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アモンくん



行き違う心






「主様!やっと帰ってきてくれたんすね!待ちくたびれてねちゃおうかと思ってましたよ~」


『えー!ごめん、他の執事呼ぶから寝たかったら寝ていいのよ?』


「…はぁ、主様。ほかの執事呼んだら俺拗ねるっすよ。主様には俺がいるじゃないっすか」


『眠たいんじゃないの?』


「主様が帰ってきたからもう眠くないっすよ!本日もお疲れ様っす主様!今日はどんな1日だったんすか?」



いっつも鈍感な俺の主様。
最初の頃は謎の人物すぎて警戒してたけど、日々を過ごすごとに警戒している方がバカバカしくなってくるほど主様は優しく素敵で魅力的で、言葉で表しきれない程大切なお方になっていたんす。




「へぇ~主様の世界ってすごいんすね」


『すごい、のかな。もう当たり前すぎてそんな感覚ないや』


「でも主様はきっとこっちの世界の方が幸せになれるっすよ、俺がいるんですもん」


『え?』


「なーんて、ね。執事がこんなこと言ったらダメっすよね」


『ふふ、あっちの世界でもアモンと同じようなこと言ってくれる人がいるから』


「…は?」


『どうしようかな、って悩んでるんだ』


「……」



主様は残酷な一面もあるんすね。やっぱりまだまだ俺の知らない主様がいることになぜかむかつくっす。見たことないこの表情も俺に向けてほしかったっす。
今、誰を思い浮かべて何を思って誰にそんなに心奪われているんですか、と問いたい気持ちをぶつけたいっす。



「主様は、あっちの世界の人っすよ」



違う、こっちの世界にいてほしい



「あっちの世界での幸せは選ぶべきっす」



俺が主様を幸せにするっすから



「主様は優柔不断で自分に自信を持てない人っすから俺が背中を押すっすよ!」


やめて、一歩を踏み出さないで


「主様を悩ませている悪い男はどんな人っすか?」


聞きたくない



「…はは、俺ばっかり話してすみませんっす」


主様、俺には主様だけっす






『アモン、いつもありがとう。アモンのおかげでこっちの世界に来ると元気がもらえる。こうして背中をいつも押してくれるから仕事でも趣味でもなんでも頑張ろうと思えるんだぁ』


『私、執事の中では一番アモンが好きだよ、気が合うし気を遣わないで話せるし、一番私のことを理解してくれてる気がする。ふふっここでアモンと出会えて本当に良かったと思えるよ』


『天使狩りも頑張らなきゃね、もらったぶんちゃんと私も力になって返さなきゃ。アモンは最近怪我してない?』




主様、俺主様のために努力したんすよ。誰よりも主様を理解したくてずっとそばにいたし一挙一動を見逃さないようにいつも見てたっす。主様がどうしたら気を許してくれるのかも一生懸命考えたっす。
そこに下心も見返りも求めてないんすよ。この俺が。
それが…どういう意味か主様はわかっているんすか?



「へへ、俺が天使ごときに怪我なんかするわけないじゃないっすか。この屋敷ではまだまだ弱い方ですけど俺も別に弱いわけじゃないっすよ」


『ごめんごめんちゃんと知ってるよ。うん、知ってるよ全部』


「…っ。主様が、俺のことを知ってるわけないじゃないっすか。俺の秘密は高くつくっすよ」



一瞬俺の心を見透かされたような主様の視線に思わず目を反らして口は勝手にしゃべりだしていた。
俺の気持ちを知っているのなら、主様はそばに俺を置かないはずっす。そうだ、だから大丈夫っすよね。
なんで、俺、堂々と主様に好きって言えないんだろう。なんで、ばれないようにしてるんすかね。伝わってほしいのに、伝わってほしくない。



『…もうこんな時間。もう仕事に戻らなきゃ』


「…あ、あるじさま…また、また帰ってきてくれますよね…?」


『…うん、大丈夫だよ。また帰ってくる。またね』


「……いってらっしゃいっす、主様」



主様が指輪を外して元の世界に帰った。 


「俺は、主様が好きっす」


「俺は、主様が好きっす!!!」



「…俺は、」



「…」






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