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バスティンくん




1番かっこいい




バスティンが魔導服に飲まれそうになったあの日から数日が経った。
屋敷内は新たな天使の出現にバタバタとしていたが、私はひとつの出来事が落ち着いたことに安心していた。

だが、あの時に見たバスティンの心の中。
いつも無表情ながら芯をしっかりと持ったバスティンの涙を流す姿が頭から離れなかった。

戦友であり親友であった仲間の死。

それに自責を感じて深く絶望をしていたことを知ってしまったのである。本人はあれからどこか吹っ切れたような表情をしているが…。



「主様」


『…あっバスティン。どうしたの?』


「…いや、今回は主様が助けてくれたおかげでこうしてまた俺はここに立てている。ありがとう」


『…私は何もできていないよ』


「…ジェシカもきっと、主様のことを知ったら安心してくれると思う」


『バスティンの気持ち、きっと届くよ』


私がそう言うとバスティンが柔らかく微笑んだ。
バスティンの表情がこんなにも表れると別人のようにも見えてしまう。


「俺も前に進むために強くなる」


『うんうん、歩き出すことをやめなければ進むもんだよ』


「っふ。確かにな」


『またバスティンが止まったら私がバスティンをもう一度呼んであげるし。ロノもいるよ』


「…アイツはもういい」


『あはは!バスティン。過去に何があったって、私はこうしてバスティンと出会えたことが嬉しいし、良かったと思えるよ』


「ああ。俺も主様と出会えてよかった。主様でなければこうはならなかったと思う」


『…私も、みんなとここで過ごせて本当に良かったな、って思えるよ』



思い出を振り返るように部屋の中を見渡す。
すっかりこの屋敷にもたくさんの思い出と記憶が刻み込まれている。
ほんのすこし前までは夢の中じゃないかって思っていたのが遠い昔のように感じる。



「主様。俺のこの命、主様のためにある。命を懸けて守ることを誓おう」


『そ、そんな大げさな…私は忠誠を誓うためにみんなの力になってるわけじゃないよ。みんなに幸せになってほしい。悪魔執事として生き続けるんじゃなくてそれぞれ自分の人生を歩んでほしいの』


「…なら、俺は一生主様のそばにいよう。執事としても。ひとりの男としても。俺は主様に慕え、愛し続けると約束しよう」


『…!そ、それ意味わかってんの?!』


「当たり前だ。主様が俺の人生を変えてくれたからな」


至って当たり前だ、と言わんばかりにこっちをまっすぐに見るバスティンにこれ以上の説得は無駄だとわかった。
食べることと寝ることしか考えて無さそうなバスティンでもちゃんと自分の意思は貫くのはもうわかりきっている。



『後で後悔しても知らないからね』


「ああ。それはないから安心してくれ」


『…もう…』



こんなかっこいいプロポーズを受けちゃったら断るに断れないよ。



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