彼がステージに上がる時
What is your name?
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最終話
何もかも出し切った。
そんな気がする。
いや、でも、自分が出し切ったところでみんなの力になれているとは到底思えないけど。
新曲でパフォーマンスの最中何かに期待して僕は舞台袖を見た。観客席を見る時みたいに逆光ではっきりとは見えることはまずないけれど、確かに黒斗さんと、目があった。
「ううー…」
「ていうか舞台上で弱った姿を見せるなよ。疲れてるのはわかるけどさー?」
不意に司会を務める佐賀美先生がこちらを向きマイクから口を離して僕らに伝える。
「……うるさいよ~、佐賀美ちゃん」
明星くんが無言で佐賀美先生を軽く睨んだ後愚痴をこぼす。睨んだというより疲れてて目つきがちょっと悪くなってるだけかもしれないけど…
そんな明星くんが生徒会長に目線をやるものだからついつられて会長を見ると病気だとか嘘なんじゃないのかなってくらい涼しい顔をしている。
「佐賀美先生の言うとおりだよ、君たち。ステージの幕がおりるまでは気高く振舞いなさい。」
「おっと、意外と余裕?涼しい顔しちゃって~?」
「いいや、汗がひいちゃうくらい疲労困憊しているよ。気を抜いたら失神するね。さすがにちょっと、僕も疲れた。…これはライブのあと、また入院することになるかもね。」
ふふ、とどこか満足げに言う会長に少し、どころかかなり恐れ入る。これがプロなんだ。腐っても学院最強なんだね。そしてなにより努力をしてる。アイドルとして、自分のできるところまで、限界まで戦ってきていたんだ。
肩を貸そうと言っていた明星くんの気遣いを笑顔で断る会長に強いなぁ。なんて素直に感心した。
「あんた…。今更だけど、どうしてDDDなんて開催したんだ?あんた放っておけばSSの代表だったんだろ。その権利を投げ出して、そんな無茶をしてまで、どうして俺たちにチャンスをくれたんだ?」
明星くんが素朴な疑問を会長にぶつける。ほかの人なら恐れ多くて聞けないだろうその質問に会長は嬉しそうでもなく、悲しそうでもなく怒るわけでもなく応えていた。
運命とか愛とか、可能性とか、自分の息を整えることで精一杯の僕には少し難しい話をしているみたいで、天才の間には入れなかった。
舞台袖から椚先生が上がってくるのをわずかに視界の隅に捉える。
もしかしなくても、結果が発表される。
「投票数の集計が完了しました。DDD決勝戦の、結果発表をいたします。」
椚先生がぎりぎりまで笑顔を崩さない。どっちが…勝ったのだろう。
「結果はもちろん、順当ですが…fineの勝利です。」
「え…?ぼ、僕たち、負けちゃったの?」
まだ整っていない呼吸と心拍数と精神のせいで、信じられない。
どこかで期待していたのに、もしかして漫画の主人公みたいに奇跡が起きるんじゃないかなって!
みんな思うところは同じ、明星くんも衣更くんもボロボロと口から悔しいという言葉がこぼれる。
「今更言っても遅い。俺も、同じ気持ちだが…fineの壁は高く分厚く、俺たちには覆せなかった。それが結果だ。受け入れるしかない……くそったれが!」
「ひっ、いつもクールな氷鷹くんが汚い言葉を吐いた!ていうか壁に拳をたたきつけたらだめだよっ、怪我しちゃうよ!」
あまりの氷鷹くんの行動に驚き慌てて手を止めさせる。
「ううう~、でも僕も悔しい!僕も泣き叫びたいよ!」
わんわんとみんなが悔しがる中、fineの人たちは悠々とした姿で、僕たちにさらに追い打ちをかけるような言葉を吐く。
「…っ?」
不意に横を誰かが通り過ぎていくのを感じて顔を上げる。僕たちとは逆側の舞台袖に誰かが走っていった。
1人は…蒼空さん?
