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執事vs執事









「主様、今日のティータイムですが…」


『ん?』


「おい主様。そろそろティータイムにしねぇか?」



とある昼下がり、自室へと戻ってきた私は専属であるハウレスといた。
だがハウレスが何かを言いかけた時、突然扉が開き低い声がハウレスの声を遮った。



『ボスキ、どうしたの』


「そろそろ主様が帰ってくる時間だろうと俺がティータイムの準備をしたんだ」


「ボスキ…今は俺が主様の専属だ。勝手をされたら困る」


「ああ?主様のために準備をすることが勝手だと?気が利かないお前の方が悪いだろ」


「それは…!」


「ッハ。そんなんでよく専属とか言ってられるな。ロノたちとトレーニングでもしてきたらどうだ?俺の方が主様の専属として働ける」


「…っ。専属はお前には任せられない」


「主様はどう思う?ハウレスなんか気が利かないだろ」


『え、私は…』


「ボスキ、お前はもう戻れ。主様は俺を選んでこうして専属にしてくれているんだ。俺もこれからはもっと気が利けるように努力をする」


「お前のことはもうどうでもいいんだよ。主様、ティータイムにしよう」


「お、おい!」



ボスキに手を引かれる。
反射的にハウレスも私の逆の手を掴む。両方から手を引っ張られる状況になってしまった。
ハウレスの方を見ると切なそうに必死に私の方を見ていた。




「なにしてんだよ。主様の紅茶が冷めちまうだろ」


『ご、ごめんハウレス。ボスキがせっかく用意してくれたから……いってくるね』


「あ、主様……」


「よし、じゃあ行こうぜ主様」


脱力したハウレスが私から手を離す。
そのままボスキと一緒に部屋を出てリビングへと向かう。
ハウレスの表情に胸を痛める。



「ハウレスのことは気にしなくていい。いろいろ仕事抱えてるアイツが主様の専属を務められるわけがねぇんだからよ」


『ボスキ…』


「主様は俺を専属にした方が良いと思うぜ。天使狩りには駆り出されるがそれ以外は主様に合わせやすいしな。俺は主様が関わることはなんでもしてやりたい。…というかできれば主様といたい」


『ちょっと…』


「これは俺の本心だ。どうだ、主様」


『私は…』







「主様!!!」



バンッとリビングの扉が開かれて大きな声が部屋に響いた。
ボスキと入り口の方を見るとハウレスがそこに立っていた。



「ッチ…またお前かよ」


「あ、主様……!お、俺は確かに気が利かなかもしれません…他の作業も任されていて仕事を抜けることもあるかもしれません…ですが俺は主様の専属でいたいです…!俺が主様の生活をサポートしたいです…!」


『ハ、ウレス……』


「おいハウレス…それはちゃんと責任もって言えるのかよ。今のお前が専属でい続けたところで主様に何かあったときにお前がいなかったらどうすんだよ。他の仕事をしてたからって言い訳でもするつもりか?」


『ボスキ…!』


「そんなことは言わない。そして主様を危険な目にあわせるつもりもない」


「ッハ。どうだかな。なにかあってからじゃおせぇんだよ」


「ボスキの言っていることもわかる。俺はまだまだ未熟だからな。だが俺も主様のことを大切に思っている」



ハウレスが真剣な表情で私のことをみる。その表情から目をそらしてはいけない気がして私もハウレス瞳を見つめる。
ボスキが私の隣に立つ。頭に腕を回して自分の方に引き寄せる。
唐突な行動に身体が固まりボスキに身をゆだねる。



「ふざけんな。保証もないことで大切に思ってるからってどうにかなると思ってんのか」


「ボスキ…!主様になんてことしてるんだ!」


「俺だって主様が大切だ。手放したくないくらいな。だからこそハウレスなんかに任せられるか」



「…っ」



ぐっと拳を握りしめるハウレスが俯いて歯を食いしばっている。
ハウレスの様子を見る私の頭をぐっと自分の方に向けてボスキの胸元に顔をうずめる。石鹸の香りと香水の香りが喧嘩をしないで心地の良い香りになっている。




「もうわかっただろ。仕事に戻れ」


「………失礼します。主様」



ハウレスが小さくそう言って部屋を出て行った。
はぁ、と息を吐いてボスキが私から手を離した。
私はゆっくりとボスキから顔を離してハウレスの出て行った扉を見つめる。




「本当に頑固だよな」


『ボスキも大概だよ』


「一緒にすんな、……せっかくのティータイムが台無しだな」


『…本当に大丈夫かな』


「おい主様。俺の前で他の執事のこと考えるなんてしてないよな」


『…っだって…』



私が言いきるよりも先にボスキが物理的に私の口を塞いだ。
呼吸が一瞬止まってボスキの勢いに身体がよろめいた。



『…んんっ』


私の口を塞いだまま身体を支え唇を押し当てる。
何も考えられなくなって全身から力が抜けた。




「本当…主様は俺に、俺らしくないことをさせるよな」


『…それ、私のせいじゃないよ』


「っふ、そうだな。俺がおかしいな」


『…ティータイムに誘いに来たのもハウレスに取られまいとしたでしょ』


「…なんのことだか」



ボスキと指を絡める。
主としてひとりの執事を特別になんてしてはいけないのかもしれないけれど、
目の前にいる執事の瞳から私に対する愛情を感じてしまってからは、私もこの想いを止められずにいる。
このまま突き進んでいいのだろうか。




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