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ベリアン



勢い






「おかえりなさいませ、主様。今日も1日お疲れさまでした。もうすぐ帰ってこられるだろうと思い、紅茶と軽食を準備しております」


『ありがとう、ベリアン』


「…主様?何かありましたか?お顔が優れないようですが…」


『…あー…うん。ちょっと、あっちの世界で色々、あって…』


「無理しないでください。泣きたかったら泣いてもいいんですよ」


『あはは…もう、子供じゃないんだから』


「辛いときは泣いても良いんです。大人だからって泣いちゃダメなんて、誰が決めたんでしょうか?」



本当に心配している表情のベリアンが私をソファへと促し、私はソファへと腰かけた。ベリアンが私の前に膝立ちをして顔を覗き込む。微笑んでそっと私の手を取る。



「失礼しますね、主様」


「私はいつでも主様の力になりたいです。必要であればいつでも主様を癒しますし、なんでも話を聞きます。私は主様の執事ですけど、それ以上に私は主様を想い、慕っております」


「主様、私は主様が大好きです。…って私は何を言って…勢いでとんでもないことを言ってしまいました…す、すみません今のは忘れてください…」


真顔で告白してきたかと思えばすぐに顔を赤らめて動揺するベリアン。私は思わず重ねられたベリアンの手をぎゅっと掴んで引っ張る。急なことにバランスを崩したベリアンがこちらに倒れるが私は彼を抱きしめ受け止めた。
私の行動に驚いたベリアンが硬直したのが分かった。
ベリアンの頭をぎゅうっと抱きしめる。


「あ、主様…」


『…ベリアン』


「はい…主様」


『…私も好きだよ』



私の言葉にベリアンがバッとこちらを見た。顔を見られたくない私は彼を腕から解放して自分の顔を覆う。触るとなおわかる私の顔の温度が上昇している。



「主様…」


ベリアンが私を呼ぶ。2回、3回…
そっと顔を覆っている手に触れる。
私が首を横に振る。


「主様…私はどんな表情の主様も見たいです…ひとりの男として…」


ずるい。そんな言い方は本当にずるい。
指の隙間からゆっくりベリアンの方を見る。目が合うとベリアンはにっこりと微笑んでいて、私の手を顔から離してベリアンの手が私の頬にそっと触れる。


『ベリアン…かっこよすぎるのって罪なんだよ…』


「ふふ、主様がかっこいいと思ってくれるのなら私は努力を惜しみませんよ?」


私が目を閉じる。
ベリアンの香りがすぐそばで感じられる。私がいつも心地よくなれる落ち着いた香り。
私の唇に、なにかが触れる。この感触がなにかわかっているからドキドキが止まらない。私の心臓の事情なんか知らずに私の唇をついばむように触れてくる。
ほんの数分がすごく長く感じた。



「……私は執事失格でしょうか…」


『…バレちゃだめだよ、マナー指導係さん?』


「…ふふ、気を付けます」


そういってまたベリアンは私の唇に自分の唇を重ねた。










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