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ロノくん








「おれ…俺、悔しいです…なんで…なんであんなことを言われなくちゃならねぇんだよ…」


『うん…私もそう思う…』


「ハウレスやボスキさんだって…いつも命がけで天使と戦って怪我をすることも多い…バスティンだって悪魔の力に飲まれそうになりながらも今でも頑張ってるのによ…他の執事だって……俺だって……」


『うん……うん…私は知ってるよ。私はわかる…みんなのことを一番近くで見てきたもの』


「主様…」



今にも泣きそうな顔のロノがこちらをみた。唇が血で赤く染まっている。相当に悔しかったんだろう。
ぎゅっとロノの頭を抱きしめる。絶望を経験して悪魔執事になっても街の人たちを守る使命を担っている心の優しいこの人たちを、なぜ知ろうともせずに平気で言葉のナイフで傷つけることができるのだろう。
もうやめて、これ以上この人たちを傷つけないで。私の大切な人たちにそんな言葉をぶつけないで。大好きなロノの笑顔を奪わないで。



『私は…私はロノが街の人たちのために動いているの知ってるよ…飢えていた子供たちに料理を振舞ったり、貧しい人たちに料理を配ったり……天使だって誰よりも倒そうと奮闘してるのも…日々のトレーニングだってバスティンと張り合ってても誰より努力して強くなろうとしてるのも…知ってるんだから…!』



「……」


『私は…!私はロノが大好きだよ…いつも執事として振舞えないラフなところも、みんなのためを思って料理してるところも、私にいつも向けてくれる元気になれる笑顔も、気が利かなくても私のために動いてくれるところも……全部、全部私の好きなところ』


「…主様」


『だから…ぐず…こんな…ひっぐ…こんなことで怒ったり泣いたり…じ゛な゛い゛で゛…』


「…ふはっ…主様、ひでぇ顔…」


『…!わだじは…ひっぐ…ロノのためを思って…!』


「…わかってるよ、やっぱ、俺、主様が主様で本当に良かった」


『…ぐず』


「俺、主様が好きだぜ」


『…私も』


「祭り、台無しにしてすみません。花火もここからじゃあんまり見えないですね」


『…大丈夫。ロノがこうして隣で笑ってくれたのと…好きって言ってくれる方が何倍も何百倍も嬉しいし、幸せ』



涙でぐちゃぐちゃになった顔でも笑ってくれるロノ。
どちらともなく自然とふたり寄り添いあって手を繋ぐ。ぎゅっとロノが力をこめるのに、私もぎゅっとし返す。
遠くから花火の音がする。でも、それよりも私の鼓動の方が大きく聞こえる。
ロノの方を見上げるとロノも私に気づいてこちらをみた。そしてだいすきなあの笑顔を見せた。



『帰ろう、みんなが待ってるあの屋敷に』


「はい、主様」



色々な感情になった夏祭り。
でも、ロノとの距離は確実に縮まった。この手の体温をいつまでも感じていたい。この笑顔を私が守りたい。全人類が敵になろうと私だけは悪魔執事達の味方でいてやる。



『…ロノ、私はいつまでもロノの味方だぜ』


「…はは!それ俺の真似ですか?」


『ふふっ…結構似てた気がする』


「へへ、自分で言うんですかそれ」



そんな夏祭りの帰り道。








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