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この章の夢小説設定ここに主様のお名前をお入れください。
執事が主様のことを名前で呼んでくれるかもしれません。
(記入がない場合初期設定の「かうり」になります(管理人))
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※このお話は前のハウレス(中)の続きです。
1度目のハウレスの危機を超えてから数日が経った。
あれから次の危機をどう乗り越えるか考えていた。仕事はどうにかして休むとして、遠征中に何が起きたのかがわからないため対策のしようがないのが問題である。
ハウレスの死がただただショックで説明をしてくれていたベリアンの内容も覚えていないのが今となっては痛手だ。
『……3度目も…ここまで来れていないし…』
3度目は、1度目のハウレスの死の恐怖から自ら天使の前に飛び出した。
迫りくる天使、引き裂かれる痛み。
リアルに思い浮かぶその光景にぎゅっと目を閉じて頭を振るう。
『……ハウレス…』
今までの人生で私に向けてくれた笑顔の数々を思い出す。
どれもこれもかけがえのない私の宝物。
この笑顔があるから私は何度だってこの世界をやり直していける。
『とりあえず、ハウレスが死なないことだけを優先しよう。また、私が身を挺してでも』
「こんばんは、主様。今お時間宜しいでしょうか?」
『ハウレス、どうしたの?』
ある夜、ちょうど屋敷にいた私のところにハウレスが訪ねてきた。
扉を開いて部屋の中へと入ってくるとひとつ礼をして私のそばに歩み寄ってくる。
「実は、今日グロバナー家から呼び出しがあり…天使が出現しやすいと言われている塔の調査にいくことになりました」
『…それって』
「天使が現れるということは重要な手掛かりになるのですが…必然と戦闘は避けられません。危険な任務ではありますが、どうか主様にも同行していただきたいのです」
『……執事全員で行くの?』
「ラトのこともあるので地下の執事は屋敷に残ってもらい、他の執事全員でいくことになります」
これがきっと2度目の死の遠征だ。
私は何となくそう直感した。震えが止まらない。ここでハウレスが魔導服に飲まれる。ハウレスが絶望に包まれる。
「やはり……難しいでしょうか?」
私の返答がないことに不安そうにハウレスが私の顔を覗き込む。
目が合うとドキッと心臓が跳ねた。
『う、ううん。大丈夫、ハウレスが守ってくれるよね』
「はい、俺に任せてください。命に代えても主様をお守りします」
『それはだめ!!!!!!!』
ハウレスの言葉に思わず反射的に大声で返してしまった。ハッとなって口を抑えるもハウレスは驚いた表情で私を見ていた。
目を反らして冷静に話す。
『…ハウレスには、生きていてほしい』
「主様……ッフわかりました。主様がそう望むのであれば」
『…お願い約束ね』
こんなにも過剰に反応をしていたら変に思われちゃうな、と心の中でため息を吐く。
けれどこれで2度目のハウレスの死を回避するチャンスがきた。きっとここを乗り越えればハウレスは生き延びる。そう信じて。
「村が………」
「これはひどいっすね…」
「天使の姿が見えねぇな」
「……何か変だね」
塔の調査当日ー…。
出発時に天使の警告が屋敷に鳴り響いた。遠征チームは二手に分かれて行動をすることになり2階組の4人と天使を狩りに来たのだが。
村にはすでに人がいる気配はなく、荒らされた廃屋と静寂だけがそこにあった。
天使が潜んでいる可能性も考慮して警戒をしながら村の中を歩く。
「…っ全員伏せろ!!!!!」
突如ボスキがそう叫び、それに反応したハウレスは私に覆いかぶさり無理矢理伏せた。
その刹那私たちの上空に無数の弓矢が飛んできた。
「これは、天使の仕業じゃねぇな」
「族か」
「アモン、俺たちは主様をお守りしよう」
「了解っす」
ニタニタ笑いながら私たちの前に現れた自称傭兵たち。
ハウレスとボスキが前に出て戦闘態勢に入る。フェネスとアモンは私を守るように少し後ろに下がった。
離れたせいで傭兵たちとハウレスたちが何を話しているのか聞こえない。
何がトリガーでハウレスの過去とつながるのかがわからないため少しでも情報は入れておきたいのに…。
前に出ようとする私をフェネスがやんわりと制止する。
「主様、危ないのでふたりに任せましょう。もしふたりに危険が迫ればアモンも加勢できます」