もう暗くなった舞台袖を注視しても誰かははっきりと見えない。
「……椚先生。差し出口ですが、意地悪が過ぎますよ。僕も僕なりに、それぞれのユニットの投票数を計算しましたが」
「へぇ意外。暴君が自分のランクをぐらつかせるの?」
「まぁ、僕は確かに君に暴君とか言われてるけど、悪魔ではないからね。」
「英智。あまり死に急ぎすぎるのは感心しない。俺もこの結果には不満だが、言ってしまえばお前も相当な苦労をする。」
「いいんだ。僕はもう、決めてる。」
周りが気付かないように舞台袖に近づく、わずかに聞こえたその声は紛れもなく会長と、蒼空さんと、黒斗さんだった。
目にも留まらない速さで走っていったのは黒斗さんの手を引っ張り蒼空さんが突っ切っていったからなのかもしれない。
ふとマイクがオンのまま佐賀美先生が喋りだす。
「えっ、何?あきやーん、投票結果に嘘ついたの?駄目だぞ不正は!皆さーん、ここに悪徳教師がいます!普段俺がたばことか酒とかしてたら怒るくせにー!」
「ちょっと黙ってなさい、あなたたち!特に陣…!嘘などついておりません!ただすべての事実を開陳する前に、あなた方が勝手にぺちゃくちゃ喚いたんでしょうが…!」
状況がまったく読み込めない。勝手に喚いた?だって僕たちは負けたから。喚きたくなくても喚いちゃうものじゃないの…え?
「えー、お騒がせしました。先ほどの発言を少々ばかり捕捉しましょう。本来ならば、このDDD決勝戦を制したのは順当にfineでした。投票結果がそれを物語っています。fineの投票数はTrickstarを上回っています。」
椚先生の言う通り、ステージに映し出されたスクリーンにはわずかながらにfineが僕たちよりも多く投票されている。わかっていたけれど、それでも、わずかながら。そしてその差はどう考えても…
「今回の決勝戦におけるTrickstarとfineの投票数の差は…惜しくも、ほんの一票分のみですが、この延長戦開催の規定値に達しています」
「え…一票分…!」
単純に凄いと思った。奇跡かと…。たった1人が僕たちに投票してくれたおかげで…。
転校生ちゃんのおかげで!
既に感極まっている僕をよそに会長とfineの面々が話し合っている。
「延長戦は、棄権しましょう。構わないかい、渉、桃李、弓弦…?これを僕の、最後の我儘にするよ」
「えぇ。会長様がそうお望みなら、わたくしは従うのみです。坊ちゃまもよろしいですね?」
「よ、よろしくない!えぇぇぇ!?何を言っちゃってんの会長っ、それってつまり結局ええっと…?」
酷く混乱している姫宮くんに僕もつられて疑問符を頭上に何個も浮かべる。高笑いしながら日々樹先輩がマイクも入ってないのに相当な声量でAmazingと言い出す。
「えっ…?えっと?嘘っ、どうしてそうなるの?誰か説明して!」
呆気に取られた顔で問いかける明星くんに何一つ取りこぼすことなく氷鷹くんが説明してくれる。僕もそれになんとなくしか理解できないけれど衣更くんや氷鷹くんの様子につられてふつふつと実感がわいてくる。
「君たちに投票してくれたすべての観客に、応援してくれたすべての人に、感謝の言葉を述べるといいよ。君たちは、アイドルなのだろう?」
今度こそ嬉しそうに笑う会長は一歩下がる。かなりふらついていたのを伏見くんが支えていて奥から酸素マスクみたいなのを渡されていた。間違いなく黒斗さんの手で。皇帝と恐れられている会長でも、黒斗さんにとっては大事な友人なんだろう…周りの目を気にも留めず半ば強引に裏へと連れて行こうとしている。
「黒斗さん!」
「え…うわ…ま、真!?」
半分ほどステージに入り込んでいるのすら嫌なのか息が荒くなっている、もしかしてまた自分より他人を優先してここにいたせいで…。
「む、無理しないでください!というか!本当に僕たちは勝ったんですか?」
「うわーぁ、まこたん無理しないでって言いながらさらにステージ側に黒斗引っ張ってる。やめたげて…!あの暴君の次は黒斗が倒れるから!」
明星くんが、S1と同じようにみんなをステージへと招く。今度こそ、黒斗さんも一緒に!
