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第六章








「いってらっしゃいませ、お嬢様。本日も有意義な1日が過ごせますように」


『うん、ありがとう。今日もティフォンのおかげで良い気分で学園に行けるよ』


「ふふ、転ばぬようにお気をつけて」




勉強ダンス勉強と休日が終わり、学園への登校日を迎えた。
校門前でティフォンと別れを惜しんでいると、周りの生徒が少しざわついていることに気づいた。
手を振って学園内へと入り、ざあついてる原因のところへ近づくと。



「あ…ほら第三王女様ですわ…」


「本当なのかしら…」


「でも、本当だとしても…」


「そうね…どうせ3番目ですものね…」



不愉快な視線。あからさまに扇子で口元を隠しヒソヒソと陰口を言っている女子生徒たち。
思わず舌打ちでもしたくなるのを抑えながらティフォンに教えてもらった歩き方を意識しながら堂々と歩く。
これができるだけでも周りには圧をかけられるだろう。
チラ、と女子生徒たちが見ていた掲示板を見る。



ーティア王国第三王女。国王陛下より領地を与えられる。



なるほど。もうここまで話が広まっていると。
どこから発信化はわからないが、夜会でのプレッシャーが尚増えることだろう。
心の中でげっそりとため息を吐きながら学園内へと入る。
その間もヒソヒソと話す声はやまなかった。
それは学園内に入ってもなお続くことになる。




「おはようございます。リズ様」


『ん。おはようフローラ。こんな中私に話しかけられるなんてさすがだわ』


「むしろ誇らしいですよ。私にとっても」


『そうなのね…あ、手紙は届いたかな』


「はい。明日お伺いさせていただきます」


『おっけ。ティフォンにも伝えておくね』


「はい。よろしくお願いします。ではエリザ様のところへ行ってまいります」


『うん、ありがとう』



フローラが丁寧にお辞儀をして私の元から去る。
エリザがそばにいないだけで退屈で仕方ない。それに周りの視線を痛いほど感じるためにさすがに居たたまれない。
仕方ない、と席から立ち上がって教室を出る。
あてもなく廊下を歩いていてもどこかしこにも生徒はいるために注目の的である。
エリザがいてくれたら、こんな視線一睨みで一掃するだろうに。




『ふああ…』




人気のないところを探して中庭まで来てしまった。
噴水がある方は人気なため隅の方へ歩いて木陰に腰かけて大きく伸びをしながらあくびをする。
ティフォンにこんな姿を見られたら困った顔をしながらやんわりと注意されることだろう。



『はぁ。好きで王族してるわけじゃないんだけどねぇ』


「ほえー第三王女様でもそんなこと思うんですねぇ」


『…え?』



ぼーっとしながらそんなことをぼやいているとなぜか上空から声が聞こえた。
思わず上に視線を向けると木陰を作っている木の隙間から制服が見えた。



『貴族が木登りなんて変わった趣味をお持ちなのね』


「私だって貴族になんか生まれたくなかったですよー」



ガサガサと葉が揺れて私の横に人が着地をした。
急な出来事に身構えながらその人物を見ると、長い髪をひとつにまとめた行動の通り活発そうな女性だった。



「あー…私マナーとか苦手なんで不敬罪とかは勘弁してください」


『別に、私にそんな権限はないわ。ここは学園内だし』


「ならよかった。王族の人と話すなんて思わなかったんです」


『関わらないに限ると思うけどね』



涼しい風が頬を撫でた。
夏でも自然に囲まれていると暑さがまぎれる。隣に腰かけている生徒も緊張がほぐれてきたのか口数が増えてくる。



「今、学園一の噂になってますよね、私でも耳に入るくらいにはすごい人気ですよ」


『あれを人気ととらえられるあなたが羨ましいわ…』


「第三王女様には悪い視線の方が気になるんでしょうね。でも私の周りはこっそり第三王女様のファンの子がいるので噂が本当なのかきになってますよ」


『それは嬉しい話ね。……でもあまり大きな声で言わない方がいいよ。姉2人を支持してる貴族は多いから』


「私の家は中立をたもってるので私にはよくわからない話ですねぇ」


『貴族社会にまるで興味がなさそうだもんね、あなた』


「あ、申し遅れました。私、ティア王国四代伯爵家がひとつのシャーリー・マイルと申します」


『伯爵家…ってことはフローラと同じなのね』


「はい。マクラレン家とはあまり交流はございませんが対立してはいけない家門だと言われてますね」



『あそこは王族と癒着が強いから影響力は強いのかもね』





シャーリーと話していると学園内からチャイムが聞こえた。授業が始まるチャイムにシャーリーは焦ったように私に挨拶をして戻っていった。出席日数にでもリーチがかかっているのだろう。



『はぁ…今日はもういいや…このまま少し休んで次の授業からちゃんと出よう…』




もう一度大きなあくびをして木にもたれかかると心地よく眠気が襲ってきた。







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