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ラトくん







「こんにちは、今日は集まってくれてありがとう。今回は劇をするから楽しんでいってくれ」


「「はぁ~い!」」


「ぅぅ…やっぱり慣れないな…」



今日は地下のみんなと街の子供たちに天使の脅威を伝えるためのお勉強会についてきました。
皆で作った手作りのステージを組み立てて会場も設営した。
劇にも参加するためにミヤジとフルーレが作った脚本とセリフをたくさん練習した。
ところどころラトに邪魔もされたけど。




「フルーレ、また人見知りしてるんですか?」


「う、うるさいな。緊張してるだけだよ」


『あはは、楽しむことを意識すれば大丈夫じゃない?』


「さて、そろそろ劇を始めよう」




舞台裏で緊張するフルーレと楽しそうに笑っているラトと準備をしているとミヤジが前置きを終えたのかこちらに顔を出した。



「今日は悪魔執事とその主様、そして天使を連れてきた。まずはその関係性を説明しよう」



「クフフ…死になさい、命のために…」


「あ、あう…えっと……」


『フルーレ…!セリフ言わないと…!』



天使役のラトが話した後に悪魔執事役のフルーレが悪魔執事について説明しながら天使と退治をする流れなのだが……。
顔を真っ赤にしてもじもじしているフルーレがまた人見知りをしているようだった。
呼びかけても声が届いていないようだ。



「あれっておねーちゃんかな……」


「でも悪魔執事って男だけだろ?」


「じゃああれがあるじさま?」


「なんか、しゃべらないね」



客席にいる子供たちもざわつき始めている。
ラトはクスクスと笑っているし、ミヤジもフルーレを見ているだけだった。
アドリブなんて自信はないけれどやるしかない、と息を吐く。



『さぁ、執事よ。私が力を解放する!!!天使を葬るのです!』


「…っ?!」



私ができる限りの大きな声でフルーレの方に叫ぶ。声に驚いたのか身体を震わせてフルーレがこちらを見た。
圧をかけてフルーレを見つめ返すと息を吐いたフルーレがラトの方を向いた。



「あ、主様のた、ために、が、がんば、ります……」


小さい声でそう言ったフルーレがレイピアをラトの方に向ける。
ラトは作り物の羽根をパタパタと動かしながら身軽にフルーレの攻撃をよけ続けている。



「ら、ラト…!やられるふりをする予定だっただろ…?!」


「んー?フルーレがおもしろいのでこのままでいたらどうなりますか?」


「っく…この…!」



フルーレが一生懸命ラトを倒そうと武器を振り回している。
レイピアは突く分には殺傷能力はあるが切りつけるのには適していないため少しなら振り回しても大丈夫と思い採用したが、周りを忘れてラトに切りかかっているフルーレに不安を覚えた。



「主様、フルーレくんを止めるべきだ」


『ミヤジ先生…!と、止まってくれるでしょうか…』


「フルーレくんならすぐに冷静になるだろう」



うーん、と解決方法を考える。普通に注意しようとも考えたが客席にいる子供たちがふたりの戦いに見入っているために止めづらい。
いちかばちか、とラトがこちら側に着地する瞬間私は飛び出した。



ぎゅうっ


「…っ主様…?」



ラトの身体に抱き着く。これ以上動けないように、と力強く抱きしめると急に止まったラトにフルーレが勢いよくレイピアを振り下ろしていた。



「え…?!主様…?!」


フルーレが私に気づいた時には遅く、レイピアはすぐそこまで振り下ろされていた。
だが、いともたやすくラトは素手でそのレイピアを受け止めた。



「クフフ…しになさい…命の……」


本来のシナリオ通りのセリフを言いながらラトはしゃがみこんだ。
良かった、とほっと胸を撫でおろして次のセリフを言おうと私がラトから離れようとするとラトの腕が私のお腹に回された。



『え?』


一瞬何が起きたのかわからなかった。
けれどラトがジャンプをすると私は抱きかかえられていて宙を浮かんでいた。
声にならない私の悲鳴とフルーレがこちらに向かって叫んでいるのが聞こえた。
舞台を飛び越えて裏の方に着地をしたラトは私を降ろした。



『な、なにするの…ラト…』



バクバクとうるさくなっている心臓を抑えながらラトを睨みつけると楽しそうにラトは笑っていた。



「主様が、私をあおるんです。私の欲求を満たしてほしくなりました」



何を言っているのかわからなくて首をかしげると一歩一歩近づいたラトが私の顎に指をあてて唇を重ねた。
驚いた私が顔を背けようとするも頭の後ろに手を回されて身動きがとれなくなった。
唇の隙間から呼吸をするたびに変な声が漏れる。
ラトのピアスから金属の味がする。



「主様は…煽るのがお上手ですね。私以外の男の前でそんな声、姿をしてはいけませんよ?もちろん…フルーレにも、ですよ」



もう一度ラトが唇を重ねる。
絡めあう舌から快感が溢れ身体から力が抜けて後ろに置いてあった荷物に寄りかかる。
ラトは私の上に覆いかぶさり舌を絡めるのをやめない。



「…っはぁ。いいですね…こういうのも悪くありません」


『……ば、か…』



ゾクゾクと体中を走る快感を抑えながら身体を起こしてラトから離れた。



「ラトくん、あまり主様をいじめないでね」


『み、ミヤジ先生…!』


「ほら、もう劇が終わるよ。挨拶をしよう」




こうして無事(?)に劇を終えられたのであった。
屋敷に帰った後もラトの変なスイッチを入れてしまった私はラトが満足するまでキス攻めにあうのでした。





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