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ボスキくん









『女らしさ……とは…』


現実の世界のスマホでそんなことを検索する。
謎な行動だとは自分でも思うけれどこんなことを検索するのにも理由がある。
最近、私のそばで私の生活のサポートをしてくれている執事がいる。



『ボスキは……やっぱ女の子らしい子が好きなのかな…』



ボスキ、敬語も使えない自分勝手で自己中で口も悪いし態度も悪い。
褒めようがないような男なのに…なんでかいつも優しくて寂しいと思うときにいつもそばにいてくれて悔しいくらいにいつもかっこいい。



『……うーん…』



検索結果に出てきたものを真顔で読み漁る。
色々と考えを巡らせながら見漁っていると…。



『…ん?…キスが上手い女性は…男が燃えやすい…』



文字を読みながらボスキとキスをしている自分を想像してしまう。
妙にリアルで唇に感触さえも想像してしまって顔から火が噴く。
恥ずかしさに一度スマホを伏せて机に置いて顔を仰ぐ。



『…や、やる価値はあるかもしれないね…』


げふん、と咳払いをしてさっそく指輪をはめた。























「……ん?おう、主様。おかえり」



いつも通り出迎えてくれるボスキの姿に先程の妄想が思い出される。
目線を反らしながらボスキに歩み寄るとボスキがこちらに身体を向けた。


「どうした?」


『ぼ、ぼすき…あのね……』



先程の妄想とどうキスすることに持っていくのか考えてないことに言葉が上手く出てこない。
もじもじとしている私に怪しむように首をかしげるボスキ。



「なんだ?主様。言いたいことがあるなら言ってくれていいぜ」


『ま、待ってね……ふぅ…』


一呼吸を置いてから決意を固めて口を開く。


『わ、私とキスをして!!!!!!』


「…?!…げほっ…ごほっ……」


私の言葉にボスキがむせる。
背中を向けてむせ続けているボスキに追い打ちのように抱き着いてみる。



『私…ボスキのことが好き!だからボスキとキスがしたい!!!』


「ま、待て待て、主様…」



私を引きはがしてボスキが混乱する頭を抱えて制止した。恥ずかしいのを堪えながら強いまなざしでボスキを見る私を見て、さらにため息を吐いて身体を向きなおした。


「なぁ主様」


『な、なに?』


「自分が何を言っているかわかってるのか?」


コツンとボスキがこちらに足を一歩歩み寄る。
いつもと変わらない口調と声色なのにどこか圧を感じてしまう。


「それに主様、ろくに経験無さそうに見えるが」


『な……け、経験くらいあるもん…』


コツン、とまた一歩。
私は無意識に同じように一歩後ずさった。
また一歩、と後ずさると私の中の決意も小さくなっていくような気がする。


「ほう?それで俺としたくなった、と?」


『な…!』



まるで欲求不満かのような言い方にさすがの私もカチンときてしまう。
後ずさりたい気持ちを堪えて体制を直そうとしたとき、ふと背中に気配を感じてチラ、と後ろを見る。
いつの間にか壁側まで追い詰められていた。


『…やば』


すっとボスキの横をすり抜けようと動く。
が、ボスキの腕がそれを許さなかった。



「答えてくれよ、主様?」


『ち、違うって。ボスキのことがすきだからってさっき…言ったじゃん…』


逃げ道をボスキの腕で塞がれ、目の前にはボスキの顔。
諦めてボスキの質問に答えながら目を泳がせていると、じっと私の方を見るボスキがまたため息をひとつ吐いた。


「はぁ…背伸びするのも良いが、俺相手にはやめといたほうがいいぜ」


『え、ボスキ…』


すっと腕を離して私から離れる。
そんな彼の姿に手を伸ばす。



「俺は主様に魅力とか感じないしな」



ズキッと胸が痛んだ。伸ばした手が思わず止まる。
こちらを見ないボスキがそのまま部屋を出ようとする。



『今までの言葉…全部、嘘だったの…?』


掠れた声でそう言うと、ボスキの足が止まった。


『私のこと…たくさん褒めてくれて、新しい服を着たら似合ってるって…がんばった日は、よくがんばったって…』


声が震える。
でも、私だって本気だったから。


『私が、主様だから…執事としての言葉だったんだね』


震える唇を隠すために口角を上げてみる。
自分の吐きだす言葉に自らの心が抉られていく。



「…もうやめろ」


いつの間にかこちらまで近寄っていたボスキが片手で私の頭を胸元に寄せた。
普通に抱きしめたらいいのに、この抱きしめ方がボスキらしくて涙が溢れた。
ポンポンと私の頭を軽くたたくボスキの手つきが優しい。



「…悪かった。言い方が、ふさわしくなかった」


ボスキがぽつりとそう言った。


「別に、今までの言葉は本心だ。主様は…」


ボスキの言葉が止まった。
涙でぐしゃぐしゃの顔でボスキを見上げると目があった。
気まずそうに視線を反らすボスキは私の頭に乗せた手に力を籠めた。



『……んんっ?!』



一瞬視界が変わると目の前にはボスキの目元だけが見えて、口で呼吸ができなくなっていた。
私は、今、ボスキとキスをしている。



『…ん、ふ……』



ついばむようなボスキのキスに、隙間から呼吸をしようとする私の口から声が漏れる。
ボスキらしく強引に舌をねじ込んできては私の舌をもてあそぶ。
もう、私の頭の中では何も考えられない。ボスキの舌の動きに意識が向いてしまう。



『あ…あふ…』



足の力が抜けてカクン、と膝が折れる。
ボスキが私の腰を支えてくれて唇が離れた。息が荒くなるふたりはしばらく何も話せなかった。



「…これでもう、いいだろ」


『…』



私を椅子に座らせたボスキが沈黙を破った。



「あんまり男に気安く今日みたいなこというんじゃねぇぞ」


『…私はボスキにしか言わないもん』


「…主様、あまり俺を煽るな」


私がボスキの方に顔を向けると、少し顔を赤らめるボスキの姿があった。



「…俺だって立場を理解して我慢してんだ」



そういうボスキに私はかまわず抱き着いた。



「ったく…何言っても聞きやしねぇな。俺の主様は…」


呆れたようにそう言ったボスキは、私にもう一度キスをした。






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