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ボスキくん




ぶっきらぼうのやさしさ






「主様、失礼するぜ」


『あら、ボスキどうしたの?』


「ボスキさんせめてノックしましょうよ…」



屋敷の自室でくつろいでるとボスキとアモンが訪ねてきた。
いつもの調子のボスキにアモンが呆れたようにこちらに頭を下げた。
そんなこと微塵にも気にしていない私はいつもの調子でボスキに尋ねた。



「主様、俺と街に行かないか?」


『え?街に?ボスキが自分から街に行きたがるなんて珍しいね?』


「いや…ボスキさんが屋敷のインテリアを考えてたんですけど急に主様にも意見を聞くって言いだして…」


「別におかしくはないだろう。主様好みの屋敷にすることは悪いことじゃねぇ」


「そうだとは思いますけど…執事から主様を誘うのはやっぱりダメっすよ…」


「そうなのか?主様。俺は主様ならそんなこと気にせずに答えてくれると思ってるが」


『んー…まぁ確かに私は全然気にしないけど目上の人にはしちゃいけないのかもね?』


アモンがため息を吐いて困り果ててるところを見る限りこれはハウレスかフェネスにも止めるように言われていたんだろうな、とアモンの心中を察する。
だが、最近街へと行っていなかった私は好奇心の方が勝ってしまいボスキ側へとついてしまったのである。



「そうか、これからは気を付ける。それで街へとついてきてくれるか?」


『うん、私は全然いいよ』


「しょうがないから俺もついていくっす。別にいいですよねボスキさん?」


「まぁ…お前は値切りがうまいからついてきて損はないな」


『じゃあ決まりだね。これから支度するけど少し待ってくれる?』


「かまわないっすよ。フルーレを呼びましょうか?」


『あ…お願いしようかな。こっちの洋服はひとりじゃ着づらくって…』


「かしこまりましたっす!少々お待ちくださいっす」



数分後ー…


「お待たせしました主様、お着替えの手伝いをさせていただきますね!」


『お願いしますフルーレ』



フルーレが私に綺麗なドレスを着させてくれる。元の世界では着ないような服なので最初は抵抗があったものの、最近ではコスプレをしている感覚で楽しくなりつつある。
私の好みを伝えてからフルーレがそれに合わせた服を作ってくれているのでそれも嬉しい。


「はい、できましたよ主様」


『わあ!今日もかわいい服をありがとうフルーレ!』


「ふふ、主様はどんな服も似合うので作り甲斐があります」


『そういわれると照れちゃうな』


「これから街に行かれるんですよね、楽しんできてください!」


『ありがとう、お土産買ってくるね』


「お気遣いなく!主様がより楽しめるように使ってください」



フルーレと雑談をしていると、アモンが迎えに来てくれた。
手を振ってフルーレと別れてアモンに連れられて馬車へと乗った。


「主様!今日も素敵っすね!町の人たちに見せるのがもったいないっすよ!」


『ありがとうアモン、フルーレが喜ぶよ』


「服もっすけど、着てる主様がもっときれいになってるてことっすよ」


「アモンはよくそんな歯が浮くようなこと言えるな」


「本当のことっすよ!俺は主様を慕ってるっすから!」


『もう、褒めても何もでてきません!』



このまま話が続くと顔から火が出そうなのでアモンを制止する。
そのままからかわれ続けていると街へと到着した。
ボスキに手を引かれエスコートされると、すごくボスキが紳士的に見える。私の手を重ねているボスキの手は大きくて硬くて日々鍛錬してるのが直接伝わってくる。



「さて…とりあえず家具が置いてあるところに案内してくれ」


「…は?!ボスキさん知らないまま来てたんすか!」


「ああ。アモンが来るなら知ってるだろうと思ったんだがな」


「いつもはどうしてたんすか!」


「ナックにこういった家具が欲しいと伝えてその材料を買ってきてもらって…俺が作る時もあれば…ハウレスに作らせている」


「あー…確かにたまにハウレスさんとフェネスさんで家具作っているときあるっすね…」


『この街大きいし、歩いていればそれらしいお店あるんじゃない?』


「そうっすね、散策しながら探しましょう」


「だりぃな…」


「ボスキさんの用事っすよ!文句言わない!」



アモンがボスキの背中を押して3人で歩き出す。
活気にあふれている街の雰囲気にアモンと私も徐々にテンションが上がっていき、見世物を見物したり、お花を貰ってボスキの髪飾りにしたりと楽しい時間を過ごした。
満喫しながら街も半分を過ぎたところで…


