ラムリくん
猫のような彼
「ナックがまじうざいんです主様~!僕を癒してください!」
『あはは、ナックも間違ったことは言ってないんだから…』
「ナックは間違ってるんですよ主様!!僕は休憩してただけなのに…休憩しちゃダメなんですかぁ~」
椅子に腰かけている私の膝に縋りついてくるラムリ。
猫の耳のように上にピンッと跳ねている寝癖が今日は心なしか元気が無い。
私の太ももにほっぺをくっつけてこちらを見上げるラムリの頭を撫でながらなだめているとラムリが気持ちよさそうにふにゃっとわらった。
「主様に撫でられると僕とっても落ち着きます!」
『もう少しゆっくりしたらまたお屋敷のお掃除頑張れそう?』
「はい~主様にまだ撫でてもらいたいので僕頑張りますねっ!」
『う~ん頑張るところずれてるけどまぁいっか』
コンコンッ
『ラムリ、誰か来たから立って立って』
「やだやだ僕このままがいいです!」
「……?主様、失礼します」
話し声がするのに返事がないことに不思議に思ったのかノックした人物は扉を開けて中を覗きこんだ。
そして私の足元にくっついているのを見てバンッと扉を全開にして入ってきた。
「ら、ラムリ!お前はなにをやってるんだ!」
「わわ!ハウさん?!な、なにするんですか~!」
ノックした人物、ハウレスが私にくっついていたラムリの首根っこを掴んで引きはがした。
流石は執事の中で一番の力もち…。成人男性を軽々と持ち上げるなんてすごい…
ラムリはじたばたともがくが怒ったハウレスはそれを許さない。
「主様~!助けてください~!」
「主様、ラムリが大変失礼なことをしてすみません。俺が厳しく𠮟りますのでどうかお許しください」
『あ…ほどほどで大丈夫だよ…』
「主様も、執事の行動に気分を害されたら遠慮なく言ってもらって大丈夫です。本人に言いづらければ俺やベリアンさんやルカスさんに言ってもらって構いません」
「僕にでもいいですよ!主様!」
「お前は黙っとけラムリ!では失礼します主様」
ラムリを担ぎあげたままハウレスは帰っていった。
騒がしかった空間が急に静かになる。
先程まで撫でていたラムリの髪の感触を思い出す。別にラムリの行動でいままで嫌だったことなんかなかったなぁ。
執事として今まで一線を引いて接することが多かった中、ラムリはそんな線を飛び越えて素直に甘えてくれる。
真面目じゃないけど決して私の嫌がることはしないラムリ。誰かに怒られて拗ねて私のところにくるところも、元気いっぱい毎日挨拶してくれるところ、お世辞じゃないんだと思える彼の素直な誉め言葉。
『ハウレスに捕まったらしばらくはラムリ来ないなぁ』
あ、そうだ。次にラムリが来た時に一緒に星でも見ようかな。
屋根の上はさすがに怖いから行かないけど、喜んでくれるかな。
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