彼がステージに上がる時
What is your name?
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
20
「黒斗さんっ!?…う"ぐ!?」
「ウッキ~?」
「ごほっ、う、喉につまっ…」
「なんだよ急に…ほら背中さすってやるから落ち着け…」
溜め息を吐きながら衣更くんに背中をさすられる。4回戦目を終えて無事、一歩ずつ決勝戦へと向かっている僕たちは、準決勝に向け休息していた。
誰かさんのせいで数日まともに食べていなかった僕は放り込めるだけ口に放り込んでいたがそれが仇となる。
「はーっ、ありがとう。っじゃなくて!衣更くんも明星くんもこれ見て!!さっきの流星隊のことも驚きだけど!」
パソコンをくるりと2人の方へ向ければ2人は正直にパソコンの画面を見てくれる。最初は疑問符を浮かべた衣更くんの顔が今では目を見開き驚きを隠せないようで明星くんに関してはあまり重大さは飲み込めていないもののその画面越しのパフォーマンスに釘付け。
「こ、これ…間違いなく黒斗さん?」
「黒斗さんって、やっぱり凄い…!ホシノ先輩もキラキラしてる!!」
僕も正直信じられない。でもこの躍りとこの歌と、そして間違えようもないあの眼帯は彼であると主張している。
黒斗さんのパフォーマンス、見たかった。それが例えfineに一歩届かなかったとしてもそんなこと関係ない。
事実、負けたというより延長戦を辞退した。と記載されている。
「黒斗さん、辛かったのかな。」
今はどこにいるかわからないけれど、きっと心身共に疲れきってるに違いない。
「蒼空さんもきっと…」
間違いなく、不完全燃焼だろう。悪く言うつもりはないけれど、それでも黒斗さんがいなければきっと蒼空さんは延長戦が何回あっても挑んでいただろうし、今回のDDDが個人でもいいならなおさらだ。でもそうなれば、黒斗さんはステージに立つ決意をすることもなかったかもしれない。
「最後に黒斗さんにあったのは確か…一週間くらい前…?それからはずっと…」
「ウッキ~は本当にずっと監禁されてたんだ!」
その話はしたくない…。これで僕のトラウマが増えちゃったなぁ~なんて。それこそ黒斗さん探してでも慰めてほしいところだけど黒斗さんは黒斗さんで大変だろうし。
にしても、さっき2winkの2人も伝えに来てくれたけど、もしかして黒斗さんたちも生徒会長の、fineの体力を削るために戦ったのかな…。
「……」
僕は夢中になって動画を見る。何度も。fineの戦略を見るにしても僕たちと似たユニットである限り、もはや実力勝負にしかならないのは百も承知。せめてどこか自分たちでもできるようなパフォーマンスを研究できれば。
「ん…黒斗さん?」
ふと見つけた普通なら見落とす点。いや、どちらかと言えば気にしなくていい点。黒斗さんが何か喋っている。それも普段ならあり得ない優しい暖かい笑みで。
「んー、」
巻き戻し、流し、また巻き戻し。
「どうしたんだ?真。」
「えっ、あ、いや…あれ?明星くんは?」
急に声をかけてくる衣更くんに驚き検討違いな質問を返してしまう。
「あぁ、転校生とまたなんか食べれるもん探しに…。あいつもよく食うよなぁ…」
あはは、なんてわざとらしい苦笑いをこぼしながら画面をちらりと見る。すると衣更くんは遠慮もなしに横からパソコンを覗き込んでくる。
「何か為になりそうなの見つかったか?」
「えぇえ!?」
ちょうど一時停止していた画面は黒斗さんが何か喋る直前の場面。恐る恐る衣更くんを見ると…。
「真ってほんと黒斗さん好きだよなぁ…!」
けらりとおかしそうに笑う衣更くん。えぇそれ引いてるの?感心してるの?
