ベリアン
交わらない
とある日ー 3階執事部屋
「ルカスさん」
「おや、ベリアン。何か用かい?」
「いえ、最近の研究報告とティータイムでもいかがでしょうか?」
「ちょうど休憩しようと思ってたんだ。ありがたくいただくよ」
主様がいない、ひとりの時間が最近ひどく寂しいです。主様。
・・・
「なるほど……」
「これが天使狩りに有力なのかはまだわかりませんが、現状わかったのはこれくらいですね」
「いやいや、よくここまで調べてくれたよ。ありがとうベリアン」
「ありがとうございます、ルカスさん」
「…そうだ、こっちも聞きたいことがあったんだ」
「なんでしょう?」
「主様は最近元気かい?」
「えぇ…最近はますます魅力的になられて…ふふ、元気に過ごされています」
「そっか、前より屋敷にいる時間が短くなったから会えない日も多くてね。ラムリもナックもまた主様と話したいみたいだからベリアンから伝えといてくれる?」
「…はい。わかりました」
この、モヤモヤはなんでしょう、主様。
『ただいま、ベリアン。天使は今日出た?』
「おかえりなさいませ、主様。本日の天使は少数だったのでハウレスくんとロノくんバスティンくんで怪我無く終わりました」
『そっか。よかった。…ごめん何も食べずに来ちゃったから何か軽食貰ってもいい?』
「ふふ、今日はそんな気がして街で買ってきたケーキがございますよ」
『え!うそ!ベリアンすごいね、やったー!』
私はこの時間が好きです、主様。
・・・
「そうだ、主様」
『ん?』
「先程、ルカスさんが他の執事達が主様とお話ししたいと言っていましたよ。ふふ、主様は本当に人気者ですね」
『確かにー…最近忙しくてここでベリアンと話して帰っちゃってたもんね』
「主様はお忙し方です。……」
お時間がありましたら、ぜひお話してみてはどうでしょう。
なぜか、その言葉が声に出せません。
「……無理にとは言いませんので考えてみてください」
『そうだね、ありがとう。でも専属はベリアンのままでいいからね』
「…っありがとうございます、主様。その言葉だけで幸せになれます」
「主様♪僕、主様のそばにずっといたいな~♪」
『あはは、ラムリそれサボる口実にしそうだね』
「むぅ、これは僕の本心です!」
…主様。とても楽しそうですね。
「主様!…もぅ最近冷たいっすよ~全然遊びに来てくれないじゃないっすかぁ」
『ごめんごめん、アモンなら元気にしてると思ってたよ』
「俺は主様に会いたくて仕方なかったっすよ?」
…すごく、胸が苦しいです。なんででしょう。
「お、主様じゃねぇか。元気にしてたか?」
『ボスキ!わぁ、久しぶりだね。怪我してない?』
「俺がそんなヘマするわけねぇだろ。主様こそまた頑張りすぎてるだろ。ちゃんと休めよ。あと肉も食え」
『あはは、ちゃんと寝てるし、これでもかってくらい食べてるよ』
……。
「あ、主様!!」
『っベリアン?』
「…す、すみません…」
『そんな泣きそうな顔してどうしたの?寂しくなっちゃった?』
「…あ、いえ……そう、かもしれません…」
『ごめんごめん、これからはベリアンとの時間だよ』
「…申し訳ありません。主様のご自由に過ごしてもらってかまいません…私が主様を縛るわけには…」
『…そんな今にも泣きそうな顔して言っても説得力ないよ?』
「…っ…主様が、他の執事と喋ってるのを見ると…最近…変なんです。嫌なんです…多分…」
『うん』
「…私のこと、おそばに置いてもらえなくなるかもしれないことが…怖くてたまりません」
『…うん』
「主様…私には主様が必要です。主様にもそう思ってほしいです…どうしたら、どうしたら私は主様の唯一になれますか…?」
『ベリアンはベリアンだよ?…ベリアンの代わりはベリアンしかでいないし…ケーキが食べたいときに私の生活リズムを把握して用意してくれるのもベリアンだけだし、こうしてやきもち焼いてくれるのもベリアンだけだよ』
「……主様は、ずるいですね」
『…そうかも?』
「私も、これからもっと頑張りますね」
『うん、これからもよろしくね』
私は、主様の唯一には、なれないのはわかっていました。
でも、わかっていても抑えられない程、私は主様を愛しております。
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