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ラムリくん


お見舞い




とある日、私はいつも通り予定を終えて指輪を付けた。
だが、屋敷はいつも通りだった日常ではなく自室に足を着けた私に待機してくれていたベリアンが心配そうにこう言ったのだ。



「ラムリくんが倒れてしまいました」


と。私はすぐさまルカスの部屋へと走った。
あの元気だけが取り柄のような子が倒れるなんて。




コンコンッ


焦りながらノックをすると中からルカスの返事が聞こえて、食い気味に扉を開ける。
私の姿に一瞬驚くルカスの姿と、ベッドに寝て苦しそうに顔をゆがめるラムリ、付き添いをしていたのかハウレスまでもいる。


『ら、ラムリは?』


「主様…大丈夫ですよ。ちゃんと薬を飲んでもらえればすぐに元気になります」


ルカスの言葉にほっと胸をなでおろす。


「ルカスさん…やっぱりまだラムリは過去に…」


「うーん…そうなんだろうね」


ラムリに駆け寄って声をかける私を見ながらルカスとハウレスが声を小さめに話す。



『ラムリ…もう大丈夫だよ…』










数時間後ー…


「…うう」


「ラムリくん?」


「…ルカス様…僕…」


「ごめんね、君のこの症状を完璧に直せてあげられなくて」


「ううん!前よりも過ごしやすくなったし、苦しい時間よりも楽しい時間が増えて…ルカス様のおかげです!だいすきです!」


「そう言ってもらえたら救われるね、そうだ。主様も心配されていたよ。まだ屋敷の中にいるだろうから呼んでこようか?」


「いえ!僕が行きます!」



ルカスが止める間もなくラムリが立ち上がって部屋を出てしまった。
そのころ私はロノにとあることを頼み込んでいた。



「ま、まじっすか主様…」


『…きょ、今日だけ!』


「いや…それは…」


「ロノ、主様の頼みだ」


「そうは言ってもよ……ラムリさんのためにカエル料理を作ってくれって…」


「っふ…料理人の腕はそんなもんか」


「て、てめぇ…!じゃあお前がカエル取って来いよ、そうしたら料理ができる」


『…じゃあふたりとも頼んだよ!!!!!』


「あ!主様!!」



大きな声でそれだけ頼んで足早にキッチンを去る。
次の目的のために中庭へと走る。
日も暮れてきている中庭も夕日に照らされてまた違った雰囲気を醸しだしていた。



『アモーン、アモンいるー?』


庭園を歩きながらここの中庭の執事の名を呼ぶ。
タッタッと小走りする音が聞こえて目的の人物がひょこっと顔を出した。



「主様じゃないっすか、おかえりなさいませ」


『アモン!探したよ』


「?どうしたっすか?そんなに俺に会いたがるなんて…俺も会いたかったっすよ」


『お見舞い用にお花が欲しいの』


「お見舞い…?もしかしてラムリのっすか?」


『うんうん。起きた時にお花があると癒されそう』


「ラムリがそんなこと思うっすかね…」


『ダメ?』


「主様の頼みとならば、なんなりと?」


『ふふ、ありがとう。私も手伝うから早速作ろう』



そうして私はラムリに届けるための花を探し始めた。
アモンがある程度どれにするか決めてくれたのでそれを少しずつ集めて花束にした。



『ありがとう、アモン!』


「俺の時もそれくらい看病してほしいっすね」


『こら、縁起でもないこと言わないの』


「ははっ冗談っすよ」



手を振ってアモンと別れた。その足はルカスの部屋へと向かう。



コンコンッ


『ルカスっ…あれ?ラムリは?』


「おや?ラムリくんなら先程、起き上がって主様のところへ行くって出ていかれましたよ。入れ違いかな」


『わかった!ありがとう!』


今通った道にはいないから、別の道やリビングなども探し始める。
なかなか見つからない。
まだ探していない部屋となると、私の自室。


『ここにいるかな』


扉を開けると、中からすすり泣く声が聞こえた。そしてその声にはここ覚えがある。


『ラムリ?』


日も落ちかけてうす暗い部屋を声がする方に向かって歩く。
私がいつも腰かける一人掛けソファの横にぴったりとくっついて床に座るラムリの姿があった。


「あるじさま…」


『どうしたの?どこか痛む?』


フルフル、と首を横に振るラムリに私も膝を床に付けて彼の手を取る。



「主様も、僕のことを捨てちゃうのかと思うと…すごく悲しくて…僕は…主様のなんの役にもたててなくて…僕はもう…要らない子でしょうか…」


感情で話しているのかぐちゃぐちゃに言葉を発するラムリ。
ポロポロと涙をこぼしている彼の姿を見て思わず抱きしめる。



『ラムリは私にとって必要だよ。ラムリがいるからいつも元気を分けてもらえる。私をいつも喜ばせようとしてくれる、そんなラムリの存在は私にとってなくてはならないものなんだから』


「…本当?」


『うん、本当』


「主様…大好きですっ…」


私の胸元でそういう彼には笑顔が戻っていた。
ここにいる執事達はなにかしら簡単には話せない辛く苦しい過去がある。
ラムリもきっとそういう過去がこう不安にさせているのであろう。


ラムリがいつも私に元気をくれるように、ラムリが不安にならないように私ももっと笑顔にさせなくちゃ。



「主様、これはなんですか?」


『あ、ラムリのお見舞い用に花束をつくったの。あげる』


「わあ、主様ありがとうございます!いい匂い…」


『…やっぱりラムリには笑顔が似合うよ』



その後、ロノが作ったゲコちゃん料理を目を輝かせて食べるラムリであった。




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