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第四章








あれから、数日が経った。ティフォンと顔を合わせるたびに国王陛下と約束をしたあのことを話に出すが、ティフォンはただ笑顔で「そのことについては準備しておりますのでお嬢様はゆっくり休んでいてください」と言うだけだった。
そんなもやもやを抱えながら過ごしていると、またこの邸宅に訪問客が訪れた。
ティフォンが対応しているはずだが…誰なのだろう。



「ご足労ありがとうございます。お嬢様に代わり私が対応させていただくことをお許しください」


「いや、逆に話がしやすい。それで、例の交渉条件だが、本当にこの内容で良いのかね」


「…はい。伯爵がよろしければ私共にも良い条件なので喜んで引き受けます」



応接室に音を立てないように聞き耳を立てる。どうやらティフォンが招いた客人のようで交渉をしているところのようだ。私にはさっぱりわからないがとりあえず続けて会話を聞いてみる。



「ふむ…交渉としては問題ないのだが…第三王女にそれほどの価値があるのか聞かせていただきたい。こちらとしては表向きは第一王女様を支持している側。安易に第三王女とつながりを持つわけにはいかないのだよ」


「…これはのちに公開される情報なので伯爵にいち早くお教えしますが…第三王女様が西の領地サーダルーンを国王陛下より任されることになりました」


「…なっ…サーダルーンだと…?!」


「聡明な伯爵ならもう察しておりますよね。サーダルーン…穀物も育たぬ環境の悪い土地だと言われていますが、あそこはまだ未開拓の地、逆に言えば宝が眠っているとも言われている領地なのですよね?」


「あ…あぁ。私はそう睨んでおる…それを第三王女が…?」


「はい。もし、第三王女様がサーダルーンを活性化させる実績を残したら…第三王女様の支持率は確実に変わるでしょう。そして…第三王女様はきっとそれを成し遂げられる。伯爵、もうおわかりでしょうか」


「……ふむ」



サーダルーン…?書物で少しだけ名前を聞いたことはあるけれど…。
声色に戸惑いが見える伯爵に対してティフォンには一切変化が見えない。
こんなにも交渉能力に長けていたのも知らなかった。



「返事は…そうですね1週間以内にくだされば結構です。そしてこの話を口外する場合はよく考えてくださいね。…せっかく私が伯爵にお教えした意味がなくなりますから…」


「…っあ、あぁ…わかった。約束しよう」



出入り口の方へと近づく足音に慌てて近くの花瓶の裏に隠れる。
扉が開いてティフォンと小太りの男性が玄関の方へと歩いていく。
十分離れるまで待ってから自室の方へと戻る。
ティフォンが動いていることはわかったけれど、私に何も情報がまわってこないことに少しだけ怒りを感じてしまう。私自身の問題なのに私自身が蚊帳の外にいる。



『ティフォンちゃんと聞くべきだわ』








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