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第三章





死地に行くような食事会が終わり、帰りの馬車へと駆け込むように王宮を出た私はティフォンと馬車に乗ると深い深いため息を吐いた。
やっと呼吸ができたと言わんばかりのそのため息にティフォンは小さく笑った。


「お疲れ様でございます、お嬢様」


『なんでティフォンはそんなに余裕そうなのよ……』


「ふふ、そんなことはござませんよ今も足が震えております」


『絶対嘘だね、見せてごらんなさいよ』


「ちょ、お嬢様危ないです」



笑いながら冗談を言うティフォンに立ち上がって足元に近づくと慌ててティフォンが静止をする。
ティフォンの脚をガシッと掴むと、顔を赤らめて慌てふためいている。えいえい、もっと困れ困れ。
その時、ガタッと馬車が揺れバランスを崩した私はティフォンに抱き着く形で転んだ。
咄嗟にティフォンが受け止めてくれたおかげでお互いぶつかることもなくすっぽりとティフォンの腕に収まった。
パタパタと足音が近づく。



「すみません!ティフォンさん!馬が足を怪我したみたいで……」


「そうですか、怪我の具合はどうですか?」


「少し水で傷口を洗ってやって休憩させれば大丈夫だと思います…」


「それだけだと不安なので薬草か何かを近くで見つけてぬってあげましょうか」


「わかりました。ベラ王女様、ご不便をおかけして申し訳ございません」


『え、ええ。大丈夫よ。お馬さん早く怪我治ればいいですね』



ティフォンと御者が話している間ずっとティフォンに抱きしめられていてドキドキが止まらず顔が赤くなる。
ティフォンの香り、ティフォンの見た目よりもがっちりしている腕、自分の胸とは全然違う固い胸。すべてに興奮が止まらない。



「…あっ、えと…すみませんお嬢様。ずっとこのような体制で苦しかったですよね」


『ぜ、全然……受け止めてくれてありがと』



ティフォンがぱっと腕を離し私が離れるのを待つ。
すっと立ち上がって元の席に腰を掛けると、ティフォンが馬車の扉を開いて降りていった。御者と馬の様子でも見に行ったのだろう。
ひとりになり冷静になるために先程の国王陛下との会話を思い出す。
正直すんなりと国王陛下が私の条件を受け入れたことは怪しさしかない。何かしら企んでいると見て間違いないと警戒しておいて損はない。
それにあの王妃の態度。どこか私に敵意さえも感じられた。
なにか私に脅威になる手札があるのか、はたまた逆なでするようなことをしてしまったのか。
今はわからない。



『…とりあえず、どこの領地が回ってくるかもティフォンと予想を立ててすぐに動けるようにしなくちゃ』



馬車が動き出すまでの間、自分が何をすべきかを頭の中で整理することにした。




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