「アンコールの一曲を、声を合わせて元気よく!」
明星くんの声にひかれるように蒼空さんが一歩ステージに入り込む。黒斗さんは嫌々と首を振っている。
「は?おお俺も?いいっての、ほら蒼空行ってこい!俺…倒れ、るぞ」
「うーん、倒れたら俺が看病してやるからさ。ほら、かーわいいTrickstarの連中に誘われてるんだし行こうぜ?」
「ままままて!女も上がってきたぞ!」
「…もう、たまには僕の我儘聞いてください!」
しびれを切らして思いっきり黒斗さんを引っ張る。もう片方の手は蒼空さんに支えられるように引っ張られて黒斗さんは強引ではあるが、もう一度…ステージに立つ。
みんなを招くように身を乗り出していた明星くんが満足げに手を挙げる。
「夢ノ咲学院のステージだっ!どれだけたくさんの人数を、夢を乗せても大丈夫っ!青春とか友情とか希望とか、たっぷり詰めきれないほど詰め込んで、みんなで並んで、手を繋いで歌おう!」
「手!?ががが学芸会かよ…」
「もう黒斗ってば焦りすぎ。俺と立ってた時こんなんじゃなかったのになー?」
「うるさい馬鹿野郎!真!お前俺の前に立ってろ!」
「ぅええ!?僕より黒斗さん立ってた方がお客さん喜びますって!」
僕を頼る黒斗さんを見るのは正直初めてでどうすればいいかもわからなかったけど、すごく嬉しかったし何より面白かった。
「みんなもう散々聞いただろうから覚えてくれてるでしょ?俺たちの最新曲、とっておきの歌!ONLY YOUR STARS…!」
これ以上ない嬉しさと楽しさで今なら何でもできそうなほどの思いで歌を歌う。
僕たち、本当に勝ったんだ!そしてこれからもっと大きなステージに向けて輝いていくんだ!
「みんな、本当にありがとう!!!」
Congratulation!
::END
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何もかも出し切った。
そんな気がする。
いや、でも、自分が出し切ったところでみんなの力になれているとは到底思えないけど。
新曲でパフォーマンスの最中何かに期待して僕は舞台袖を見た。観客席を見る時みたいに逆光ではっきりとは見えることはまずないけれど、確かに黒斗さんと、目があった。
「ううー…」
「ていうか舞台上で弱った姿を見せるなよ。疲れてるのはわかるけどさー?」
不意に司会を務める佐賀美先生がこちらを向きマイクから口を離して僕らに伝える。
「……うるさいよ~、佐賀美ちゃん」
明星くんが無言で佐賀美先生を軽く睨んだ後愚痴をこぼす。睨んだというより疲れてて目つきがちょっと悪くなってるだけかもしれないけど…
そんな明星くんが生徒会長に目線をやるものだからついつられて会長を見ると病気だとか嘘なんじゃないのかなってくらい涼しい顔をしている。
「佐賀美先生の言うとおりだよ、君たち。ステージの幕がおりるまでは気高く振舞いなさい。」
「おっと、意外と余裕?涼しい顔しちゃって~?」
「いいや、汗がひいちゃうくらい疲労困憊しているよ。気を抜いたら失神するね。さすがにちょっと、僕も疲れた。…これはライブのあと、また入院することになるかもね。」
ふふ、とどこか満足げに言う会長に少し、どころかかなり恐れ入る。これがプロなんだ。腐っても学院最強なんだね。そしてなにより努力をしてる。アイドルとして、自分のできるところまで、限界まで戦ってきていたんだ。
肩を貸そうと言っていた明星くんの気遣いを笑顔で断る会長に強いなぁ。なんて素直に感心した。
「あんた…。今更だけど、どうしてDDDなんて開催したんだ?あんた放っておけばSSの代表だったんだろ。その権利を投げ出して、そんな無茶をしてまで、どうして俺たちにチャンスをくれたんだ?」
明星くんが素朴な疑問を会長にぶつける。ほかの人なら恐れ多くて聞けないだろうその質問に会長は嬉しそうでもなく、悲しそうでもなく怒るわけでもなく応えていた。
運命とか愛とか、可能性とか、自分の息を整えることで精一杯の僕には少し難しい話をしているみたいで、天才の間には入れなかった。
舞台袖から椚先生が上がってくるのをわずかに視界の隅に捉える。
もしかしなくても、結果が発表される。
「投票数の集計が完了しました。DDD決勝戦の、結果発表をいたします。」
椚先生がぎりぎりまで笑顔を崩さない。どっちが…勝ったのだろう。
「結果はもちろん、順当ですが…fineの勝利です。」
「え…?ぼ、僕たち、負けちゃったの?」
まだ整っていない呼吸と心拍数と精神のせいで、信じられない。
どこかで期待していたのに、もしかして漫画の主人公みたいに奇跡が起きるんじゃないかなって!
