イベントストーリー
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「ここがやっぱり…納得いかないな」
決して俺に話しかけているわけではない黒斗は俺を背もたれにしながら武道場で資料を広げて、それを一つずつ眺めていた。
なんで武道場にいるかって…俺は黒斗の付き添い、もとい転校生との掲示板係で、約一週間前から継続して約束してた話し合いをしようと放課後集まったらくろたんから呼び出されたと。当のくろたんはまだちょっと衣装の気になるところを最終チェックしてるみたいだけど…。
そんな状況で俺の向かいには心のよりどころがなさそうな転校生がいる。
仕方なく、俺が話を盛り上げるか、なんて頭を使った。
「そんで時期を考慮して、七夕かぁ…昔、と言っても黒斗はそれどころじゃなかったかもしれないけど、昔は季節をテーマに…とかってドリフェス多かったよな」
「はい、その話は先輩方もみんな口をそろえて言ってました。」
「うんうん、この前も桜フェスっていういかにも春らしいものやったしさ、七夕っていいと思う。時代の波は大事だしね。アイドルもイベントにあわせて新曲出すってことも恒例みたいなもんだし」
こくりと頷くのと同時にくろたんと目が合う。んーと…終わったのか…?俺は目を合わせたくらいじゃ何もわからないんだけど
「紅郎終わったのか?」
そこでずっと資料に目を通していたはずの黒斗が声を発した。
「おう。嬢ちゃんが企画したっていう例のドリフェス…七夕祭だっけか、それの衣装第一号が仕上がったんだよ」
俺も身を乗り出して衣装を見ると背もたれにしていた黒斗がうわ…と短い悲鳴を上げた。
まぁそれくらいいくら片目が見えなくても黒斗なら大丈夫だって信じてる。勝手に。
「デザイン画は確認してもらったけどよ、やっぱ実物をちゃんと見てもらった方がいいと思ったんだよ。どんなもんだ、もうちょい細部は整えるつもりだけどよ」
「くろたん相変わらず凄いなぁ…魔法みたい。」
「蒼空先輩の言う通りです、こんなきれいにできるなんて魔法使いじゃなきゃできないですよ…」
感心して見る俺と転校生の様子を見るとくろたんも照れ臭そうに笑う。
本当お母さんみたいに面倒見がいいし、衣装づくりに関して右に出るものはいないくらいだ。
話を聞くと防水加工も施してるんだとか…正直凄すぎる、そんなことまで気にするなんてなかなかの手腕。
「複数のユニットが出場するんだろ、七夕祭には。衣装が一種類じゃあ、客にユニットの見分けがつかねぇしな。せっかくの七夕祭だしな、彦星、織姫って感じの方向性で作るか」
彦星と、織姫。ふむふむ、七夕らしさが一層出てくるな。織姫と言えど、女の子がいないのがこの学院にいないのが難点だけど…。
Ra*bits、とか葵兄弟も着れないことなさそうだけど。
「黒斗-?俺たちは彦星にする?どっちがいい?」
「お前らは彦星だろ」
後ろを振り返り黒斗に尋ねると呆れた声でくろたんがツッコミをいれてくる。でもほらニュー路線っての?って大事じゃないか?駄目か…
「お前の好きな方でいいぞ。織姫っつう可愛い感じにあわせて新曲作るのもありだしな」
「え、ほんと!?」
たぶんこれは誰も予想してなかった。黒斗なら大体呆れて駄目だとか言ってくるだろうって誰もが賭けてたくらいなのに。
「…ん?外が騒がしいな。ジョギングに行ってた鉄が戻ってきたのか?」
「外?あぁ…俺が見に行く。3人とも手空いてなさそうだし」
ひらりと手を挙げ入り口に立ち覗くように少しだけドアを開けて廊下を見る。
その途端、くろたんとは比べ物にならないほどの迫力のない怒声と慌てふためく声が響き、茶色の頭が俺を突き飛ばして武道場に入ってくる。
「ぐはっ…」
「な、なんで追いかけてくるんだぜ友ちゃん!俺がスーパースターだからかっ、俺の溢れるカリスマ性に引き寄せられてるのかっ!?」
「おい、何事だよ騒々しい。道場には一礼してから入れよ。つうか靴を脱げよ。ったく不作法な連中だな?」
「いっつぅ…」
身長差からか、相手が前傾姿勢で走ってきたからか俺の懐に見事にクリーンヒットしていて、さすりながら無礼な奴を睨む。相手はすでにおとなしくしているようで、くろたんが一喝したのは容易に想像できた。
「蒼空、大丈夫か?」
「心配してんなら少しは資料から目を離して言ってよ。」
「蒼空先輩、渠とか打ってないですか?」
「うーん、たぶん大丈夫だけどさ…何、誰だったわけ?…ってRa*bitsの子たちじゃん」
俺と目があった2人はきょとんとした顔を俺と転校生に向ける。
そんな俺たちにお構いなしのようで黒斗が色々書き込んでいた今回の企画の資料を転校生に無言で渡しているのを視界の隅に捉えた。と思えば俺の肩をぽんと叩く。
「おい、蒼空。結局衣装はどっちにするんだ?」
「へ?あ!!織姫の方!」
「……冗談のつもりだったんだが…な」
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