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ラトくん




壊したい







「ミヤジ先生」


「ん?どうかしたかい?ラトくん」


「どうして主様は壊してはいけないんですか?」


「……主様はラトくんにとって大事な人ではないのかな?」


「…いえ。私にとっても主様は美しくて大事な方だとは思います。ですが、そんな主様だからこそ、私は壊してみたいと思ってしまうときがあります」


「ラトくん、壊してしまうと修復できるものもあれば、もう2度と戻らないものがあるんだ」


「…はい」



私の疑問にいつも優しく答えてくれるミヤジ先生。私にとって大切な人のひとりです。
ですが今回はそれ以上はミヤジ先生も何も言わなくなってしまいました。
自分で考えようってことなのでしょうか。私にはわかりませんが私にとっての主様を考えなくてはならないのでしょうか。



「私にとっての主様…」


『え?なにか言った?』


「…主様」



主様のことを考えているとたまたま近くにいたのかひょこっと部屋から顔をのぞかせる主様。いつものニコニコとした表情で私のことみつめてくる瞳は本当にきれいだと思います。



「クフフ…いえ。主様にお会いしたかっただけです」


『時間があるならお散歩でもする?』


「いいですね、パセリ畑に行こうとしていたんです」



ふたりで中庭の方へと向かう途中も綺麗に咲いた花を見て微笑んでいる主様。花も美しいですが私には主様の方がもっと美しいと思えます。
美しいままの主様でいてほしい。もしこんな主様が汚れるときが来るのだと思うと、
手が勝手に主様の首元に吸い込まれるように動きます。



『ラト、今日もアモンの中庭はきれいだねぇ』


「…っそうですね、主様」



どうして、私は主様が壊したくてたまらないのでしょうか



『わ!一面パセリ!』


「幸せな光景ですね。大きく育ちました」


嬉しさがこみ上げて微笑むと、私の顔をじっとみる主様。



「主様もパセリが咲いて嬉しいですか?」


『ラトが喜んでるところ見ると、本当にうれしそうだなって思えて』


「フフッ…どういうことなのでしょう、主様」


『ラトが嬉しそうだと私も嬉しいってことかな』


「私が…嬉しそうだと、主様も…嬉しい……」



主様の言葉を繰り返す。
ふと、疑問が浮かんで主様に問いかける。



「私は主様を壊したいです。主様も私にそう思いますか?」


『えぇ?私はラトに壊れてほしくないよ。ラトにはいつも笑っていてほしいし、発作も早く治してあげたいって思うもん。幸せであってほしいかな』


「どうしてそう思うんですか?」


『どうしてって……わ、私にとってラトは特別だもん…』


「特別…」


『そうだよ、ラトの楽しそうな姿とか…笑顔とか…ちょっとたまに怖くなるけど…そういうところもふくめて…す、好きだから…』



主様と私の感覚が違うことがわかりましたが、ひとつだけ確かなのは。


「主様も私のことを好きでいてくれてるんですね」


『え…主様もって…』


「クフフ…ッ。私も主様と同じような感覚を持てるように頑張りますね」


壊したら元には戻らない。
なら、主様と同じように私も主様の形で幸せになれるようにしましょう。











「ミヤジ先生」


「おや、ラトくん。いつもに増して元気そうだね」


「はい。以前の私とは違いますから…」


「主様のおかげかい?」


「…そうですね。そうかもしれません」


「…(最近は天使や悪い人たち以外の人に壊したいって言わなくなったが…きっとこれも主様のおかげだろう)」



今日も、主様と過ごす時間が楽しみです。




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