みんな思うところは同じ、明星くんも衣更くんもボロボロと口から悔しいという言葉がこぼれる。
「今更言っても遅い。俺も、同じ気持ちだが…fineの壁は高く分厚く、俺たちには覆せなかった。それが結果だ。受け入れるしかない……くそったれが!」
「ひっ、いつもクールな氷鷹くんが汚い言葉を吐いた!ていうか壁に拳をたたきつけたらだめだよっ、怪我しちゃうよ!」
あまりの氷鷹くんの行動に驚き慌てて手を止めさせる。
「ううう~、でも僕も悔しい!僕も泣き叫びたいよ!」
わんわんとみんなが悔しがる中、fineの人たちは悠々とした姿で、僕たちにさらに追い打ちをかけるような言葉を吐く。
「…っ?」
不意に横を誰かが通り過ぎていくのを感じて顔を上げる。僕たちとは逆側の舞台袖に誰かが走っていった。
1人は…蒼空さん?
もう暗くなった舞台袖を注視しても誰かははっきりと見えない。
「……椚先生。差し出口ですが、意地悪が過ぎますよ。僕も僕なりに、それぞれのユニットの投票数を計算しましたが」
「へぇ意外。暴君が自分のランクをぐらつかせるの?」
「まぁ、僕は確かに君に暴君とか言われてるけど、悪魔ではないからね。」
「英智。あまり死に急ぎすぎるのは感心しない。俺もこの結果には不満だが、言ってしまえばお前も相当な苦労をする。」
「いいんだ。僕はもう、決めてる。」
周りが気付かないように舞台袖に近づく、わずかに聞こえたその声は紛れもなく会長と、蒼空さんと、黒斗さんだった。
目にも留まらない速さで走っていったのは黒斗さんの手を引っ張り蒼空さんが突っ切っていったからなのかもしれない。
ふとマイクがオンのまま佐賀美先生が喋りだす。
「えっ、何?あきやーん、投票結果に嘘ついたの?駄目だぞ不正は!皆さーん、ここに悪徳教師がいます!普段俺がたばことか酒とかしてたら怒るくせにー!」
「ちょっと黙ってなさい、あなたたち!特に陣…!嘘などついておりません!ただすべての事実を開陳する前に、あなた方が勝手にぺちゃくちゃ喚いたんでしょうが…!」
状況がまったく読み込めない。勝手に喚いた?だって僕たちは負けたから。喚きたくなくても喚いちゃうものじゃないの…え?
「えー、お騒がせしました。先ほどの発言を少々ばかり捕捉しましょう。本来ならば、このDDD決勝戦を制したのは順当にfineでした。投票結果がそれを物語っています。fineの投票数はTrickstarを上回っています。」
椚先生の言う通り、ステージに映し出されたスクリーンにはわずかながらにfineが僕たちよりも多く投票されている。わかっていたけれど、それでも、わずかながら。そしてその差はどう考えても…
「今回の決勝戦におけるTrickstarとfineの投票数の差は…惜しくも、ほんの一票分のみですが、この延長戦開催の規定値に達しています」
「え…一票分…!」
単純に凄いと思った。奇跡かと…。たった1人が僕たちに投票してくれたおかげで…。
転校生ちゃんのおかげで!