「好きとかじゃなくて…これ…、何か黒斗さん喋ってて。」
「どれどれ…?再生してみていいか?」
「うん。」
改めてじぃっと2人でパソコンを見つめる。そして衣更くんもなぜかやる気になったのか巻き戻しを繰り返す。
「うーん、この雰囲気だとありがとう。は何となく察することはできるけど、その後わかんないな」
「えっ、ありがとう。って言ってるのこれ!?」
「俺よりたくさん見てたのに…。にしてもこれ、なんて言ってんだろうな」
「口の動きとしては…いの段、うの段、いの段。だよね」
何をこんなに2人で必死になっているのか再度動画を再生する。マイクにはその言葉が入ってないことを考えると口パクで言っている。
「ファンサービスだって言っても…黒斗さんあまりそういうのしない性格だよな?」
「あ!まこたーん!まおまおー!」
「あれ?もしかして蒼空さん?」
やっほー!と軽快に走ってくる蒼空さん。相変わらず元気でなんなら僕たちの残りわずかな体力も持っていかれそう。
「蒼空さん、4回戦お疲れさまでした。」
衣更くんが丁寧に挨拶をしていると途端に前髪を留めているピン留めを取る蒼空さん。
「ええっ!ちょっと!?俺たちまだこれから準決勝が!」
「んー、知ってる知ってる。セットしてあげるってことだよ」
「先に口で言ってくださいよ」
呆れる衣更くんにまぁごもっともだよねと同情しながら画面を見る。見たところで解決はしないけれど。
「あー、俺たちの…4回戦目の見てるんだ?」
「いや、パフォーマンス見てるって言うよりは黒斗さんの謎の口パクを解読してます。」
衣更くんと蒼空さん2人揃って僕のサイドからパソコンを見ながら会話をする。
口パク?と一言呟くと慣れた手付きで勝手に動画を再生する蒼空さん。蒼空さんなら何か知ってるのかな?
「…あー、」
何か閃いたのか、あまり気乗りしない反応を示す蒼空さんに自然と首を傾げる。
「ありがとう。泉」
「へ?」
蒼空さんが突如発した一言に僕と衣更くんは声を揃えて聞き返した。
「この4回戦目にせなたんが来たの。せなたんは黒斗のこと大っ好きだからなー。それで応援してたからだと思う。ちなみに今は2人で講堂近くのベンチにいるよ」
「そ、そうですか…なるほど?」
衣更くんになるほどじゃないだろ。と軽く小突かれるもどうしたら正解なのかわからず黙るしかなかった。泉さんと黒斗さん、仲良いし。まぁ、そうだよね。
「まこたん落ち込んでるのか?落ち込んでるだけじゃ恋は実らないぞーなんちゃって。とにかくほら、準決勝?頑張れよ。ここまで来たら決勝いかないと、いや、優勝しないと殴るからな!」
「こっ、恋じゃないです!あと蒼空さん本当に殴りそうなんでやめてください…」
「蒼空さん、見に来てくれるんすよね?」
「んー、黒斗次第!あいつが元気で、大丈夫そうだったらな。」
無理させたから。と小さく呟く蒼空さんの目はいつもと違って真剣な眼差しだった。けど、少し遠くから手を振り再度頑張れと念を押す蒼空さんはいつも通り陽気な蒼空さんに違いはない。
「うーん、口パクはわかったけどなんか微妙な心境…」
「やっぱ恋だな。」
「いいい衣更くん!そういうのは言わないで!あっ、明星くんたちにも内緒だからね!?」
「はいはい。ったく、女子みたいな反応だな。まぁ、そういう女子にあったことないけど」
パソコンで流れる動画を見ながら衣更くんの言葉を聞く。うーん、こうして画面越しにとか女々しいことしてるから、否定できないなぁ。少女漫画みたいな…。
「帰ってきたぞー!ほら、ウッキ~!サリ~!なんか食べる?飲むものも買ってきた!」
「おう、転校生もさんきゅ、とりあえず水分だけは取っておくかな。スポドリあるか?」
「もっちろーん!ウッキ~は?」
「へっ、あー、僕はなんでもいいよ!」
ぎこちない笑みを浮かべて溜め息を吐く。まぁここでどれだけがっかりしても変わらないけど。やっぱり泉さんと黒斗さんの間にはなかなか入りにくい。単体ならそれぞれ好かれてはいるんだけど…内1名は歪んだ愛だけど…。
