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第二章





『ったく今日はなんなのよ!厄日かしら!!!』



王太子を見送った後品もなくソファに座り、靴を脱いで足を抱えて座る。とうとう身内からも結婚の話が出てしまった。
噂が立ち始めた時点で身内が動き出すのは想像できたはずだ。
それにも気づかなかったなんて、自分はなんて世間知らずだったのだろう。


コンコンッ



『はい!!入って!!!』



行き場のなくなった怒りをノックした人物へぶつける。
荒々しく出た声には品の欠片も感じられない。
扉がゆっくりと開いて姿を現したのは待望の人物であった。



「お嬢様?どうされましたか……なにか、ありましたか?」


『……王太子が直々に参られたわ』


「っ?!お、王太子様が……な、何かおっしゃられたのでしょうか?」


『はぁ……私の売り飛ばし先はあの王太子が決めるらしいわ。決まり次第デビュタント後に嫁ぐらしい』


「そんな……デビュタントってもう1年後ではありませんか…!」


『…学園も卒業できないなんて…』



通常学園は12歳から18歳まで通う。
その間に必要なマナーや知識を付けて卒業後は平民は働き先を、貴族は嫁ぎ、王族皇族はそれぞれの役職や嫁いだりする。
ただ、女は16歳でデビュタント…つまり社交界デビューをし、親の許可を得て嫁ぐことができる。
早くに嫁ぐのは悪いことではないが、それでもすぐに嫁ぐことはせずに18歳までに嫁ぎ先を見つけるのが大体の流れである。それ以上は残り物だと自己価値が下がっていく。



「お嬢様、陛下にこのことを伝えましょう」


『無理よ、私はこの家で価値はないわ。それに噂の件もあって身内が払拭するには売り飛ばすしかない』


「お嬢様は…お嬢様はもっと大切に扱われるべきです。ご自分をそんな言い方なさらないでください。私はお嬢様が言葉で表せないほど優しくて素敵な方だと思っております」


『…長年一緒にいてくれたティフォンがそういってくれて嬉しい。けれど、個人の意見でどうこうできるものでもないのよ。王族に生まれたことは』


「……お嬢様、おこがましいとは思いますが1つ意見を述べてもよろしいでしょうか?」


『…なによ?』



ティフォンがソファに座っている私の前に跪いてこちらを見上げる。
王子様のようなその振る舞いに少し胸を躍らせながら表情に出さないように一言だけ返した。




「お嬢様、国王陛下に交換条件を致しましょう」







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