既に感極まっている僕をよそに会長とfineの面々が話し合っている。
「延長戦は、棄権しましょう。構わないかい、渉、桃李、弓弦…?これを僕の、最後の我儘にするよ」
「えぇ。会長様がそうお望みなら、わたくしは従うのみです。坊ちゃまもよろしいですね?」
「よ、よろしくない!えぇぇぇ!?何を言っちゃってんの会長っ、それってつまり結局ええっと…?」
酷く混乱している姫宮くんに僕もつられて疑問符を頭上に何個も浮かべる。高笑いしながら日々樹先輩がマイクも入ってないのに相当な声量でAmazingと言い出す。
「えっ…?えっと?嘘っ、どうしてそうなるの?誰か説明して!」
呆気に取られた顔で問いかける明星くんに何一つ取りこぼすことなく氷鷹くんが説明してくれる。僕もそれになんとなくしか理解できないけれど衣更くんや氷鷹くんの様子につられてふつふつと実感がわいてくる。
「君たちに投票してくれたすべての観客に、応援してくれたすべての人に、感謝の言葉を述べるといいよ。君たちは、アイドルなのだろう?」
今度こそ嬉しそうに笑う会長は一歩下がる。かなりふらついていたのを伏見くんが支えていて奥から酸素マスクみたいなのを渡されていた。間違いなく黒斗さんの手で。皇帝と恐れられている会長でも、黒斗さんにとっては大事な友人なんだろう…周りの目を気にも留めず半ば強引に裏へと連れて行こうとしている。
「黒斗さん!」
「え…うわ…ま、真!?」
半分ほどステージに入り込んでいるのすら嫌なのか息が荒くなっている、もしかしてまた自分より他人を優先してここにいたせいで…。
「む、無理しないでください!というか!本当に僕たちは勝ったんですか?」
「うわーぁ、まこたん無理しないでって言いながらさらにステージ側に黒斗引っ張ってる。やめたげて…!あの暴君の次は黒斗が倒れるから!」
明星くんが、S1と同じようにみんなをステージへと招く。今度こそ、黒斗さんも一緒に!
「アンコールの一曲を、声を合わせて元気よく!」
明星くんの声にひかれるように蒼空さんが一歩ステージに入り込む。黒斗さんは嫌々と首を振っている。
「は?おお俺も?いいっての、ほら蒼空行ってこい!俺…倒れ、るぞ」
「うーん、倒れたら俺が看病してやるからさ。ほら、かーわいいTrickstarの連中に誘われてるんだし行こうぜ?」
「ままままて!女も上がってきたぞ!」
「…もう、たまには僕の我儘聞いてください!」
しびれを切らして思いっきり黒斗さんを引っ張る。もう片方の手は蒼空さんに支えられるように引っ張られて黒斗さんは強引ではあるが、もう一度…ステージに立つ。
みんなを招くように身を乗り出していた明星くんが満足げに手を挙げる。
「夢ノ咲学院のステージだっ!どれだけたくさんの人数を、夢を乗せても大丈夫っ!青春とか友情とか希望とか、たっぷり詰めきれないほど詰め込んで、みんなで並んで、手を繋いで歌おう!」
「手!?ががが学芸会かよ…」
「もう黒斗ってば焦りすぎ。俺と立ってた時こんなんじゃなかったのになー?」
「うるさい馬鹿野郎!真!お前俺の前に立ってろ!」
「ぅええ!?僕より黒斗さん立ってた方がお客さん喜びますって!」
僕を頼る黒斗さんを見るのは正直初めてでどうすればいいかもわからなかったけど、すごく嬉しかったし何より面白かった。
「みんなもう散々聞いただろうから覚えてくれてるでしょ?俺たちの最新曲、とっておきの歌!ONLY YOUR STARS…!」
これ以上ない嬉しさと楽しさで今なら何でもできそうなほどの思いで歌を歌う。
僕たち、本当に勝ったんだ!そしてこれからもっと大きなステージに向けて輝いていくんだ!
「みんな、本当にありがとう!!!」
Congratulation!
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