ラムリくん
男の顔
「主様ー!寝るまで僕とおしゃべりしませんかー?」
『わ、ラムリ!お風呂あがって髪乾かしてないの?』
とある日の夜、ラムリが主である私の部屋に飛び込んできた。
私にくっつく彼の髪はびしょびしょのままでほのかにシャンプーの匂いもする。
私の質問にラムリはジトッと唇を尖らせる。
「面倒なんですよー…。タオルでちゃんと拭いたから大丈夫です!」
『もう、大丈夫じゃないよ。風邪ひいたら大変なんだから。私が拭いてあげるから前におすわりして』
「はぁ~い」
大人しくちょこんと私の足元に座るラムリの髪を部屋に置いてあるタオルで優しく拭く。
『痛くない?』
「だいじょーぶです!」
前を向いていたラムリが急に横向きになったかと思うと私の脚にくっついてきた。
水気が無くなってきたラムリの髪は少しずつ元のボリュームが出てきた。
『ラムリ、動いたら拭きづらいよ』
「主様の指がくすぐったいんです!」
『もう、痛くしちゃうよ?』
顔の筋肉がなくなったようにふにゃふにゃ笑うラムリが太ももに顎を乗せてこちらを見上げる。
上目遣いにキュンとしながらラムリの髪を拭き続ける。
『こんなものでいいかな』
「わぁ~髪が乾きました!主様!ありがとうございます!」
『わっ!ちょっと!』
喜んだラムリがそのまま私に抱き着いてくる。いままでは調子に乗ってもここまでのスキンシップはなかったのだが、今日はなぜかラムリの機嫌がいいからか見境がない。
「主様~!僕、主様のことが大好きです!」
『も、もう十分伝わってるよ!』
「いーや主様はわかってません!僕の大好きが伝わってません!」
『そんなことないよっもう!離れてぇ』
私に跨って抱き着いていたラムリが身体を離す。ようやくラムリのシャンプーの香りから解放されて赤い顔を見られまいと顔を反らす。
ラムリは先ほどまで上目遣いだったのが次は見下ろしてる体制になっている。
「僕は、本当に主様が大好きで、このまま主様とキスをしたいです」
『は…?え…な、なに言ってるの…』
「あるじさま…」
いつもの表情とは違う真剣なまなざしのラムリの瞳から目が反らせない。
それはあまりにも唐突で、気づいた時にはラムリに奪われていた私の唇。軽いリップ音が鳴り、少し離れたかと思うとまた食らいつくように重ねられる。
ラムリの心情を如実に表したキスだった。
『ら、ラムリ…』
「髪を乾かしてくれたお礼です!ハウさんやルカス様にいっちゃだめですよ?主様!もう、僕は主様のもので、主様は僕だけの主様なんですから!」
そう言って不敵に笑う彼は、今までの手のかかるような弟ではなく、男の顔になっていた。
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