フルーレくん
お友達
『おはようフルーレ』
「おはようございます、主様。今日もお着替えのお手伝いをさせていただきますね」
『いつもありがとう…まだちょっと恥ずかしいけど…』
「もう、主様。全部俺に任せてくれて良いのに」
『私の元の世界では素肌を他の人に見せるのは羞恥心があるのよ…』
「執事相手に羞恥心持たなくて大丈夫ですよっ!俺に下心を疑うのなんて主様くらいですっ」
頬を膨らませて不満そうにフルーレが言う。
それでも異性に着替えさせてもらうなんて想像しただけで恥ずかしいし、なかなか受け入れがたい。
「うん、俺の選んだ服はやっぱり主様に似合いますね。素敵です。もっとおしゃれになるように髪のセットと装飾品を付けますね」
『お願いします』
毎朝こうやって誰かに支度をしてもらうのにやっと慣れてきた。
フルーレのブラッシングや顔や首のマッサージが心地よくも感じてきて毎朝の楽しみでもある。
『フルーレは…おしゃれとか気を遣ってて詳しくて…私よりも女子力高いよね、素直にすごいと思う』
「女子力…?俺は、身だしなみは常識だと思っているだけです」
『ごめんね、女の子扱いしてるわけじゃなくてね。元の世界では女の子の方が美意識高くてね、それに合わせようとするのがいつもしんどくてね……』
「…主様の世界はいつも辛いことが多いですよね」
『…こっちの世界は天使狩りとか争いとか、物騒なものが多いけど…元の世界は…なんて言うんだろ人の貶めあいみたいな…暴力より人と人との心理戦でいかに相手を蹴落とすかみたいな……人間関係に疲れるかなぁ…』
「主様、毎日お疲れ様です。疲れた時はいつでもこっちに来てくださいね。ここの執事たちは主様の世界のような主様を貶めようとするような奴はいません。俺を、いつでも頼ってください。俺は、いつでも主様の味方です」
『ふふ、毎回思うけどフルーレと執事と主の関係じゃなくて友達だったらよかったのに』
「…っあ、主様が望むなら…俺、俺は…今以上の関係になりたいです…」
『ありがとう、フルーレ。ふたりきりの時だけでももっと肩の力を抜いて接してくれたら嬉しいかな』
振り向いてフルーレの頬に手を当てる。顔を真っ赤にしながらも微笑むフルーレ。
「主様…俺は他の執事よりも主様と親密でいてもいいですか?」
『うん、嬉しいな。こっちの世界で初めて友達ができた』
「俺も嬉しいです!」
お互いに微笑みあうふたり。
こんな平和な時間がいつまでも続けばいいのに。
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