「ええっ俺っすかフェネスさん」
「俺よりかはアモンの方が強いよ」
「謙虚すぎっすよフェネスさん…」
アモンの気の抜ける会話も左耳から右耳に抜ける。
目の前のふたりの様子が少しおかしいからだ。
その時、傭兵たちが突っ込んでくると共にハウレスたちも突っ込んでいく。
悪魔執事に対峙しようとする傭兵たちも身の程知らずなため大人数を相手でもハウレスたちは次々となぎ倒していく。
「フェネス!」
「あ。主様、ボスキが力を解放してほしいみたい」
『え、でもあの人たち相手に…悪魔の力は……』
「ここを早く片付けてベリアンさんたちと合流しないといけないっすから。大丈夫っすよあのふたりなら加減はできるはずっす」
『そ、そうかな…』
本を取り出してボスキの力を解放する。
ボスキの周りに風が吹いてボスキの目が妖しく光る。
「手加減はしねぇぜ」
ボスキの力によりバッサバッサと傭兵たちが倒れていく。
「バケモノどもめ…!」
傭兵の頭らしき男の顔が青ざめていく。
「てめぇらの主とやらをいつかぶっ殺してやる!!!!ひ弱な女を守ってヒーロー気取りかよ悪魔のくせに!!!」
「バケモノたちめ…!」
「悪魔執事の主なんてさぞ良い女なんだろうな」
自分たちが劣勢にも関わらず挑発的な言葉を吐き捨てる傭兵たちに場の空気が変わった。
私の周りに殺気が漂う。これは…執事達が発しているものだ…。ブルッと身体が震えた。
「俺たちを侮辱するなり罵るなりは許せるが……」
「主様にそんな言葉を吐くのは許せねぇな」
「さすがの俺もキレそうっすね」
「争いは嫌いだけど、俺も許せない」
『ふぇ、フェネス…?アモン…?』
ふたりの裾を掴む。今にもとびかかりそうな勢いだ。
「ッハ。余裕のない顔になりやがって」
「お前らの弱点はアルジサマかよ」
「しっかり守れよ、これで俺らにアルジサマとやらを奪われたらいくら強くても面目丸つぶれだぜぇ~?」
「俺がアルジサマにこの剣を突きさすところ、目の前で見せてやるぜ」
「ハウレス、これでも手加減しろってか?」
「……」
「…ハウレス?」
瞳孔を開いてギリィっと歯を食いしばるハウレス。剣を握る手には力が込められて震えている。
これは、怒りによるものだ。
「そうだ……お前らが主様を…」
ぶわっとハウレスを黒いオーラが包み込んだ。
傭兵たちはそれを見て恐怖心で怖気づいた。ボスキも固まっている。
『うそ…!ハウレス!!!ハウレス!!!!!』
バッと私は走り出す。
アモンとフェネスが一瞬遅れて私を追いかける。
『ダメ…!ハウレス…!!!正気に戻って…!お願い…!』
「お前が……お前があの時主様を……」
ブツブツとハウレスがなにかを呟きながら傭兵の頭の方へ歩く。
頭は他の傭兵に止めるように叫んでいるが、ハウレスに突っ込む傭兵たちは一振りでなぎ倒されていく。
そのうちハウレスに突っ込める者はいなくなり、次々ににげだしていった。
「ハウレス!やめろ!」
「ハウレスさん!どうしたっすか!」
「ハウレス!」
他の執事の声も私の声も届かない。
直感で私は悟った。これが悪魔の力の暴走、そして魔導服に飲み込まれるということ。
『ハウレス!!!ハウレス!!!!!』
ハウレスの元へ駆け寄ろうとする私をアモンとフェネスがふたりがかりで押さえる。
必死の呼びかけも虚しく、ハウレスは頭を追い詰めた。
「お前がいなければ……主様は俺をかばって……………なかった」
「な、なにいってんだよ……お、俺はなにもしていない…!」
「お前が…」
ハウレスを凝視する私をアモンが全身で抱きしめる。アモンの身体で何も見えなくなった私は必死にもがく。
「ダメっす!今はなにも見ない方がいいっす!主様!!!」
「ハウレス!!!!やめるんだ!!!」
「おい!!!ハウレス!!!!」
私を説得するアモンの声、ハウレスを止めようとするフェネスとボスキの声。何かの物音と、低い声の断末魔。
「主様……主様…」
「ハウレス……?」
「…っぐ、おい!なんのつもりだ…くっそ…!」
「は、ハウレス!!!ボスキに攻撃するなんて…」
「なんだこの力……力を解放してる俺でも、抑えるので限界だ…」
「ボスキ…!まともに受け止めるのは良くない…!流しながら戦おう…!」
視覚を奪われてる中、執事達の声だけが聞こえる。
『アモン…!お願い!どうなってるか見せて!!!!』
「に、逃げるっすよ主様…!」
『え…?』
アモンの身体が震えている。
