ハウレスくん
必死な君
とある日 とある街ー
「死になさい。命のために」
「きゃああー-!!!!」
「た、たすけてくれええ!!!」
街中に叫び声が響き渡る。
天使の出現に街全体がパニックになっているのだ。
「これは…主様!俺の悪魔を解放してください!」
『うん!……ハウレスの力を解放する!』
ハウレスの周りを囲むように風が吹く。
近くで戦闘態勢を整えていたロノとバスティンが走り出す。
「ロノ、バスティン!あまり突っ込みすぎるな!向かってきた天使をまず片付けるんだ!」
いつ見ても天使との戦闘は恐怖心が身体を蝕む。
近くで守ってくれているハウレスのことを信用していないわけではないが、こんなにも争いがおこる経験はあっちの世界ではなかった。
ハウレスも私をかばいながら向かってくる天使に応戦している。
できる限り周りを警戒しながら安全であろう場所へハウレスから離れすぎない距離を保って移動する。
「主様!すみませんもっと奥へ行きましょう!」
『わかった!』
「ロノ!バスティン!奥へ行くぞ!!!」
「はい!」
「わかった」
ロノとバスティンが先陣をきって天使を葬りながら奥へと進む。
足の速い3人についていくのは普通の女子ではなかなかに厳しいものがある。
ハウレスの背中を見失わないようにするのでせいいっぱいだ。
「…!主様!!!」
『…えっ?』
ハウレスがこちらを見て表情を変えた。
その瞬間、自分の体温が亡くなったかのように寒気を感じた。
「死になさい。命のために」
「伏せてください主様!!」
かろうじて聞こえたハウレスの声に何も考えずに頭を守るようにしゃがみこんだ。
頭上でものすごい音がして壊れた機械のような天使の声がする。
「はぁ…っ!く、はぁ…!主様!!大丈夫ですか!?」
『は、ハウレス…ありがとう…大丈夫…』
ハウレスが助けてくれたことに安堵してハウレスの胸元に飛び込む。
自分が無事なことを確認したくてぎゅうと力をこめるとハウレスの戸惑う声が聞こえる。
「あ、主様……えっと、お怪我が無さそうでなによりです。配慮が足りずに申し訳ありませんでした」
『ううん、絶対ハウレスなら助けてくれるって信じてた。だから咄嗟にしゃがむこともできたんだよ』
「信じてくれてありがとうございます。主様」
優しいハウレスの声に今日も自分が生き残ったことを実感する。
「あーっ!ハウレスが主様に抱き着いてる!!」
「なんだと…?」
「ち、ちが、これは…主様に怪我がないか確認してただけだ!」
「これはルカスさんとベリアンさんに報告しないと…」
「やめろロノ!!!」
天使のいなくなった街でハウレスの声が響いた。
助けてくれようとする必死な顔もいいけど顔を赤くしながら必死になる彼の顔もいいなぁ。
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