黒斗さんは昔から格好良かったし今でも憧れ。それが少し成長して恋愛感情にランクアップしたんだけど。
「おー、やっと見つけた」
「あ、れ?佐賀美先生?」
「こんなところでわいわいやってる場合じゃないぞー。準決勝の場所が講堂に変更になってんぞ」
「ええっ?そんな情報どこにも!」
「な、なら早く向かわないとだろ!真、今はパソコンとか片付けてる場合じゃないぞ!?」
「わ、わかってるよー…!!」
NEXT::
長編TOPへ戻る
「黒斗さんっ!?…う"ぐ!?」
「ウッキ~?」
「ごほっ、う、喉につまっ…」
「なんだよ急に…ほら背中さすってやるから落ち着け…」
溜め息を吐きながら衣更くんに背中をさすられる。4回戦目を終えて無事、一歩ずつ決勝戦へと向かっている僕たちは、準決勝に向け休息していた。
誰かさんのせいで数日まともに食べていなかった僕は放り込めるだけ口に放り込んでいたがそれが仇となる。
「はーっ、ありがとう。っじゃなくて!衣更くんも明星くんもこれ見て!!さっきの流星隊のことも驚きだけど!」
パソコンをくるりと2人の方へ向ければ2人は正直にパソコンの画面を見てくれる。最初は疑問符を浮かべた衣更くんの顔が今では目を見開き驚きを隠せないようで明星くんに関してはあまり重大さは飲み込めていないもののその画面越しのパフォーマンスに釘付け。
「こ、これ…間違いなく黒斗さん?」
「黒斗さんって、やっぱり凄い…!ホシノ先輩もキラキラしてる!!」
僕も正直信じられない。でもこの躍りとこの歌と、そして間違えようもないあの眼帯は彼であると主張している。
黒斗さんのパフォーマンス、見たかった。それが例えfineに一歩届かなかったとしてもそんなこと関係ない。
事実、負けたというより延長戦を辞退した。と記載されている。
「黒斗さん、辛かったのかな。」
今はどこにいるかわからないけれど、きっと心身共に疲れきってるに違いない。
「蒼空さんもきっと…」
間違いなく、不完全燃焼だろう。悪く言うつもりはないけれど、それでも黒斗さんがいなければきっと蒼空さんは延長戦が何回あっても挑んでいただろうし、今回のDDDが個人でもいいならなおさらだ。でもそうなれば、黒斗さんはステージに立つ決意をすることもなかったかもしれない。
「最後に黒斗さんにあったのは確か…一週間くらい前…?それからはずっと…」
「ウッキ~は本当にずっと監禁されてたんだ!」
その話はしたくない…。これで僕のトラウマが増えちゃったなぁ~なんて。それこそ黒斗さん探してでも慰めてほしいところだけど黒斗さんは黒斗さんで大変だろうし。
にしても、さっき2winkの2人も伝えに来てくれたけど、もしかして黒斗さんたちも生徒会長の、fineの体力を削るために戦ったのかな…。
「……」
僕は夢中になって動画を見る。何度も。fineの戦略を見るにしても僕たちと似たユニットである限り、もはや実力勝負にしかならないのは百も承知。せめてどこか自分たちでもできるようなパフォーマンスを研究できれば。
「ん…黒斗さん?」
ふと見つけた普通なら見落とす点。いや、どちらかと言えば気にしなくていい点。黒斗さんが何か喋っている。それも普段ならあり得ない優しい暖かい笑みで。
「んー、」
巻き戻し、流し、また巻き戻し。
「どうしたんだ?真。」
「えっ、あ、いや…あれ?明星くんは?」
急に声をかけてくる衣更くんに驚き検討違いな質問を返してしまう。
「あぁ、転校生とまたなんか食べれるもん探しに…。あいつもよく食うよなぁ…」
あはは、なんてわざとらしい苦笑いをこぼしながら画面をちらりと見る。すると衣更くんは遠慮もなしに横からパソコンを覗き込んでくる。
「何か為になりそうなの見つかったか?」
「えぇえ!?」
ちょうど一時停止していた画面は黒斗さんが何か喋る直前の場面。恐る恐る衣更くんを見ると…。
「真ってほんと黒斗さん好きだよなぁ…!」
けらりとおかしそうに笑う衣更くん。えぇそれ引いてるの?感心してるの?
