第五章
「~~ということが帝国年にあり、今の王族があり、その下に階級が作られたのです。…お嬢様、ここまでの歴史は大丈夫ですか?」
『…うん。なんとなく流れはわかった』
「ふふ、さすがはお嬢様です。では次へ進みましょう」
ティフォンの勉強会。
私の向かいに座るティフォンが眼鏡をかけて私にひとつずつ歴史を教えてくれる。
王族の執事として教育をされてきた彼は文字の読み書きもできる。
ティフォンの字できれいにまとめられた歴史表を見ながら補足説明を自分でかきこんでいく。
そして要点をは私が理解できるまで説明をしてくれる。
「…はい、大丈夫そうですね。ちゃんと私の説明もまとめて記入されていますね」
『ティフォンのがわかりやすいからね、頑張らなきゃ』
「テストまで残り僅かですからね。追い込みを頑張りましょう」
『よろしくね、ティフォン』
「そうです!テストが終わりましたらなにかご褒美をご用意しましょう」
『え?ご褒美?』
「はい、私にできる範囲であればなんでもいたします。スイーツでもお洋服でも宝石でも」
『……それはたのしみだね。考えておくよ』
そんな話をしながら勉強会は夜まで続いた。
最後にまとめる時間を設けたティフォンはお風呂の用意をし、準備ができたら私をお風呂へと案内し、その間に夕食の準備をする。
私に合わせてるというよりもティフォンに合わせている生活だが、それでティフォンの負担が減るのなら私は彼に合わせる。
浴槽に浸かりながら疲れを癒す。
『ふぃぃー……』
メイドのいないこの邸宅ではティフォンにその役割をさせるのはさすがに申し訳なく、自分で洗うようにしている。
普通の貴族令嬢なら一度もしたことがないことを王族の私はしている。
それに恥ずかしさも憤りもない。
『ティフォンと共同生活してる感増すし、自分でできることは自分でする方がかえって楽だもんねぇ』
ザバァッと水をかぶって泡を落とす。
スッキリした気分で浴槽から出て軽くタオルで水気を取る。
寝間着を着ているとドアがノックされた。
「お嬢様、お食事の準備ができました」
『ありがとう。でも今出たばかりなの』
「では、私がお手伝いいたします」
返事をするとティフォンが部屋の中に入って小さく頭を下げる。
『いつもごめんね』
「お嬢様が謝ることはなにもございません。では髪を梳きますね」
鏡台の前に座る私の髪にタオルで水気を取りながら丁寧に櫛を通すティフォン。
しばらく身を預けていると、いつも通りの綺麗な髪へと戻っていた。
『本当にティフォンにまかせるとなんでも完璧になるね』
「ふふ、ありがとうございます」
『よし、ご飯食べよ』
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