第五章
「なるほど……事情はわかりましたわ。相変わらずそんな無駄なことをして何が楽しいのか私しにはわかりかねますわね」
『…私はそれでも自由でいたいだけだよ。ティフォンがいてもいなくてきっと』
「…あなたほど王族にふさわしくない人はいないですわ」
『そんなこと言われたって私だってなりたくて生まれてきたわけじゃないよ』
「…それもそうですわね」
ティフォンとの作戦会議が終わった次の日、さっそく学園でエリザにすべてを話した。ティフォンにも信頼のできる人物だからと許可を得ている。
エリザは呆れながら話を聞いていた。終始棘のある言葉を投げかけられるがこれが世間の普通の反応なのだから仕方がない。
それほどまでに私たちの戦いは無謀なのだ。前に見た、本の2人のように。
「それで、私しにそんな話をしてどうしてほしいんですの?隣国の王女として協力できる幅は狭いですわよ」
『エリザは私の友達でいてくれるだけで十分心強いよ』
「それはどうも」
『…エリザには、神殿への動向許可が欲しいの』
「…?なぜ私しが?」
『…エリザの…ブレット王国の神殿の力を貸してほしい』
「……っとうとう頭がおかしくなったんですの??!」
バンッとエリザが机を叩く。いつも振る舞いには人一倍意識している彼女がこんなにも取り乱しているのだ。
私も、エリザの目が見れずにうつむきながらただ彼女が諦めて首を縦に振ってくれることを祈ることしかできなかった。
「自国の神殿ではなく…他国の神殿に協力を仰ぐなど………王族としてどうかしてますわ!自国をそんなにも冒涜して反逆でも起こすつもりですの?!」
『……私は、その覚悟もできてる!』
わなわなと怒りに震えるエリザはぶつけようのないその感情を押さえ込むように拳を握って私達しかいない空き教室を無言で出ていった。
取り残された私は今になって恐怖心で体が震え始めた。
後悔もある。この話を持ちかけたことを。
ただ国王陛下との条件だけを話すだけで終わればよかった。
『……』
ティフォンに会いたい。
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