イベントストーリー
What is your name?
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「凄い、ちょ、黒斗!!ひびきんまだ気球乗ってる!」
「はしゃぐな…、あんなんいつもの事だろう…。しかも、まだって言ったってあいつ司会やるつもりらしいからずっと飛んでんじゃないのか?」
まるで子供のようにはしゃぐ蒼空を横目で見ながら渉の奇行に溜め息を吐く。
ここ数日働かせてはくれないし正直いらいらが募ってしょうがないが、誰にあたることもなく今日を迎えた。
そもそもステージに立てるかが問題だったんだがこのいらいらのせいでなおさらコンディションが悪く、のり気になれないのが現状だ。
「ステージに来てから言うのもなんだけどさ、黒斗可愛い曲似合わないし休んでる?」
蒼空の言いたいこともわかるが、織姫用の衣装に身を包む結果になってしまったのだからずっと可愛い曲で、つまりいつもの俺の"見てるだけのアイドル"ということになるわけだ。つか誰のせいで可愛い曲になったと…。
「変な気を遣うな。ベストコンディションじゃないのは見てわかるかもしれないけど、今日は…そうだな、一回くらいは立つつもりだ」
「ちなみに初戦はKnightsなんだけどな」
「やっぱり休むか…」
「そうはさせないからねぇ?」
聞きなれた声とその口調に死ぬほど、死にたくなった。
向かいの舞台袖から上がってきたKnightsの面々はもちろん彦星の衣装。そうか、客にはわかりやすいように織姫と彦星の衣装でぶつかるように予定組まれてるんだな。やっぱり蒼空を後で殴ろう。
「なんか今怖いこと考えなかった?」
「やっだー!可愛い!ちょっと後で一緒に写真撮りましょ!黒斗ちゃん本当に今も昔もずっと魅力的だわ!」
「うっわ…嵐!!」
曲が始まりそうだというのに凛月や泉を押しのけて俺に抱き着いてきたのは何を隠そう嵐だった。いつからだったか…こいつが俺にこうして付きまとうようになったのは。あぁ、入学してからずっとか。まずい。こいつは昔から俺の大ファンらしく会うといつもこうだ。この流れに流されるとKnightsに負けてもおかしくない。曲が流れだし慌てて引きはがす。
「飲まれるな、流されるな、飲まれるな。流されるな」
「黒斗、怖いなー?」
蒼空が俺を心配そうに見ながら肩に手を置く。今はどう思われてもしょうがない。というか正直休もうと、もとい逃げようと思ったのに曲が始まってしまったらもうステージからは降りられない。あぁ考えれば考える程頭が痛い。俺に不利な状況でしかない。可愛いなんて似合わないし相手は見られたくない泉と嵐。そして俺の中にあるいらいら。
「あぁもう、どうにでもなれ…!」
「ぶっとんだね?黒斗、うーん大丈夫。可愛い可愛い。」
「心にもないことを言うな!」
俺だって可愛いところ見せちゃうよ~!なんてやけにノリノリな蒼空につられ俺までテンションが上がってくる。いや正確に言えば吹っ切れただけなのかもしれない。
「うっわー…黒斗、昔一時やらされてた男の娘みたいになってるんだけどぉ?みやくんも、なんか妙にしっくりくるし?」
「やーねぇ?可愛いのは大歓迎だけど、このままじゃ負けちゃうわよ?」
「そんなこと例え誰が相手だろうとさせません!」
Knights側がやっと、やる気を出してきたようで日の落ちたこの時間のせいでさらに1人分の戦力が増している。
人数でそもそも押されるのはしょうがない。人数が多く個々の能力が高い分なお綺麗に見えるのがKnightsの長所だ。
「負ける気はこっちだってないけどな!」
蒼空がいつものようにファンへ手を振ったりするだけではなく何なら前列の子たちと握手している。
お、俺は、何したらいいだろう。七夕らしいこと、織姫らしいこと…可愛く、女の子みたいな?
「…っ」
戸惑いと、変なことを考えたせいで過った思いをごまかすように踊る。そ、そうだ。泉にさっき言われてた男の娘…ええと…あの頃は本当になりきってて、こういう時はなんて言ってたっけな…
そう頭をフル回転させるも歌ったり踊ったり、終始やることしかやらずにライブが終わった。
「ほら黒斗、印象付けになんか言っとくべきだよ」
「本気か?」
小声で無理だ、という俺には気にも留めず蒼空が一歩前に出て誰だお前というほどのかわいらしさでファンに声をかける。
「僕と一緒に今日ライブしてくれた織姫ちゃんが、集まってくれたみんなにね!言いたいことがあるんだってー!」
余計なことをするな!?
涙目で蒼空を睨むも抵抗虚しく背中を押される、ええと、僕?僕だったか?昔は、そう、あー、うーん。Knightsの面々も何が面白いのか口元を緩ませながら俺を見てるのがひしひしと伝わる。見てなくても見えてんだからな…
「きょ、今日はぁ、織姫の為に来てくれてありがとぉー!織姫が勝ったらぁ、みんなのお願いぜーんぶかなえてあげるっ!」
「黒斗…俺より完成度高い…」
女たちの可愛いという黄色い歓声と男どもの低くも昂っている声援を受けながら俺は頬に人差し指を当てポーズをとる。
誰か今こそ俺をナイフで刺し殺してくれないだろうか。
挑戦!!願いの七夕祭::END
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