バスティンくん
不器用の努力
「主様」
『バスティン、どうしたの?』
「いや、困っていることなどないか?」
『…今は大丈夫だけど?』
「そうか…なら疲れてはいないか?」
『…まだ朝だし何もしてないから疲れてないよ?』
「ふむ…じゃあ…」
『だ!だいじょうぶ!今はゆっくりしていたいかな』
最近、私の専属執事が過保護です。
口を開けば何かと私の心配をしてくる。
それは嬉しいことなんだろうけど…朝起きてからこの質問攻めはちょっとしんどい部分もある。
「…」
急に黙り込まれるのも居たたまれない…。
「主様」
『ん?』
「…俺は距離感を間違えているだろうか」
『…そんなことないおもうよ?』
「…俺は主様のためになんでもしたい。だがその気持ちが主様の迷惑になっていないか、とふと思うときがある…」
…あのバスティンからこんな言葉が出てくるなんて…。人って変わるものなのか。
って感心している場合じゃない。なにか返してあげなければ。
『バスティン。少なからず私はバスティンの気持ちを迷惑だなんて思ったことはないよ』
「本当か?」
『バスティンがいつも私のことを考えて心配してくれることは逆にうれしいことだよ』
「…ならよかった。主様も遠慮せずになんでも俺に言ってほしい。主様のためなら俺はなんだってするつもりだ。主様、俺は主様のために…」
『うんうん!ありがとう!』
「すまない…しゃべりすぎてしまった」
大人しくなったバスティンに少しだけ笑ってそのあとはまったりと過ごした。
「主様」
『ん?』
「腹は減ってないか?」
『ん。空いたかも。軽く何か食べたいな』
「わかった。ロノに言ってくる」
数時間後ー
「主様」
『バスティン、どうしたの』
「少し散歩でもしないか?」
『ん、そうだね身体動かそうかな…』
数時間後ー
「主様」
『なに?』
「眠そうに見える。仮眠でもしたらどうだ?夕飯まで時間もある」
『あー…うん、そうしようかな…』
ベッドで横になって思う。最近のバスティンめちゃくちゃ私に的確に声をかけてくれる。
前みたいにがむしゃらに心配をするんじゃなくて私の体調とか生活リズムを完全に把握してサポートしてくれている…。
あの、バスティンが。
ふと横を見る。ベットの近くに腰を掛けて何やら作業をしているバスティンの姿。
『バスティン』
「…どうした?」
『ありがとう』
「ん?俺はなにもしていない」
『言いたくなっただけ』
「…っふ。そうか。俺も主様には感謝している。ありがとう」
表情も柔らかくなって笑顔も見ることが増えたな、とウトウトする思考の中考える。
そのまま眠りについた。
「主様は…夕飯のあとは、すぐに風呂に入るな…フェネスさんに夕飯の前に準備をしてもらうか…そしたら…」
一生懸命書いた主様の生活リズムを記録した用紙とにらめっこをするバスティン。
彼の努力は、ちゃんと私に伝わってるよ。
これからもよろしくね、バスティン。
「…腹が減ったな…」
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