私の手を引いてハウレスのいる方向とは逆方向の方に走り出すアモン。
振り返りながら走る私の視界には真っ黒なもやに包まれたハウレスがフェネスとボスキに剣を振るっている姿だった。
『な、なんで…!ハウレス…!』
「た、多分今ハウレスさんは正気を失ってるっす…!だから見境なく攻撃をしてるっす…!」
「…主様…っ」
ハウレスの声に私はもう一度振り返る。
正気を失っているはずのハウレスと目が合った気がする。
『…私のことは認識しているの…?』
ぐっとアモンの手を引っ張る。私の抵抗にアモンの足が止まる。
「…!あ、主様、ここは危ないっす!主様の身の安全のためにも逃げましょうっす!」
『ハウレスは私を探してる…』
「…は?」
まっすぐにハウレスを見つめている私の視線を追ってアモンはハウレスの方を見た。
私の方へよろよろとハウレスが歩いてきている。
「主様……」
フェネスとボスキもハウレスの様子を見ている。
アモンは迷いに迷って私の腕を引っ張る。
「や、やっぱりいつ襲われるかわかりませんっす!攻撃を受け止められる気がしないっす!」
『……大丈夫、私は元からそのつもりよ』
アモンの手を振り払って私はハウレスの方へ走った。
『ハウレス!!!』
「主様……?」
『ここだよ!ここにいるよ!!!!』
大きな声でハウレスを呼ぶ。目の前のハウレスではなく、内にいるハウレスの正気に向かって。
「俺は…主様を守れなかった…」
『ううん、守ってくれたよ。私は生きているよ』
「……目の前で…」
『…あの時はごめんね』
「…ちがう…俺は……」
『今度は命を投げ出したりしないから…』
目の前にきたハウレスに抱き着く。悪魔の力である黒いもやの中は息苦しかった。負の感情が私にも襲い掛かってくる。
ハウレスを失ったあの光景が思い出される。
「主様…無事、ですか…」
『うん…うん…っ!』
「…すみませ…俺…」
すぅっと黒いもやがハウレスから消える。息苦しさも無くなった。
ぎゅっとハウレスが私を抱きしめ返してくれた。
4度目で私はハウレスを失わなかった。
「…よかった……よかった…かうり様……」
『…ありがとう…ハウレス…』
脅威が去ったことで3人が私たちのところへ集まった。
体力を消耗したハウレス、力の副反応に苦しむボスキでボロボロな私たち。合流をする前に少し休憩をすることになった。
ハウレスに膝枕をしながら休んでもらう。頑なに断られたが粘るとハウレスの方が折れてくれた。
目を合わせようとしないハウレスが少し頬を赤らめながら口を開いた。
「……主様も…何度か同じ光景を……?」
『…うん。何度もハウレスを失った。もうハウレスを失いたくなくて自分からハウレスを守ったこともある』
「……俺も…何度も主様のために命をかけて守り続けました。でも、主様は逆に俺を守ろうと……」
私と同じ光景を逆の立場でハウレスもタイムリープしていたようだ。
なんの因果かわからないがふたりとも無事に今生きている。
「…もう、もう大丈夫なのでしょうか…それとも…ここはまだ途中で…」
『……大丈夫だと思おう。私たちはもう死なない…』
「…主様…」
ハウレスが手を伸ばす。その手は私の頬に添えられた。そこから伝わるハウレスの体温に顔を擦り付ける。
互いが生きていることを実感するように。
「かうり様……」
『…ん?』
「…お慕いしております…」
『…私も、何度も前からずっと好きだよ』
「かうり様のことは必ずお守りします」
『…うん』
目が合う。ハウレスの瞳に私が映っている。
微笑みあうとアモンがすぐそばに立っていた。
「いちゃつく元気があるなら出発するっすよハウレスさん」
「な……!あ、アモン…」
『ボスキはもう大丈夫?』
「うーん…正直大丈夫そうではないっすけど、ルカスさんからの書信ですぐにベリアンさんたちと合流してほしいって…」
「ルカスさんから…?!主様、すぐに向かいましょう」
『うん…!』
立ち上がったハウレスが私の方に手を差し伸べる。
その手を取ってふたりで走り出す。
もう大丈夫、私たちはお互いを失わない。なぜだかそう思えた。
私たちは因果を断ち切ってお互いの幸せに繋がる道を歩めている。
『ハウレスっ』
「はい主様、どうしました?」
『……ううん!この任務が終わったらまたいうね!』
「…っふ。はい、楽しみにしております」
これは、どこか違う世界の物語。
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