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ルカスさん








「…!おかえりなさい、主様」


『ルカス、ただいま』



もう当たり前のようになったデビルスパレスへの帰宅。
私が現れたのに気づいたルカスが胸に手を当てて少し頭を下げる。
そして私の前に立つ。



「主様、手にキスをしてもよろしいですか?」


『……う、うん』



そっと私の手を握って胸と平行になる高さまで持ち上げると顔を近づける。
ドキドキとその感触を待つ。
手の甲にルカスの柔らかい唇が触れる。唇同士でもないのに慣れないこの行為に羞恥心が止まらない。



「おや、主様。お顔が赤いですよ?」


『…っこんな習慣私の世界だとないもん』


「私が慣らしてさしあげますので…他の男性に許してはいけませんよ?」


『え?なんで?』


「なんでも、です。ふふ、またこの習慣については教えて差し上げますので今はゆっくりお休みください」


『あ、うん。お腹すいちゃった』


「じゃあロノくんから軽食を用意してもらいましょう」


『やった!』





















「ふぅ……挨拶はこれくらいでしょうか…」


『ルカス!お疲れ様…これ、お水もらってきた』


「おや、主様……そんな、執事のためにそんなことしなくても大丈夫ですよ」


『だめだよ、パーティ始まってずっと挨拶回りしてるしそのたびにワインを飲んでるでしょ、少しはお水で薄めないと…』


「……ふふ、主様に怒られるのも悪くないですね」


『もう!ほら、飲んで飲んで』



少しフラフラしてるルカスにワイングラスに入った水を手渡す。
だが、ルカスは私の手ごと握りしめてそのまま水を飲む。
反動でぐいっと引っ張られてルカスの胸元によろける。



『も、もう…!酔ってる…』


「…主様、手にキスをしてもよろしいですか?」


『え、今?』


「はい、今、したいです」



酔っているからかルカスの金色の瞳が揺れ動く。この瞳に見つめられるとなぜか反らせないのはそれがルカスの魅力でもあり、危険なところなのだろうか。



『…別にいいけど…』


「失礼します」



傅いて私の手を握る。
小さい頃に夢見た王子様のようなルカスに胸がうるさく音を立てる。
ふに、とルカスの唇が当たるとついばむように唇が動く。



『くすぐったい…』


「ありがとうございます、主様。私以外の男性にさせてはいませんよね?」


『こ、こんな恥ずかしいことさせてないよ…』


「なら、良かった。…一曲踊りませんか?」


『私おどれな…』


「私に身を任せていただければ大丈夫ですよ」




握った手を引いてホールの真ん中へと連れ出される。
軽やかなルカスのステップ。優雅に響く演奏。



「お上手です、主様」


『ええええ本当に大丈夫?…わっ』


「1.2…1.2…1.2…のテンポに合わせてくださいね」


『1…2…1…2…』


「ここでターンです」


『ひゃあああ…い、言ってることが違う!』


「ふふ、すみません…主様がかわいらしくて…」



そんなふたりのダンスは無事に一曲終わり、どっと疲れがのしかかる。
悪魔執事たちが集まるところへ戻って椅子に腰かける。



「主様、一緒に踊っていただきありがとうございました」


「主様!とても素晴らしいダンスでしたよ!俺とも今度踊ってください!」


「フルーレ、私とは踊ってくれないんですか?」


「なんでラトと踊らなくちゃいけないの!女性パート踊れるの?」


「クフフ…私がリードするのでフルーレが女性側でいいですよ」


「絶対に嫌だ!」


「こらこら、ふたりとも。主様の前だよ。主様は私がおそばにいるから料理を楽しんでおいで」


「ルカスさん…ありがとうございます!主様、失礼しますね!」


『うん、またね』




賑やかなフルーレとラトが会場の方へと去ると少しだけ落ち着けた。
ルカスが持ってきたジュースを一口飲み込む。



『わ、美味しいねこれ』


「主様が好きそうだとおもって持ってきて正解でしたか?」


『うん、これ私好き』


「ならよかった、それを飲んだら少しお庭を歩きませんか?」


『そうしようかな』



彼の配慮に感謝しながらグラスに入ったジュースを飲み干す。
ダンスの疲れは残っているが少し静かなところに行きたかった。
ルカスのエスコートで会場を出る。
すっかり夜に包まれた会場には夜風が吹いている。



「少し肌寒いのでこれを羽織ってください」


『ルカスは寒くない?』


「はい、お酒も入っていますので暑かったくらいです」


『じゃあお言葉に甘えて』



ルカスの上着を肩にかけてふたりで中庭を歩く。
息を大きく吸い込む。新鮮な空気に気分が少しスッキリする。



「主様」


『ん?』


「この間言っていた、手の甲にキスをする意味をお話しすると言っていたこと覚えていますか?」


『うん、覚えてるよ。教えてくれるの?』


「はい、私にとって主様は特別で信頼ができて……なによりお慕いしております」


『え…?』



私の手が握られる。瞬間的に私はまた手にキスをされることを察する。
軽い口づけをしてルカスが私の目を射抜いた。



「ふふ、手の甲にキスは、信頼や敬愛、場所によっては愛を伝える意味があるんですよ」


『え、あ…や、やっぱりそういう意味なんだね…』


「……私は、主様に愛を伝えたいので…他の男性にしてほしくなかったんです、よ?」


『…っ』



ぶわっと顔を赤らめる私にルカスは目を細める。



「…主様、キスをしても、いいですか?」



『なんで、また……』



言いかけたその言葉をドキッと喉から心臓が出そうなくらいに跳ねた鼓動に遮られる。
いつもと言い方の違うその言葉。



『……どこに?』



「……」



私の言葉に口角をあげたルカスの顔が近づく。
無意識に目を反らす。




「今日までは、手の甲にしときます…♫」











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