ひそ…ひそ……



「ボスキさん…見つかったっぽいっすね」


「ああ。主様に危害がないようにするぞ」


「はいっす」


『~♪』


アモンとボスキが周りに注意をしている中、家具がありそうなお店を探している私。
すると、テーブルをお店の前に並べているお店が見えた。お店の中にも棚や小さなテーブルが置いてあり目的の場所っぽいことに気づいて後ろを歩いているふたりの方に振り返る


『見てみて!あそこ!!あそこに家具屋さんありそう!』


「え?あぁ、そこに向かおう」


「主様、前見て歩いてくださいね危ないっすよ」


『…!ボスキ…!』


「ぅおっ…!」



ゴッッ



「?!主様!!!主様!!!大丈夫っすか!!!?」


「ッチ…的外したぞ」


「とりあえず、逃げろっ」


「ッチ…!アモン!主様を任せたぞ!!」


「ぼ、ボスキさん…?!ちょ、ダメっすよ!」



ふたりの方を振り向いた私は、ふたりの肩越しに住人2人が大きな石をこちらに向けて投げようとしている姿が見えた。
その標的はおそらくボスキで思わずボスキの前に立ちはだかった。
投げつけられた石は私の頭に直撃し、視界にちらつきが生じた私は足がふらついて倒れた。
アモンの叫ぶ声が聞こえ、私はそこで意識を失った。


















『…ぅ』


「主様?気がつかれましたか?」


『…るか…いったた…』


「起き上がってはいけません。主様、頭に石をぶつけられたそうです。視覚や他に痛みは違和感はありますか?」


『…ボスキ…アモンは…?無事…?』


「…ふたりは無事ですよ。ボスキが犯人を捕まえたそうです。アモンが屋敷に血相を抱えながら運んできたんです」


『よかった…』


「ベリアンがひとり増えたみたいだねぇ…」



安心からかまた眠りについてしまった主様に苦笑いをするルカス。
とりあえず自分に何があったかを理解しているようで脳に異常はなさそうだ。


「おいルカスさん」


「なんだいボスキ?」


「主様は、大丈夫そうか?」


「多分ね、ぶつけたところが頭だからね、もう少し様子を見よう」


「俺がそばにいる。ルカスさんは夕飯を食べに行った方がいい」



先程まで後ろで待機していたボスキが主様の隣へと移動する。
彼の思わぬ行動に目を開いて驚き、すぐにふふっと笑ったルカスがボスキに言われるまま食堂へと向かった。
アモンから聞いた話によると、主様が倒れてから怒りで我を忘れたボスキが犯人の住人ふたりを追い詰めて主様に危害を加えたことを謝らせたらしい。
そしてアモンが屋敷に運んでルカスに診てもらっている間ずっとルカスの部屋で主様の様子を見ていた。
アモンは主様に怪我を負わせてしまったことを泣きながらベリアンに報告をしていたが、ルカスの部屋で主様を見ているボスキもいつもと違った様子を見せていたから彼なりに心のうちに反省していたのだろう。



「ボスキも少しずつ、かわっているんだねぇ」


少しそれが嬉しくもあり寂しくもあるルカスであった。


「主様…すまなかった…。もっと警戒していれば…主様に先に伝えていれば主様がかばうこともなかったんだろうな…いや、主様が優しいのは知ってるから、それでも前に出ていてたか…」


『…ボスキ?』


「っ主様!大丈夫か?」


『…ボスキ、石、ぶつかってない?』


「…俺は大丈夫だ。…あんなのぶつかってもかすり傷だ。主様が怪我をする必要はなかったんだ」


『…それでも身体が勝手に動いちゃった。ボスキ、怒ってる?』


「…怒ってない。ゆっくり休んでくれ、主様。俺のためにありがとう」


ボスキが私の手を握ると本当に無事だったのがわかって笑顔になった。その様子をみたボスキも眉を下げて微笑んでもう一度私にお礼をいった。
ボスキが、私の心配を心からしてくれていたのが伝わる。エスコートしてくれていた手よりも力強く握ってくれて、まるで不安な子供が母親の手を握るようなそんなすがるような力だった。


その後、ルカスさんにもう一度見てもらった私は異常なしと判断されて半泣きのアモンにたくさんたくさん謝られた。
他の執事達も心配してくれてフルーレはアモンとボスキに噛みつくように怒っていた。



「主様、…その怪我が治るまで俺がいろいろ面倒を見る」


『ほんと?助かるなぁよろしくね』


その日からちょっぴりボスキのぶっきらぼうが優しくなりました。
私もそんなボスキに嬉しくて素直に甘えるようにしてます。
ハウレスと目の前で喧嘩し始めるのはちょっと困るけどっ






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