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ベリアン



これから先のあなたにも





「おや、主様。もうおやすみの時間のはずでは?」


『…あ、ベリアン。なんか、寝付けなくって』


「そういうときもありますよね。…そうだ良ければ紅茶でも淹れましょうか?寝つきに良い紅茶がございます」


『…じゃあもらおうかな?巡回の途中だけど大丈夫?』


「はい。上の階はもう済ましておりますのであとは主様の様子を見るだけでしたので」



とある夜。
なかなか眠れなくて部屋の蝋燭を付けて窓から星空を見ていたら巡回に来たベリアンが声をかけてくれた。
いつでも私に紅茶が淹れれるように、と私の部屋にティーセットを置いていたので棚からそれを取り出してさっそく紅茶を作り出すベリアンを横目に少しだけ気分が落ち込んでいる私は足を抱えてソファに座る。
行儀が悪い、とベリアンに怒られちゃうかな



「主様」


『あ、ごめん座りなおす…』


「あ、いえ………明日、何か不安なことでもあるのでしょうか?」


『え…』


「気分が落ち込んでいるように見えたので、明日を迎えるのが憂鬱になっているのでは、とおもったのですが」


『…ベリアンは本当に私のことよく見てるよね』


「ふふ、主様の執事ですし、私が一番主様のことを理解したいですから」



紅茶をカップに注いだベリアンが私の前に差し出す。
それを受け取って一口飲むと温かい紅茶に心がほっと落ち着いた。



『…そうだね、明日が来るのが嫌なのかもしれない』


「明日が嫌なのですか?…それとも」


『……んー…どっちもかな。明日も嫌だし、これから辛い日が来るのも嫌。もうその辛いことを耐えられるほど体力もメンタルも強くないし時間が解決してくれるわけでもないから』


「…私は……私は明日の主様にも会いたいですよ。明後日の主様でも、これから先の主様にも。いつまでもずっと主様の隣にいたいです」


『…ベリアン』


「私にとっては、主様がいてこその私だと思っております。主様が欠けてしまったら、私は心にぽっかりと穴が開いてしまいます」


『ふふ、何その例え…ベリアンっぽくない』


「し、失礼しました…」



私がクスクス笑うとベリアンが少し恥ずかしそうに顔をそむけた。
ベリアンは優しいからいつも励ましてくれる。癒してくれる。
だから頑張ろうとも思えるし、心が休憩できる。



「主様、辛かったらいつでも帰ってきてください。どんな時でも私は主様のそばで主様を支えます。泣きたいときは抱きしめてさしあげます。吐き出したいときは話を聞き続けます。寂しいときはずっとそばで時間を共有しましょう」



『…ありがとう、ベリアン。私、ベリアンの優しすぎるところ本当に大好きだよ』


「…っ主様にそう言ってもらえると誰に言われるよりも一番嬉しいですね」


『そう?…ふわぁ』


「おやおや、主様が眠りにつくまでおそばにいますので今日はもう寝ましょう」


『うん…』



ベッドにもぐりこむ私の隣にベリアンが腰かけた。
普段ならサイドテーブルの椅子に腰をかけるのに今日はそれよりも距離が近い私のベットに腰かけている。
月明かりに逆光になっていてあまり顔色は見えないがいつものように柔らかく微笑んでいるような気がした。
眠気に意識が持ってかれそうになる。その直前にベリアンに手を伸ばしてきゅっと服を掴む。



「おやすみなさい、主様」



ベリアンが優しい声でそうつぶやいたのが聞こえてそこで意識が途絶えた。






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