん、とその場で伸びをして軽くストレッチをする。
大きな鏡の前にまこたんを立たせ手拍子をして踊らせる。出遅れてるのもあるけど、手の振り付けとずれてるな。
「ワン、ツー、スリー、ワン、ツー、スリー…ワン、つー…」
「あれ…蒼空さん…?」
「えっ、あ…わ、悪い。手拍子って案外ずれちゃって難しいな!」
「…は、はい」
「俺がちょっとゆっくり踊るから、それに合わせて足動かしてみようぜ。まずは手の振り付け無しでな?」
そう言ってステップを見せる。一緒になってまこたんが動きだし、それを見ていたまおまおが手拍子をしてくれる。
こうしている間は気が紛れて良いけど。やっぱりさっきみたいに新曲を作る黒斗の横にいるときは自分が呼ばれた意味がひしひしと伝わって心が痛む。
「ぅわっ…!?」
次のステップに足を踏み出そうとしたところで片足にぶつかり、情けないほどに転倒する。
「ってー…」
「蒼空!大丈夫か?」
目の前で失敗したことのない俺に北斗が慌てて駆け寄ってくる。まこたんは何を思ってか自分が足引っ掻けちゃったかもとか…?なんて心配をし始めた。
「あぁー、もう…しょーもないところで失敗した。あーあー……ごめん、ちょっと休む」
その場に大の字になって一度深呼吸をし、訝しげに俺を見ながらも練習を再開するであろうTrickstarのためにそこを退ける。その足でレッスン室を出るも行く宛もなくその扉の横でうずくまった。
「…はぁ」
何分そうしていたかわからなくて、1人溜め息を吐く。先日黒斗が仕事に行って1人で部屋にいたときもテレビもつけずなんの音もない場所で溜め息をついてた。今も、壁一枚向こうでレッスンしてるとはいえ防音室。俺が今いる場所は無音だ。
こういうときは、いつも克服したとはあまりにも言いがたい人の声が聞こえる気がする。むしろ、俺からすがってしまう、自問自答と割りきるには少し…難点が多い。
「俺がなにも出来ないから?」
「んなもん考えるより、無理矢理入り込めばいいんじゃねぇのか」
「…それは、もう…そんなことをしてまで自分の居場所を取り返さなきゃいけない訳じゃ」
その場に体育座りをして目を伏せた。小さい声で喋る。けど受け答えをしてくれる奴は遠慮なしに声を張り上げる。
「昔みてぇに暴れられねぇのかよ。」
頭の中でなのか、それとも口に出てるのか…もうわからないほど夢中で口論して、いや、俺だって奇人変人なんて思われたくないけど
「わっ…と、あ、蒼空」
「えっ、蒼空先輩?」
「っ、!」
はっと我にかえるとレッスン室の扉が開かれておりそこから北斗と転校生ちゃんが出てくる。もちろん足元にいた俺に酷く驚いているようだ。
「な、何してたんだ?」
「…休憩、して、今…えっと、戻ろうとしたら腹痛くなって蹲ってた。」
秒の早さで回った頭で適当に言い訳をするとかなり怪しいものを見る目で見られる。うん、俺もその気持ちわかる。
「北斗たちは?どしたの?」
「それが…理由は言うと面倒なんだが、花火を屋上ですることになったんだ」
「へぇー?えっと…俺もいれて!」
「もちろん、最初からそのつもりだ。戻ってきたら伝えようかと思って。ちなみに俺たちは今から花火を買いに行く。だから、待っててくれないか」
「あ、なるほどー、じゃあ行き違いにならなくてよかった。いってらっしゃーい」
北斗と転校生ちゃんの背中を見送り、軽い頭痛に悩まされながらレッスン室に戻る。
同時にTrickstarの3人から北斗から聞かされた話を聞きりょーかい、と快く頷いた。
黒斗は相変わらず、作曲が終わっても同じ場所に座っていて無言でその隣に座る。乱雑なんて言葉、黒斗の中にはないのかと言うほど綺麗に置かれた楽譜に手を伸ばす。が、その手はぺしりと叩かれ見事に楽譜を俺の届かない位置にスライドしていく。
「え、なんで?」
「なんとなく。今のお前だと破り捨てそうで怖いからな。扉の横で何してたかなんて聞かないが、久しぶりに据わった目を見て大体察する」
「ひっど」
「お前こそ、力でねじ伏せようとか考えてただろ」
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