ロノくん
大きな声
『ロノー!』
「おう、主様おはようございます!早起きですね!」
『えへへ、目が覚めちゃった。なにか手伝えることはある?』
「いえいえ!主様に手伝ってもらうわけにはいきません!へへっ!俺の応援をお願いします!」
『わかった!ロノ頑張れ!』
「よっしゃ!やるぞー!っへっへ!」
いつも元気な彼。その笑顔がいつも眩しくて見ていて自分も笑顔になれる。
バスティンといるときは怒った顔をしているけれど、それもまた彼の顔。ハウレスとトレーニングしているときの真剣な表情、それも彼の顔。
いつ見ても、彼の表情を探しては、彼の姿を追ってしまう。
「ロノ!バスティン!街の奥に行く前に片付けるぞ!」
「おう!任せとけ!バスティン!そっちは任せたぞ!」
「言われなくてもわかってる。自分の方に集中しろ」
「んだと!!!お前こそ変なのに気を取られて天使を逃がすんじゃねぇぞ!!」
「お前ら……」
『ロノー!!天使が来てるよーーー!!!』
いつも俺の背中に大きな声をぶつける主様。
主様がここの世界に来て天使狩りについてきてくれるようになってから当たり前のことになっていた。
最初は何事かと思っていたけれど、いつからかその声がやる気となり力となっていた。
命を懸けて戦っているのにも関わらず、主様の声に安心して心落ち着く自分がいる。
「主様、早く帰ってこねーかな。あの声が聞こえないと落ち着かねぇ」
「ロノくん、主様の前でそんな言葉遣いしちゃだめですよ?」
「わーってますよベリアンさん!でも、そう思っちまうんです」
「ふふ、ロノくんと主様は仲が良いですもんね」
「そ、そうか…?へへ、ベリアンさんからはそう見えてるんですね」
「はい、ロノくんといる主様はいつもリラックスしている気がします。今日もお疲れでしょうからロノくんのスイーツを用意して待ちましょう」
「それは良いですね!ベリアンさんも休憩の時に食べてください!」
「ありがとうございますロノくん。紅茶とよく合うので嬉しいです」
主様の声がしない日常は少し…寂しい。
そんなこと今まで考えたことがないくらいに屋敷の中は騒がしかったのになぜか心に穴が開いたように主様が恋しい。
ベリアンさんの提案を参考にティータイムに合うスイーツを仕込み始める。もう身体が覚えているから考えなくても体が勝手に動いている。
「主様ー…俺は主様がいないとダメみたいだ」
『…私もかも?』
「うわっ!?」
ひょっこりと彼の後ろから顔を出して覗き込むと驚いたロノが持っていたボウルを落としそうになる。笑ってボウルを支えるとロノの手と自分の手が重なる。
微笑んでロノを見るとバツが悪そうに頬を指でかいている。
『ロノ!!!』
「はっはい!…どした?」
『私にもロノが必要だよ!ロノのいない生活なんてもう考えらんない!』
そう、俺はこのまっすぐ俺を瞳に映すこの愛しい主様の笑顔が大好きなんだ。この笑顔が見れると心の中が満たされて幸せってやつを実感できる。
思わず俺も笑顔になる。
「いつもありがとうございます!主様!」
『うん!』
俺は、これからも主様の声が届く、その距離で主様と一緒に過ごしたい。
その瞳に俺だけを映して、俺だけに笑顔を向けて、俺を主様で満たしてほしい。
俺も、主様を幸せにしてみせるからよ!
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