イベントストーリー
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すごいねぇ。なんて褒めるのは正直性に合わない。黒斗はよく働くしよく安請け合いする。そのくせに女が苦手だとかステージに立つとそこかしこが痛いとかちょ~我が儘。
「黒斗ってさぁ」
今回の海軍、つまり流星隊のライブの最中、あの転校生は観客へのサービスに団扇やジュースを配り歩いていて、黒斗も俺たちと一緒にそれを手伝うとか話をしていたのに、急に荷物を置いてステージの裏へと走っていってしまった。
「なぁに泉ちゃん。黒斗ちゃんがいないとやる気でないとか言うんじゃないでしょうね?」
「やる気はそもそも無いけどさぁ。黒斗ってどうして何でも見えるんだろうねぇ?」
「え?」
「なるくんってあまりよくわかってないんだっけ。まるでSFみたいな黒斗の目のこと。」
素直にこくりと頷くなるくんに、もう一通り回ったし一回捌けようかなんて言って俺は一足早くちょうど日陰になっている海の家の横に立つ。後からなるくんは、真夏に着ぐるみを着て疲れ果ててるであろう転校生も連れて休憩にはいった。
「それで?黒斗ちゃんの目のこと話してくれるのかしらァ?」
「えぇ、俺別にそんなこと言ってないよねぇ?」
「んまっ、てっきり話してくれるものだと思ってたのに!」
「黒斗先輩の、目ですか?」
転校生が裏で着ぐるみを脱ぎ終え遠慮がちに訪ねてくる。なるくんも含め、ほとんどの人が黒斗が眼帯の理由は知らない。俺と、ゆうくんとみやくん。それくらいだ。だから、あまりぼろぼろと口にすることじゃないけど、あの黒斗の目に関しては3年生はもちろん部活の人とか、割りと色んな人が知っている。何でも見えるあの目に関して。
「黒斗の目ってまるで読心術みたいなんだよねぇ。恐ろしいくらい何でも見えるから、気配りもするし首も突っ込む。もちろん物理的なことも見えるから何が起こるかってある程度予想できちゃうみたいでさ」
「えーっと、じゃあ黒斗ちゃんがさっき走っていったのって、UNDEADに何かあったのかしら」
そう言ったなるくんの言葉に慌てて転校生が向かおうとする。
「行かない方がいいよぉ?正直あんたより黒斗の方が場馴れしてるし、女が行ったら黒斗動けなくなるか、あんたが怒鳴られるからぁ」
「で、でも黒斗先輩は、どうしてそこまで慣れてるんですか?」
「ステージに上がれない代わりに、蒼空ちゃんの為に必死にプロデューサーとかマネージャーみたいな仕事してたのよォ。それこそ仕事持ってきたりスケジュール管理したり、失敗知らずだったわ。ってそれも、その目で見えてるからってことかしら」
そうそう、と何度か頷けば納得いったように感嘆の声をあげるなるくん。仕事できる男の子って凄く格好いいわァなんて呟いてるけど、黒斗にそんなこと言っても嬉しくないんじゃない?仕事ができるって言うより相手の心情が読めてるからそれに合わせて言葉選んで仕事もらってるんだから。黒斗も前言ってたっけ、自分は狡い力を持った人って感じがする、って…。
確かに小さい頃から黒斗は大人みたいな事ばっかり口にしてたしなんかひねくれてた。それは大人の心の内が見えていたからなんだろうけど。
「でも」
それでも俺は確かにその狡い力に助けられたんだから、もっと誇っていいと思うんだよねぇ。片目を失ってから直後の黒斗はほとんど死人みたいだったけど。
「泉ちゃん、黒斗ちゃん出てきたわよ?それに合わせて次はUNDEADの子たちのパフォーマンスだわ」
昔を思い出していた俺になるくんが気に掛けるように肩に手を置く。
なんて事無いように、やめてよねぇ、といつものようになるくんの手を振り払い黒斗を見れば観客の波に飲まれてしまっていくところだった。
「あー、黒斗ちゃん、大丈夫かしらァ」
「黒斗はそのままライブ鑑賞するかもねぇ?趣味みたいなとこあるから」
そうは言ったものの普段見られない屋外海上ライブに盛り上がった観客の波から一向に黒斗の姿を捉えられない。
「黒斗先輩、踏まれてないといいんですけど」
「貧乏くじ引く癖はあるからねぇ」
「それって悠長にいってる場合じゃないわよね?まさか本当に?」
さすがにそれはないでしょ、と軽く笑うと転校生が全く別の方向を見詰めそちらに走っていく。
は?なに?と、なるくんと顔を合わせ俺は肩を竦めた。追いましょ!の一言でなるくんは俺の腕を掴み勢いよく走り出す。
「はぁ!?ちょっと!なんで俺まで行かなきゃいけないの!?」
文句を言うも聞こえていない。ステージに近く、UNDEADの爆音は簡単に俺の声をかき消してしまう。焦りの顔を隠せていない転校生の行く先はステージの近くだけど、人目のつかない機材が置かれた簡易テントの裏だった。
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