「好きとかじゃなくて…これ…、何か黒斗さん喋ってて。」
「どれどれ…?再生してみていいか?」
「うん。」
改めてじぃっと2人でパソコンを見つめる。そして衣更くんもなぜかやる気になったのか巻き戻しを繰り返す。
「うーん、この雰囲気だとありがとう。は何となく察することはできるけど、その後わかんないな」
「えっ、ありがとう。って言ってるのこれ!?」
「俺よりたくさん見てたのに…。にしてもこれ、なんて言ってんだろうな」
「口の動きとしては…いの段、うの段、いの段。だよね」
何をこんなに2人で必死になっているのか再度動画を再生する。マイクにはその言葉が入ってないことを考えると口パクで言っている。
「ファンサービスだって言っても…黒斗さんあまりそういうのしない性格だよな?」
「あ!まこたーん!まおまおー!」
「あれ?もしかして蒼空さん?」
やっほー!と軽快に走ってくる蒼空さん。相変わらず元気でなんなら僕たちの残りわずかな体力も持っていかれそう。
「蒼空さん、4回戦お疲れさまでした。」
衣更くんが丁寧に挨拶をしていると途端に前髪を留めているピン留めを取る蒼空さん。
「ええっ!ちょっと!?俺たちまだこれから準決勝が!」
「んー、知ってる知ってる。セットしてあげるってことだよ」
「先に口で言ってくださいよ」
呆れる衣更くんにまぁごもっともだよねと同情しながら画面を見る。見たところで解決はしないけれど。
「あー、俺たちの…4回戦目の見てるんだ?」
「いや、パフォーマンス見てるって言うよりは黒斗さんの謎の口パクを解読してます。」
衣更くんと蒼空さん2人揃って僕のサイドからパソコンを見ながら会話をする。
口パク?と一言呟くと慣れた手付きで勝手に動画を再生する蒼空さん。蒼空さんなら何か知ってるのかな?
「…あー、」
何か閃いたのか、あまり気乗りしない反応を示す蒼空さんに自然と首を傾げる。
「ありがとう。泉」
「へ?」
蒼空さんが突如発した一言に僕と衣更くんは声を揃えて聞き返した。
「この4回戦目にせなたんが来たの。せなたんは黒斗のこと大っ好きだからなー。それで応援してたからだと思う。ちなみに今は2人で講堂近くのベンチにいるよ」
「そ、そうですか…なるほど?」
衣更くんになるほどじゃないだろ。と軽く小突かれるもどうしたら正解なのかわからず黙るしかなかった。泉さんと黒斗さん、仲良いし。まぁ、そうだよね。
「まこたん落ち込んでるのか?落ち込んでるだけじゃ恋は実らないぞーなんちゃって。とにかくほら、準決勝?頑張れよ。ここまで来たら決勝いかないと、いや、優勝しないと殴るからな!」
「こっ、恋じゃないです!あと蒼空さん本当に殴りそうなんでやめてください…」
「蒼空さん、見に来てくれるんすよね?」
「んー、黒斗次第!あいつが元気で、大丈夫そうだったらな。」
無理させたから。と小さく呟く蒼空さんの目はいつもと違って真剣な眼差しだった。けど、少し遠くから手を振り再度頑張れと念を押す蒼空さんはいつも通り陽気な蒼空さんに違いはない。
「うーん、口パクはわかったけどなんか微妙な心境…」
「やっぱ恋だな。」
「いいい衣更くん!そういうのは言わないで!あっ、明星くんたちにも内緒だからね!?」
「はいはい。ったく、女子みたいな反応だな。まぁ、そういう女子にあったことないけど」
パソコンで流れる動画を見ながら衣更くんの言葉を聞く。うーん、こうして画面越しにとか女々しいことしてるから、否定できないなぁ。少女漫画みたいな…。
「帰ってきたぞー!ほら、ウッキ~!サリ~!なんか食べる?飲むものも買ってきた!」
「おう、転校生もさんきゅ、とりあえず水分だけは取っておくかな。スポドリあるか?」
「もっちろーん!ウッキ~は?」
「へっ、あー、僕はなんでもいいよ!」
ぎこちない笑みを浮かべて溜め息を吐く。まぁここでどれだけがっかりしても変わらないけど。やっぱり泉さんと黒斗さんの間にはなかなか入りにくい。単体ならそれぞれ好かれてはいるんだけど…内1名は歪んだ愛だけど…。
黒斗さんは昔から格好良かったし今でも憧れ。それが少し成長して恋愛感情にランクアップしたんだけど。
「おー、やっと見つけた」
「あ、れ?佐賀美先生?」
「こんなところでわいわいやってる場合じゃないぞー。準決勝の場所が講堂に変更になってんぞ」
「ええっ?そんな情報どこにも!」
「な、なら早く向かわないとだろ!真、今はパソコンとか片付けてる場合じゃないぞ!?」
「わ、わかってるよー…!!」
NEXT::
長編TOPへ戻る